医学部コラム
医学部の奨学金って?さまざまな奨学金制度をまとめて紹介
基本情報
2021/12/18(土)
(最終更新日2023/04/24)
医学部に進学することを決意したとき、受験を突破できる実力をつけられるかどうかがハードルのひとつですが、同時に費用がどのくらい必要なのかも気になるのではないでしょうか。地元を離れて一人暮らしをすることになれば、学費だけに限らず、さまざまな費用がかかることが心配だという人もいるはずです。
公的・民間問わず、医学部で学ぶために活用できる奨学金制度はいろいろあります。この記事では医学部の学費について簡単に説明するとともに、活用できる奨学金についてまとめますので参考にしてください。
目次
1.医学部の学費について
2.医学部で活用できる奨学金を解説
2-1公的な奨学金制度とは?
2-2民間の奨学金制度とは?
2-3大学の制度とは?
2-4その他の奨学金制度は?
3.医学部のさまざまな奨学金制度
医学部の学費について
一般的に医学部の学費は他学部に比べると高く、しかも卒業まで6年分の総額を考えておかなければなりません。特に私立大学は国公立大学の学費よりも高額になるうえ、大学によってかなり差もあります。
国立大学は入学金が28万2000円、授業料は年間53万5800円と全国一律になっているため、基本的にどこの大学でも同じです。大学によって多少違うこともあるものの、一般的には6年間のトータルで350万円程度になります。公立大学の場合それほど大きな違いではありませんが、県外や大学の周辺地域以外の学生に対する入学金が多少高くなることもあります。
私立大学の医学部になると、6年間の平均額が3000~3500万円程度で桁が違います。安いところで2000万円弱、高いところでは4500万円を超えるところもあります。
医学部で活用できる奨学金を解説
医学部の学費は他学部より比較的高く、6年分を確保するのは簡単ではありません。ただしさまざまな奨学金制度があるため、うまく活用できれば家計の負担を減らすことが可能です。ここからは公的な制度に加えて、民間や大学独自の奨学金制度について詳しく解説します。
公的な奨学金制度とは?
国公立大学の医学部に進学する場合、各大学で入学金や学費の免除制度があります。公的な支援を受けることになるため、誰でも受けられるわけではありません。免除制度を受けるためには、授業料等の納付が困難な経済的理由があるとともに学習意欲があること、一定の学力の基準などが設けられています。免除額は全額や半額、3分の1など、大学によってさまざまです。
公的な奨学金制度のなかでは「日本学生支援機構奨学金」が利用されています。独立行政法人 日本学生支援機構(JASSO)が経済的理由で進学が困難な学生に対して支援する制度で、かつての育英会奨学金の制度を引き継ぎました。「貸与型」または「給付型」があり、貸与型は無利子の第一種奨学金と利子付きの第二種奨学金にわかれています。
2020年4月からは住民税非課税世帯とそれに準じる世帯を対象に、入学金と授業料の免除または減額にプラスして、給付型の奨学金も給付される「高等教育の就学支援新制度」がスタートしました。
地方では医師不足が深刻なところが多いことに加え、診療科によっては人が集まらないこともあります。そのような医師の偏在を解消すべく「地域枠」を設ける制度を活用している大学も増えました。
卒業後は規定の期間その地域で働くことなどが条件になっています。ただし同じ地域枠でも地元出身者の枠があるケースや奨学金貸与の有無、卒業後の就業の条件など、詳細は大学によって異なります。
法務省から貸与される奨学金として「矯正医官修学資金貸与制度」があります。矯正医官は刑務所や拘置所などの矯正施設で医療に従事する医師です。卒業後に矯正施設の職員となることを条件に奨学金が貸与され、一定期間勤務すれば全額または一部返還が免除されます。
防衛医科大学校の医学科は入学した学生の段階で特別職国家公務員という身分になり、入学金や授業料は徴収されません。卒業後は9年間幹部自衛官として勤務しなければなりませんが、就学期間も月額11万円の支給や期末手当等が支給されます。
民間の奨学金制度とは?
医学部に進学する際に利用できる奨学金制度は、民間にもさまざまなものがあります。そのひとつが「生命だけは平等だ」の哲学を持つ、徳洲会グループの「徳洲会奨学金」です。卒業後に徳洲会グループの病院で勤務することを希望する学生に、月15万円の支給を最大6年間貸与しています。利息は年2.0%ですが、条件を満たせば返還が免除されます。
1953年に結成された全日本民主医療機関連合会(民医連)にも、医師を目指す学生のための奨学金制度「民医連奨学金」があります。各都道府県の民医連によって詳細に違いはありますが、全国の医学部在学の学生が対象です。卒業後は民医連の医療機関で研修や勤務することで返還が免除されます。日本学生支援機構奨学金との併用も可能です。
へき地医療を担う人材の育成に取り組んでいる公益社団法人 地域医療振興会でも、最大6年月額20万円貸与する奨学金制度を設けています。卒業後に指定の病院等で勤務すれば、全額が返還免除です。
ほかにも民間財団や地方公共団体が提供している「民間財団・地方公共団体奨学金」を活用することも可能です。大学の推薦を受けて出願する「学校推薦群」と自分で自由に希望するところに出願できる「一般公募群」があります。学校推薦群は主に給付型で、一般公募群は給付型と貸与型両方がありますが、出願資格や期間、給付または貸与の金額などの詳細はさまざまです。
民間の病院を運営している医療法人のなかにも独自に奨学金制度を設けているところがあります。北海道の帯広市を中心とした十勝地方で複数の医療施設を展開する「社会医療法人 北斗」もそのひとつです。
社会医療法人 北斗では医師や薬剤師、看護師など幅広く医療従事者に対する奨学金制度を設けています。医師に対する奨学金は最長6年間月額15万円が貸与され、貸与期間の1.5倍の期間北斗のグループで勤務すれば返還は免除されます。
秋田県秋田市を中心に精神医療や介護保険関連の事業を展開している「医療法人 久幸会」にも、将来グループに就職を希望する人向けの奨学金制度があります。
茨城県鹿嶋市で小山記念病院を運営する「医療法人 社団善仁会小山記念病院」には、将来勤務する意思のある人に対し、上限1000万円を貸与する奨学金制度を設けています。卒業後12年以内に10年以上勤務すれば返還は免除です。
鳥取県鳥取市で神経内科や心療内科、専門外来を専門とし、医療福祉にも力を入れている「社会医療法人 明和会医療福祉センター」でも、医師奨学金制度があります。将来2カ所あるどちらかの医療施設に勤務する意思がある人を対象に月額20万円貸与され、貸与期間の3分の2以上勤務すれば全額返還する必要がありません。
島根県雲南市で平成記念病院を運営する「医療法人 陶朋会」では、地域医療を志し、将来平成記念病院で一定期間勤務する条件で入学時に一時金として30万、月額15万円が貸与されます。貸与期間と同年数勤務することで、全額返済が免除されます。
兵庫県で複数リハビリテーション病院を運営する「医療法人社団 和敬会」でも最長6年間、月額20万貸与されます。卒業後に臨床研修病院で2年研修を受け、和敬会の病院で6年勤務すれば返還は不要です。
大学の制度とは?
大学自体でも独自に奨学金制度を設けているところがありますが、多くは成績優秀者を対象としたものや、本来学費を負担する保護者に問題が生じたときの一時金のようなものです。貸与される金額も高額になりがちな私立大学医学部の学費を賄えるほどではありませんが、例外はあります。
たとえば自治医科大学では全入学者を対象として入学時に大学との貸与契約を締結し、納付金相当額と入学時学業準備費を貸与する修学資金貸与制度があります。この制度のおかげで入学時に入学金や授業料を準備する必要がありません。卒業後指定の病院等で貸与期間の1.5倍勤務することで返還が不要になります。
産業医科大学医学部では納入金の3分の2を医学部全学生に貸与する「修学資金貸与制度」があり、6年間の実質負担額は1130万円(2021年4月時点)です。全額返還免除の要件を満たすためには貸与期間の1.5倍の期間勤務しなければなりません。
慶応義塾大学医学部では合格発表時に採否が確定する合格時保証型奨学金として人材育成特別事業奨学金があり、1~4年度まで年間200万円給付される返還の義務がない奨学金があります。ほかにも2~6年度を対象とした各種奨学金制度が充実しているところが特徴です。
国際医療福祉大学医学部では50名を対象に入学金150万円の免除および、6年間で最大1400万円給付される医学部特待奨学生制度があります。北里大学医学部にも若干名、入学金と学費の全額免除または一部免除される医学部特待生制度が設けられています。
その他の奨学金制度は?
医学部進学のための資金の調達方法として、日本政策金融公庫と民間の銀行による教育ローンを活用することもできます。日本政策金融公庫の教育一般貸付は、2021年時点ですでに40年以上の取り扱い実績のある国が提供する教育ローンです。
受験前でも申し込みが可能で、子ども1人あたり上限350万円まで借り入れができます。日本政策金融公庫の教育ローンは固定金利型で、2021年4月時点での金利は1.68%です。在学中は利息のみの返済にすることができるほか、最長15年の長期返済にも対応しています。
基本的に幅広い家庭を支援する制度ですが、世帯年収や子どもの人数など家庭の状況に応じて金利や返済期間などに優遇制度があります。一定の条件を満たせば上限を超えて450万円までの借り入れが可能なケースもあります。日本学生支援機構が提供している奨学金との併用も可能です。
民間の銀行が提供する教育ローンは固定金利型と変動金利型の両方を扱っている場合と、変動金利型のみの場合があります。金利はもちろん、借り入れ金額の上限は銀行によってさまざまです。
たとえばみずほ銀行は10万円以上300万円以内、イオン銀行は10万円以上500万円以内、楽天銀行は10~1000万円まで対応しています。銀行と提携している大学もあり、大学から紹介してくれることもあります。
医学部のさまざまな奨学金制度
医学部に進学する際に活用できる奨学金制度には、公的な制度のほか民間の団体や医療法人が提供しているもの、大学独自のものなどがあります。
返還の必要がない給与型のもあれば、返済しなければならない貸与型もあります。貸与型の場合でも、卒業後に一定期間決められた病院などで医療に従事することで、返還が免除される仕組みになっているところも少なくありません。しかし条件を満たさなければ一括で返還しなければならないことが多いため、規定を確認しておくことが大事です。
ほかに教育ローンを活用する方法もあり、なかには複数の奨学金や教育ローンを併用できるケースもあります。条件を満たして上手に奨学金を利用すれば、学費を最小限に抑えて医学部を卒業することも可能です。
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