ときに中学レベルに立ち戻り、 伸び悩む分野を克服。
A君の場合(2016年卒)
宮崎大医学部進学。
他に、愛知医科大、金沢医科大、藤田保健衛生大医学部、兵庫医科大、川崎医科大合格。
地方の進学校出身のA君。浪人した場合、ほとんどの生徒が大手の予備校に通います。しかし、「医師を目指す生徒に囲まれた環境で勉強することが大事」だと感じている両親の勧めもあり、メビオにやってきました。しかし入会に際して行われる実力判定テストの出来は、国公立医学部を目指す生徒としてはあまり芳しいものではなく、春期講習は中くらいのクラスに入りました。
メビオの春期講習では、科目を英語と数学に絞り徹底的に基礎的な内容のチェックをします。1年間戦っていく上での土台を再点検し、必要に応じて補修していきます。A君は一見簡単そうに見える課題でもとても素直に取り組み、この1年で医学部に合格できる素質を十分に持っていると感じさせました。国公立医学部に合格できるほどの能力があるかということに関しては、実際のところ未知数でありましたが、A君の謙虚さ、素直さはこれから1年間勉強を積み上げていくなかで頼れる武器になると思われたため、4月から始まる本科講習では国公立クラスでスタートすることになりました。
いざ本科講習が始まってみると、他の生徒との実力の差は大きく、常に遅れがちになりながらも、懸命についていくという状況が続きました。難しめの応用問題となると、問題を前にして手も足も出ずに、ただ白紙のままの解答用紙を悔しげに見つめているだけのことも多くありました。それは能力的に見劣るというよりは、経験値の低さゆえであることを見抜いていた講師陣は、そんなA君を励まし、時には授業後に講師ルームに呼んでA君が納得のいくまで説明を繰り返しました。それに応えるようにA君はとても意欲的に復習に取り組み、できなかった問題もなんとかクリアしながら学習を進めていきました。
そして夏期講習を経て秋。A君の前向きさは、確実にA君の得点力自体を押し上げていきました。しかし、 物事がうまくいきかけている時ほど、不安定な面が露呈してしまうのも事実。幾何的な考察力が足りないことを察した数学の谷島は、通常数学が苦手な下位クラスの生徒が行う「中学幾何のトレーニング」をあえてA君に勧めました。さすがにA君も最初は乗り気ではありませんでしたが、徐々に苦にならなくなったようで、 楽しんで取り組んでくれるようになりました。
そして冬。A君の努力もあり、素直な出題にはかなり安定して得点できるようになっていました。しかし国公立2次レベルになると、どの科目もあと一歩足りないという状況。そうしたなか、センター試験そして私立の受験が始まりました。
国公立の出願に関しては、A君の適性を知る各科目の担当講師とA君本人とで検討が繰り返されました。A君の適性を考慮すると素直な出題の大学での高得点勝負が妥当かとも思われました。しかし少しもミスが許されないプレッシャーよりも、難しめの出題へのチャレンジの方をA君が強く希望したこともあり、宮崎大への出願となりました。
受験の序盤で川崎医科大・兵庫医科大など中堅の私立医大の合格をしっかりと確保したA君。その勢いのまま、宮崎大医学部対策授業が進められました。ずっと私立の試験が続いた直後でしたが、1年間手を抜かずに努力してきたA君は、さらに力強さを身につけながら授業に臨むことができました。特に英語はビジネスレターの英作文など、他校に見られない出題形式でしたが、担当講師上田の指示通り本当にしっかりと取り組んでくれました。
そして念願の国公立医学部合格。合格したA君に、「本当によくやったなあ」とある講師が声をかけました。それに対してA君は少し照れながらにこやかに語ってくれました。「だって6割とればよかったんでしょ」と。宮崎大の難しめの出題に対して、「A君になんとか6割もぎとってほしい」と苦心していた講師陣の気持ちとは裏腹に、「6割とるだけでいい」とA君本人は楽観視していたのです。ほんの1年前には難問を前に全く手も足も出ずうなだれていたA君が、この1年で成長したことを改めて実感した瞬間でした。