藤田医科大学入試問題のフカヨミ|メビオ数学科 亀井
藤田医科大学入試問題のフカヨミ|メビオ数学科 亀井
うんちく・小ネタ
入試
メビオ講師コラム
2021/03/16(火)
(最終更新日2023/02/04)
医学部入試問題のフカヨミ
メビオでは問題入手可能な私立医学部では解答速報を行っています.
解答は,受験生として最も望ましい解法を掲載するのですが, なかには数学的に内容が深く興味深い問題もあって,じっくり考えると実に面白いものも多いのです.
最近解いた問題で,私が見つけた「別解」をひとつ紹介しましょう.
藤田医科大学 一般後期入試問題(2021年 3月4日実施)
問題1(9)は次のようでした.
問題1(9)
普通に微分したら解けますよね.解答速報でもそうやって解いています.
でもこれはある程度数学にこだわりのある人には次のように見えるはずです.
- 疑問1
「正の数 において と の間に成り立つきれいな不等式はあるのだろうか?」 - 疑問2
「その関係は と の関係に拡張できるだろうか?」
疑問1の答
普通の平均(相加平均)は
平均というだけあって
相乗平均
しかし平均と呼べそうなものはいくらでもあるのであって,
例えば
その平方根
これも立派な平均です.
これは作り方から
同じように考えて,
4乗平均以降も定義できますね.
ところで
こういうところで「そりゃそうだろう」と思えたら,あなたには数学のセンスがあります.
簡単にいうと次が成り立つからです.
「2乗すれば大きい数の影響がさらに大きくなるから,2乗平均は相加平均より大きい数に近い.」
するともう何が成り立つか答は見えていますね.
「3乗平均は2乗平均よりも大きいだろう.」
式で書くと
疑問1の答はこれだったのです.
この結果は 当然任意の自然数に対する累乗平均に一般化できます.
変数の数を増やしても成り立つでしょう.
さらには
実際に証明はそのように一般化して行います.
詳しくは調べていただくことにしますが,
「
ことがわかります.
疑問2は次のように考えます.
この発想はメビオの数学模擬授業で聞いた人もいるでしょう.春期講習でも扱っています.
ただ,そのままの形ではなく発想を流用するので,そのあたりが柔軟性,応用力を要するところです.
この式の
さらに
この式は
疑問2もこれで解決しそうだと思いませんか.
問題1(9) の別解を完成
以上のことを踏まえて,問題1(9) の別解を完成させてみると,次のようになります.
累乗平均不等式により正の数
が成り立つ.
等号は
これより
いかがですか.実際の解答にするには無理がありますが,応用の利きそうな手法がいっぱい詰まった解法だと思いませんか.
楽しみながらこのような知識を増やしていければ数学力が格段にアップすること請け合いです!
医学部進学予備校メビオ 数学科 講師 亀井