【講評】近畿大学医学部[前期] 入試問題分析
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メビオ講師コラム
2022/02/01(火)
2022年度 近畿大学医学部[前期] 講評
英語
【A〜C】 [文法・語法・語彙] (難)
昨年度前期入試と比べて設問数が1つ増え、(C)の英文の語数が大幅に増えた。受験生にとって馴染みのない語彙が一部含まれるほか、解答に際して専門知識を要するものもある。
【D〜E】 [長文] (標準)
「木製人工衛星の開発による宇宙ゴミの削減」に関する英文。(D)の同義語選択、(E)の内容一致ともに取り組みやすい問題が多いが、一部判断に迷う設問が含まれる。
【F〜G】 [長文] (やや難)
「苦境におかれたことでの成長」に関する英文。具体例も豊富で論旨は追いやすいが、正答にたどり着くには正確な語彙の知識が要求される。
【H】 [長文] (やや難)
「マルハナバチによる開花促進行動」に関する英文。文章量は大問中もっとも多く、設問も内容の深い理解が問われるタイプのものが含まれるため、時間がかかる。
●総評
形式面では昨年度と大きく違いはないが、分量も若干増え、設問の難易度も上がっている。時間内に解ききることのできなかった受験生も多いだろう。目標は65%
数学
【第1問】 [平面図形] (標準)
三角形を題材とした平面図形の問題。三角比、ベクトル、チェバ・メネラウスの定理など色々な解法が考えられる。近畿大学の出題としては易しい方であり完答が望まれるが、処理力で差がつきそうである。また、結果の数値があまり単純ではないので自信を持てなかった受験生は多かっただろう。
【第2問】 [数列] (難)
感染症の感染拡大モデルを題材とした数列の問題である。漸化式としてフィボナッチ数列に類似する「トリボナッチ数列」を使うのであるが、感染当日には他者に感染させず感染者としても調査にかからないこと、感染4日目には感染力はないものの感染者としてカウントしないといけないことなどに細心の注意を払わなねばならず、非常に解釈が難しい。問題文の数値に合致する解釈を得るための時間が十分にとれるとは考えにくい。ここでは問題文に合わせて「新規感染者」を「感染1日目の感染者」と解釈した。
【第3問】 [数学Ⅱの微積分、図形と方程式] (標準)
(1)は1/6公式が使えるため計算も比較的楽に処理できる。(ただしx2の係数を忘れずに) (2)はよくある領域における最大値・最小値の問題。結果的にはたまたまいずれも接するときが最大、最小となるのだが、放物線同士での接線の傾きが不明であるため場合分けは必須である。この大問は頑張ってとりたいところである。
●総評
第1問は完答したい。第3問は厳密には場合分けが必要だが、接するときを考えれば正しい結果が出てしまうこともあり、減点される程度で済んでいる受験生が多いだろう。第2問は問題文の解釈が難しく、解釈できたとしてもそれに沿って(1)の結果の数値を出すのは簡単ではない。部分点のない形式なので、全く得点できていない受験生がかなりの割合を占めると思われる。第2問に深入りせず、第1問と第3問でどれだけ正確に処理できたかの勝負となりそう。目標は50%
物理
【第1問】 [力学:鉛直面内の円運動] (標準)
鉛直面内の円運動と摩擦のある斜面上の物体の運動を組み合わせた問題。前半の計算結果を後半にも使うため、ミスが連鎖しやすい。空欄7、8の計算は工夫しないと時間が足りなくなる。空欄6までは完答したい。
【第2問】 [熱:等温変化を含む熱サイクル] (標準)
与えられたTーVグラフから、pーVグラフを描き、熱サイクルの熱効率を求める問題。通常等温変化における仕事を直接求めることはないが、本問では仕事の式が与えられているため熱効率を数値的に求めることができる。できれば完答しておきたい。
【第3問】 [電磁気:コンデンサーの接続] (標準)
標準的なコンデンサーの接続の問題。スイッチの数が多く、コンデンサーの図が通常の回路図と異なるため、スイッチの切り替えにおける各状態が把握しづらい。合成や比などを用いて効率的に計算したい。
●総評
2021年度の問題はかなり難易度が高かったが、2022年度は易化した。問題数も2020年度以前と同じく30問に戻った。計算や描画などの作業が多く時間がかかることには変わりがないが、かなり解きやすい問題が増えたため、時間のかかりそうな問題を飛ばし、効率的に計算をすればかなりの高得点が狙える。第1問は7.5割、第2問はほぼ完答、第3問は7割程度解答したい。目標65%
化学
【第1問】
問(1) [化学史と各種反応] (標準)
ほとんどの受験生が知らない化学史の話でびっくりしたことだろうが、問題文を読むと答えは容易に判断できただろう。ラボアジエの質量保存則は覚えておきたい。問われた反応式は次亜塩素酸の分解反応以外は重要反応式なので完答したい。
問(2) [赤血球に含まれる酸素] (標準)
(a)は知識問題。(b)〜(e)は計算問題だが、慣れないテーマで戸惑った受験生も多かったのではないか。文章を丁寧に読解し必要な数値を拾っていく力が必要。計算も割り切れない値ばかりで、作業の精度も求められた。
【第2問】 [鉛の性質・溶解度積・鉛蓄電池] (標準)
鉛についての知識問題。PbSO4の溶解度積を用いた溶液の濃度計算。鉛蓄電池の知識問題と放電時の電極および溶液の変化についての出題。[2]の6は溶液を混合した際にPb2+もSO42ーも濃度が小さくなることに気づかないと解けなかった。それ以外の問題については知識問題・理論計算問題ともに平易もしくは標準的で解きやすい問題であった。この大問でできるだけ落とさないで得点し、合格点に到達したい。
【第3問】
問(1) [エステル生成の実験] (やや難)
エステル化反応の反応機構と収率に関する問題。(a)は基本的な問題。(b)は本文の説明をよく読めば答えられる。(c)は酸素の同位体を用いていることに注意したい。(d)は色々な答えが考えられ、答案を作りにくかった受験生が多かったと思われる。(e)に関しては、1ーブタノールが水より有機溶媒に対して良く解けることを知らなければできないので難しい。さらに溶媒のジエチルエーテルも有機化合物なので上層にくることや、同位体を含む化合物は18Oと忘れずに記す必要があるなど完答するのは難しい問題だった。
問(2) [合成樹脂] (やや難)
(a)(b)とも普段から図録などにしっかり目を通しておかないと答えられない知識問題で、自信をもって解答できた受験生は少ないのではないか。(c)だけは確実におさえた上で、(d)と(e)で差がつきそう。なお(e)では数値の有効桁数が指定されていなかったため、計算に用いた数値から2桁と判断して解答したが、450と整数値で答えても問題なさそうである。
例年同様に計算量が多かったが、第3問で受験生に馴染みの少ない知識問題が出題されていたりすることを考えると、それらの計算問題や有機の計算のでき具合で差がつきそうである。また、読解力や想像力が求められる出題が目立った。高得点は狙いづらく、内容は難化したと言えるだろう。1次合格の目標は55%程度
生物
【第1問】 [呼吸と発酵] (標準)
大半の設問は基本的であるが、最後の呼吸商をnとして数式で解答する設問は見慣れない形式であるため、取り組みにくいと感じた受験生もいただろう。
【第2問】 [血液型] (やや易)
全体的に設問の意図を汲み取りにくく、解答しにくいものの、問われている内容自体は難しくない。
【第3問】 [平衡器] (やや難)
論述問題が指定の字数ではまとめにくく、その他の設問も意図を汲み取りにくいものが多い。
【第4問】 [細胞骨格・細胞接着] (標準)
意図を汲み取りにくい設問が多く、ヒトの細胞の総数など、どういったデータを参照すべきなのかが明確でない設問もあるが、基礎的な知識の部分でできるだけ点を集めたい。
●総評
論述問題の総字数が490字と例年以上のボリュームなうえ、全体的に意図を汲み取りにくい設問が多かったため、難しいと感じた受験生が多かっただろう。ただ、空欄補充で確実に得点していけば、それなりに基礎点は集められそうである。目標は60%