医学部コラム
社会人の医学部受験!知っておくべき知識まとめ
基本情報
2021/12/15(水)
(最終更新日2024/03/29)
以前から既卒者が医学部を受験するということはありましたが、最近になってその傾向に拍車がかかっています。社会の状況を鑑み、世の中の役に立ちたいと志し高く思う人、不安定な経済情勢の中、安定した収入を求める人、一度は諦めた夢に再度チャレンジしようとする人など、動機はさまざまです。
ここでは、社会人で医学部受験を目指す人に向けて、医学部受験の方法、試験内容、勉強方法などについて説明していきます。
目次
1.社会人になってからの受験が増えている理由
2.社会人の医学部の受験方法について
2-1テレビは客観的な視点で見る
2-2医師の手記や体験談を本で知る
3.社会人の医学部受験の試験内容とは
4.社会人の医学部受験の勉強方法
5.まとめ
社会人になってからの受験が増えている理由
高齢化社会となって久しい日本において、需要の高い医師という職業を希望する人の数は増える一方です。そのため、医学部入試は相変わらず熾烈を極めています。すでに社会人としての道を歩み始めているにも関わらず、医学部受験を目指す理由とは一体何なのでしょうか。
理由はさまざまありますが、1つは人命を助けるという医師の仕事の高潔さに惹かれ、その使命を自らも背負いたいと願うからというのが挙げられます。人に尽くしたいと考える人が社会人になったあとに医学部への受験を目指すのです。
これは、今現在の社会情勢が影響しているとも言えるでしょう。このコロナ禍における医療従事者の方たちへの尊敬と感謝の念が、献身的な考えを持つ人たちの心を刺激しているようです。
実は、この「コロナ禍であること」が社会人の医学部受験にとって有利に働いている側面があるのです。2020年度は学校が休校になった期間があった影響を考慮し、文科省は大学側に試験内容を考慮するよう求めました。具体的に言うと、入試において数IIIは必須ではなく選択科目にするなど、学びきれなかった範囲を避けられるように配慮すべし、ということです。このことは、受験勉強を終えて久しい社会人や文系学科を卒業した社会人に対して朗報となったでしょう。また、リモートワークが推奨され、時間の使い方が各個人の裁量に任されることが増えたため、受験のための勉強時間を取りやすい環境ができました。
このような理由があり、今、社会人の医学部受験希望者が増えています。
社会人の医学部の受験方法について
社会人が医学部を受験する場合、大きく分けて「一般入試」と「医学部学士編入制度」の2つがあります。それぞれの受験方法について説明していきます。
一般選抜入試
社会人が医学部受験を目指す場合で、元々が薬学部や歯学部、理工学部などの理系学部ではなかった人であれば、一般入試(一般選抜入試)を考えるのがおすすめです。一概には言えませんが、後述するように学士編入はハードルが高くなります。競争率が高いことには変わりないですが、一般入試(一般選抜入試)での合格を狙った方が可能性は上がると考えられます。
一般入試(一般選抜入試)の内容は、学生や浪人生が受験するものと同じです。国公立大学であれば共通テストと大学個別の二次試験を受けます。共通テストの科目は英、数、国、理、社で、個別の二次試験で英、数、理の筆記試験と面接、小論文を課す大学が多いです。私大は各大学によって違いがありますが、数学が選択科目となっており、数学の試験を受けなくても良い学校もあります。
本業をこなしながら受験勉強をしなければならない社会人にとって、受験科目の選定も作戦の1つです。自分の得意・不得意科目を考慮した志望校選びも重要です。
医学部学士編入制度
大学によって条件は異なりますが、基本的には4年制大学以上を卒業している、または卒業見込みであれば学士編入試験を受けられます。学士編入で入学すると、多くの大学医学部では2年次または3年次に編入でき、卒業までの時間を短縮できるため人気があります。しかし、現実的には薬学部や歯学部といった、医学部に準じるような学部を卒業した人たちが多く受験しています。
試験内容としては自然科学系や生命科学系の試験に加えて英語検定の点数が一定以上必要であったり、小論文や面接があったりします。一般入試(一般選抜入試)に比べて試験科目も少ないので、学士編入はチャンスが大きいように思えるかもしれません。しかし、編入試験内容についての情報は一般入試(一般選抜入試)と比べて少なく、適切な準備をするのが難しいとも言えます。さらに、募集人数が数人~十数人というケースが多く、そこに受験者が殺到するため、倍率は一般入試(一般選抜入試)よりもはるかに高いのです。場合によっては50倍ほどの倍率を勝ち抜かなければ合格できないこともあります。
社会人の医学部受験の試験内容とは
一般入試(一般選抜入試)については、現役生や浪人生が受験するものと同じです。国公立大学や一部の私立大学では共通テストが用いられます。国公立大学の共通テスト試験は英語(筆記とリスニング)、数学(1Aと2B)、国語(もちろん現代文だけではなく古文や漢文も含まれます)、理科(化学、物理、生物の中から2科目を選択)、社会(地歴公民の中から1科目を選択)の全5教科7科目です。二次試験として英語、数学(1A、2B、3)、理科(化学、物理、生物の中から2科目を選択)と面接及び小論文試験が課される学校が多くあります。中には、地歴公民の試験が少し簡単であったり、理科の選択の中で物理や化学を必須としていたりする学校もあるなど学校ごとに違いがありますので、希望する学校の試験をよく確認してください。
そして、私立大学については基本的には英語と数学(1A、2B、3)と理科(化学、物理、生物の中から2科目を選択)の試験を行う学校が多いです。例外的に、数学、化学、物理、生物、国語の中から2つを選ぶ学校があったり、数学の範囲として数3を含まない学校があったりします。コロナの影響で2021年度は数3が除外されていた学校もありましたが、今後どうなるかは未定です。
そして、学士編入試験については理科系の筆記試験に加えて英語の筆記試験が行われるか、またはTOEICの点数が必要という学校もあります。TOEICでは800点台中盤以上なければ合格が難しい学校もあり、元々ハイスコアを持っているのでなければ、しっかりと対策しなければならないでしょう。それに加えて面接試験も行われます。
社会人の医学部受験の勉強方法
まず、自分の得意、不得意を認識してみてください。人によっては、社会に出てから英語が必須の職場に入り、卒業時と比べて英語が得意になっていることもありますし、社会人経験によって新聞や書籍に触れることが増え、読解力が増しているかもしれません。それらは、一度模試を受験してみることではっきりとするでしょう。自分の現状レベルを把握することから始めてみてください。
そして、強い意思を持って受験に臨むことです。人の行動を制約する要素として、時間とお金が挙げられます。それらをやり繰りする計画を立ててみましょう。受験勉強期間中の生活費や予備校の費用、ひいては見事受験に合格した場合の学費など、受験から卒業までの期間の費用について見通しを立てておく必要があります。その上で、予備校に入るならばどの程度お金をかけられるかも見えてくるはずです。
模試を受けて自分の実力を知った後、自分に足りない基礎的なことを身に着ける勉強をしましょう。国公立大学受験のための共通テストでは、最低でも80%の正解率が必要ですし、私立大学の場合は偏差値65以上なければ医学部合格は難しいのが昨今の状況です。ですから、特に苦手な科目の底上げと、得意科目のキープや更なるレベルアップを目指してバランス良く得点できるように勉強しましょう。どんなに得意な科目があったとしても、最高点は100点です。それ以上に得点することはできませんが、苦手科目はどこまでも落ちてしまいます。たとえば英語で100点が取れたとしても、理科が苦手で50点、40点という状況では合格は難しくなります。
最後に、モチベーションを維持できる環境づくりも行いましょう。学生の頃であれば、周りの友だちも受験勉強に向かって励み、お互いに励ましあえるような状況だったかもしれません。しかし、社会人で受験生となったあなたの周りの人が必ずしもあなたの状況を理解してくれるとは限らないのです。遊びに誘われても堅い意思を持って勉強にいそしむことができるような強い気持ちが必要となります。
まとめ
社会人の医学部受験希望者にとって有利に働く状況があるとは言え、医学部合格が超難関であることには変わりありません。しかし、社会人として得た知識、経験を歓迎してくれる大学もありますし、試験に合格するための努力をすれば合格への道筋は開けます。薬学部や歯学部などを卒業した人であれば学士編入を積極的に検討するのも良いでしょう。しかし、そうでなければ一般入試を検討してみてください。そして、各教科ともにバランス良く高得点が取れるように勉強しましょう。