医学部コラム
医学部の地域枠とは?家計の負担を軽減しながら医師を目指せる方法
基本情報
2021/12/27(月)
(最終更新日2023/04/24)
医学部の合格には、正規合格と繰り上げ合格があります。繰り上げ合格があることで、正規合格はできなくても医学部に入学できる可能性が生まれてくるのです。
医学部を受験する場合は繰り上げ合格があることを見越して、志望校を選定することも必要です。この記事では、繰り上げ合格とはどのような仕組みなのか、さまざまな角度から紹介します。
目次
1.医学部の「地域枠」とは?
1-1.地域枠のバリエーションはさまざま
1-2.90%の大学で採用
2.地域枠選抜の特徴
2-1.家計の負担を減らしながら医学部に進学できる
2-2.入学するのに有利
2-3.医師国家試験の合格率が高い
3.地域枠が採用された背景
4.地域枠からの離脱はできる?
4-1.より働きやすくなる対策も
5.地域医療に貢献できる地域枠選抜
医学部の「地域枠」とは?
医学部の地域枠選抜(以下、地域枠)は、医師偏在を解消することを目的として2010年に導入された制度です。一般的に、大学が特定の地域や診療科で診療することを条件として地域枠を設け、地域枠に該当する学生に対して都道府県もしくは大学が奨学金を貸与します。一部例外はあるものの、都道府県が定める地域で一定期間従事することにより、奨学金の返還義務はなくなります。
ただし、後述するように地域枠と一口にいってもその扱われ方や条件は多種多様で、奨学金がある場合とない場合があります。卒業後の勤務要件がある場合は、6年間奨学金を受給する代わりに卒業後9年間は地域医療に携わることを条件としているところが多くあります。
また、地元出身者は卒業後にも地元で働くケースが多いことから、その地域の高校などの出身者(地域出身者枠)を対象とした枠もあります。
地域枠のバリエーションはさまざま
地域枠にはさまざまなバリエーションがあります。
- 奨学金が貸与されるもの(卒業後に一定の義務の履行を条件とするもの、選抜方法は別枠もしくは入学後選抜)
- 奨学金が貸与されないもの(別枠で選抜し卒業後に一定の義務の履行を条件とする)
- 別枠で選抜し、卒業後の義務の履行・奨学金貸与の両方ともなし
など
地域枠の実施主体や創設の目的、実施内容が異なる場合もあります。
- 大学が実施しているもの
- 自治体が奨学金を支払うもの
- 医学部定員増加に関わるもの(政策として実施しているもの)
- 卒業後の勤務先が具体的に指定されているもの
- 卒業後の勤務先はその地域内であれば自由に選択できるもの
90%の大学で採用
地域枠を設定している大学は79大学中71大学(90%)に上ります。医学部の定員に占める地域枠の割合も、2005年には7625人中64人(0.8%)にすぎませんでしたが、2016年には9262人中1617人(17.5%)に拡大しています。
臨床研修を修了した地域枠医師数も2016年には403名だったのに対し、2017年には1152名、2018年には2293名と年を追うごとに増加しており、2024年には9676人(見込み)へと急増することが予測されています。
地域枠選抜の特徴
ここからは、地域枠選抜にはどのような特徴があるのかを説明していきます。
家計の負担を減らしながら医学部に進学できる
地域枠選抜の最も大きな魅力は、奨学金が受けられるため家計の負担を減らしつつ医学部に進学できることです。
地域枠は実施主体にもよりますが、奨学金がある場合毎月10~20万程度(入学金や授業料で別途支給される場合がある)に設定されていることが多いようです。6年間であれば720~1440万円程度になる計算です。
医師免許取得後に都道府県の特定病院(公的病院、都道府県立、市町村立、へき地診療所)や産婦人科・小児科などの医師不足が深刻な診療科に9年間(奨学金を受けた期間の1.5倍)従事すると、奨学金の返還が免除されるしくみです。
入学するのに有利
地域枠選抜は、地域医療を支える人材を確保する目的で導入された制度であるため、一般選抜とは別枠で選抜が行われます。
医学部の人気は上昇しており競争率が激化している傾向です。一般入試で医学部合格を勝ち取るためには幅広い知識を身に付けるためハードな勉強を乗り越えなければなりません。
一方、地域枠選抜は一般入試に比べると競争率も低く、定員割れしている大学も複数あります。医師になりたいという志があるなら一般入試を受けるより地域枠を狙うことで合格を手にしやすくなるでしょう。
医師国家試験の合格率が高い
地域枠選抜は一般選抜と比べて偏差値や難易度が低い傾向です。このため、入学しやすい反面ストレートでの卒業や国家試験への合格は難しいのではないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、地域枠には医師になりたいという志が高い人が多く、地域枠選抜者のストレート卒業率や国家試験合格率は全国平均を上回っているのが実情です。地域枠の定員が増加するにつれて合格率の全国平均との差は小さくなっていますが、全国平均より劣っているわけではありません。
地域枠が採用された背景
医学部の地域枠選抜が採用された背景には、医師偏在を解消することが目的としてありました。都市部、特に首都圏には多すぎるくらいの医師がいるのに対して、地方都市の中核病院や過疎地では慢性的に医師不足に悩まされています。例えば、医師が最も多い東京都と最も少ない岩手県では1.9倍もの格差がある状況です。
このように、深刻な医師不足に悩む地域に必要な医師を確保することを目的として地域枠選抜が導入されました。2018年に医療法の改正がなされ、医師の確保のために大学と都道府県とが連携するという内容が新たに加えられました。2019年にはそのための具体策として地域枠、地元出身入学者枠について明文化され、現在に至っています。
※出典:今後の地域枠のあり方について 医療従事者の需給に関する検討会 第34回 医師需給分科会
地域枠からの離脱はできる?
地域枠からの離脱はできなくないものの、地域医療の充実や医師偏在の解消という背景がある以上、推奨されていません。地域枠を離脱する場合は貸与された奨学金に利子をつけて一括返済が必要で、その利子も離脱を防ぐため10%と非常に高く設定されています。
厚生労働省が2020年に調べた地域枠からの離脱理由は、以下のようなものでした。
- 希望する進路と不一致のため
- 自己都合(理由不明)
- 留年・国家試験不合格
- 退学
- 結婚
- 体調不良
- 家庭の事情
地域枠選抜の受験倍率が1を超えている場合は、離脱することによって本来その地域で医師になるはずだったほかの受験生のチャンスを奪ってしまったという道義的責任が残ります。
しかし、離脱者に対する対応に関してはケースによって異なっているのが現状で、今後厚生労働省が離脱者の対応に関して統一見解を出すことが求められています。
※出典:地域枠離脱について 医療従事者の需給に関する検討会 第35回 医師需給分科会
より働きやすくなる対策も
地域枠離脱は一定の割合で生じているのが現状です。そのため、地域枠の医師がより働きやすくなるような取り組みも行われています。地域医療に対する意識を高めるためのセミナーや交流会等の実施、キャリア形成セミナー、キャリアコーディネーターによる定期的な面談、知事奨励会、知事との面談などが一例です。
このほか、結婚を理由とした離脱が医師や学生の間に一定数生じている現状から、卒業生同士が結婚した場合に配偶者の出身都道府県で勤務することを認めている自治医科大学の取り組みを参考にしてはどうかという意見も出されています。
地域医療に貢献できる地域枠選抜
医学部の地域枠選抜は、家計への負担を軽減しながら進学できるだけでなく、将来的に地域医療に貢献できるというメリットの多いシステムです。求められる要件と自分の希望がマッチしていれば、魅力的な選抜法だといえるでしょう。
将来的にミスマッチが起こらないよう、あらかじめ要件を確認したうえで、将来どのような医師になりたいのか考え、明確な目的意識を持って志望することが必要です。医学部の地域枠選抜を狙うなら医学部進学に特化した予備校でしっかり対策し、医学部への合格切符を手に入れましょう。
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