入試から学べ!深く広げる語彙学習
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うんちく・小ネタ
入試
メビオ講師コラム
2021/05/16(日)
皆さんこんにちは。
本コラムでは、「語彙の楽しく効率的な学習法」を伝授したいと思います。
- 「語彙を覚えるのが苦痛でしかない」
- 「多義語をなかなか整理できない」
- 「入試で役立つ実戦的な語彙力を身につけたい」
という方は必見です!ぜひ最後まで読んでください。
(読み終えた頃には、「これは使える!」と感じてもらえると思います)
まずは、次の入試問題を軽く見てみましょう。
近畿大学医学部・2021年度前期入試
- Q.
- Complete the following sentence with the best word.
- ア.
- vetted
- イ.
- barred
- ウ.
- assented
- エ.
- outlawed
みなさんも正答を考えてみてください。
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正答は?
…皆さんは、この問題を見てすぐに正答がわかりましたか?
知らない語彙も多くて戸惑った人も少なくないでしょう。
正解は、イ. barred です。(動詞 “bar” の過去分詞形)
※他の選択肢の意味は以下の通りです。
ア. vetted「調べられた」
ウ. assented 「同意された」
エ. outlawed「非合法化された」
(どれもレベルの高い語彙ばかりですね)
近畿大学医学部は、受験生にとって馴染みのない語句の意味を問う大学で有名ですが、
“bar”という単語を聞いて、皆さんの頭の中にはどのようなイメージがありますか?
実はこの単語、意外と「深い」意味があるのです。
皆さんが知らない驚くべき “bar” の世界を深めてみましょう!
いざ、 “bar” の世界
“bar” は多義語であり、文によっていろいろな意味になります。
みなさんが “bar” と聞いて思い浮かぶのは、次のようなイメージではないでしょうか?
カタカナで「バー」と書かれたら、「酒場」の意味が真っ先に思い浮かぶ人が多いと思います。
もちろん、これも英語でそのまま “bar” といいます。
さて、みなさんは “bar” には意外な語源があるのをご存知でしょうか?
諸説ありますが、
最古の意味は「門のかんぬき」であると言われています。
(↓このようなものです。戸を閉めておく真ん中の棒です。)
そこから、 「かんぬきに用いるもの」⇒「細長い棒」 の意味に派生しました。
(おやつの「チョコバー」、サッカーゴールの「クロスバー」など)
「え、棒と酒場って何の関係があるの?」と思った人もいると思います。
では、「酒場」の意味で用いられた背景も簡単に紹介します。
これもまた諸説ありますが、「酒場」の意味で用いられた背景として、以下の説が有力です。
- 昔のバーでは、お酒は「カウンターにある樽から注がれて」出されていた。
↓
- ある日、勝手に樽からお酒を注ぐ客が現れた。
↓
- それを防ぐため、客と店員の間に仕切りとなる「棒」を置くようになった。
↓
- やがて、「酒場」そのものを “bar” と呼ぶようになった。
(※他にもいろいろな説がありますが、総じて「棒」から派生したと見てよいでしょう)
こうして、皆さんが知っている「バー」の意味が成立しました。
“bar” にはこのようなストーリーがあったのです。
広く使用される“bar”
ちなみに、 “bar” は「酒場」以外にも「カウンター形式の軽飲食店」「飲食物の売り台」、あるいは「売り場」などの意味でも広く使用されます。
⚫︎sushi bar 「寿司屋」
⚫︎coffee bar 「コーヒー店」
⚫︎salad bar 「サラダバー」
⚫︎record bar 「レコード売り場」
…etc.
そして、 “bar” はなんと「弁護士」の意味でも用いられます。
これは、傍聴席と裁判官席を隔てる「仕切り」から派生したと言われています。
(アメリカの司法試験は “Bar Exam” といいます)
…ここまで知っている受験生はかなり少ないでしょう。
ただ、こんな具合に語彙の理解を深めているうちに、 “bar” のいろんな意味が自然に頭に定着していれば、あなたは「勝ち」なのです。
入試問題の英文の意味は?
では、さきほどの入試問題の英文をもう一度見てみましょう。
He was barred from using the student lounge because he had broken the rules several times.
ここからは、動詞の “bar” の意味を紹介します。
いろいろな意味がありますが、受験では「排除する・防ぐ・禁じる」という意味を知っていれば十分でしょう。
…これを聞いた瞬間、もうお気づきの人もいると思います。
この動詞の意味も、 “bar” の語源である「門のかんぬき」から派生したものであることがわかりますね。
(「かんぬき」 ⇒ 「侵入を阻むもの」 ⇒ 「排除する・防ぐ・禁じる」)
このように、「単語の成り立ち」に触れることで、単語がもつ一見関係のない複数の意味が、実は「1つのストーリー」をもつことがわかります。
(知っていると知らないとでは、記憶の定着度も大きく異なってくるでしょう)
ただし、動詞の “bar” については、さらにもう1つ知っておくべきことがあります。
“bar” を実際に入試で「使える」レベルになるには、次の形で覚えておく必要があります。
“bar A from B” 「AをBから排除する」
“bar A from doing ~” 「Aがdoするのを防ぐ・禁じる」
このように、単語には「セットで用いられやすい語」が存在することが少なくありません。
動詞の “bar” の意味だけ知っていても、それは知識が「点」に留まってしまいます。
前置詞 “from” とセットで覚えておくことで、初めて実戦で使えるようになるのです。
(=「点」が「線」へと進化!)
ちなみに、先ほどの問題の英文の意味は以下のようになります。
He was barred from using the student lounge because he had broken the rules several times.
「彼は何度もルールを破ったので学生ラウンジの使用を禁じられた」
(能動態:“bar A from doing ~” ⇒ 受動態:“A is barred from doing ~”)
さらに知識を拡大!
このようにして “bar” を使えるレベルにまで仕上げたわけですが、せっかくここまできたので、最後にあと一息、知識を一気に拡大してみましょう!
“bar A from doing 〜” というフレーズを見て、あることに気が付いた人がいると思います。
「あれ、この形、どこかで見たことがある気が…」
…その通り!皆さんが必ず一度は見たことのある、この動詞ですね。
The heavy rain prevented me from going out.
「大雨のせいで外出できなかった」
“prevent” は、
“prevent A from doing ~” 「Aがdoするのを妨げる」
というフレーズで覚えておくことが重要ですよね。
そうです。
動詞の “bar” は “prevent” と同じ使い方をするのです。
もっというと、そもそも「妨害・禁止」などを表す動詞は、総じて以下の形をとります。
“動詞 + A + from + doing ~ ”
「Aがdoするのを妨げる・禁ずる」
prevent, stop, keep, discourage, hinder,prohibit, ban, inhibit, deter, bar …etc.
(すべて “A from doing~” とセット!!)
※なお、2019年度・東海大学医学部では, “deter” と “discourage” が同義語選択問題で出題されました。
(入試でよく狙われる内容なのです)
ここまで押さえておくことで、「線」まで仕上げた知識がさらに「面」へと進化するのです。
語彙学習で大事なのは、決して知識を「単体」で覚えるのではなく、
「使えるレベル」まで昇華させ、さらに似たものを「グループ」にまとめることです。
(「点」から「線」、「線」から「面」へと進化させましょう!)
以上、入試問題を少し「フカヨミ」して語彙の話をしましたが、みなさんもこれから語彙力を強化するにあたり、
- 語源に基づき、多義語を一つのストーリーにまとめあげる
- 「点」を「線」に、「線」を「面」に進化させる
といったことを心がけてください。
そうすることで、複雑な語彙が自然と身につき、かつ「英語ってなんか面白いな」なんて思ってもらえたら幸いです。
(※入試問題の解答については、詳しくはメビオのHPの「解答速報」をご参照ください!!)