福岡大学医学部の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
試験時間70分。形式こそ大きな変更はないものの、例年の問題と比べると抽象的な内容や細部を問う問題が増え、難易度は上がった。順番通りにわからない問題に時間を掛けすぎるのではなく、問題の取捨選択をしながら得点を積み重ねる必要がある。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
記述 |
★★☆☆ |
【短文】和訳 |
チェス選手の精神に関する英文。文構造自体は2019年度までと比べても平易だが、内容が抽象的であり、日本語で表現することに難しさを感じた受験生も多かったと思われる。 |
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2 | 記述(選択式) | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致 |
昆虫への先天的な忌避感とその例外としてのミツバチに関する英文。文章自体は平易であり、内容も具体的に想像しやすいが、設問が細部を問う内容で、本文は理解できたが正答にはたどり着けなかった、という受験生も一定数いたと思われる。但し、不正解の選択肢にonly,always,noのような極端なキーワードが含まれるなどテクニックで乗り切れる部分もある。 |
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3 | 記述(選択式) | ★★★☆ |
【適語補充(不適)】文法・語法 |
2017年度、2018年度に出題されていた「適していないもの」を選択する問題が復活した。例年の福岡大学医学部の空所補充は素直な出題が多かったが、2020年度はマニアックな語法の細部を問う問題も含まれ、難易度は上がった。 |
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4 | 記述(選択式) | ★☆☆☆ |
【発音・アクセント】語彙力 |
難易度・形式ともに昨年同様にアクセントのある母音の発音の異同を問う形式。あまり時間を掛けすぎず、全問正解を目指したい。 |
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5 | 記述(選択式) | ★★★☆ |
【語句整序】和文あり |
例年通り全問1語句不要、6つの選択肢を並び替える整序問題。必要なイディオム知識、引っ掛けの巧妙さなど昨年度より難化しており、与えられた和文に惑わされず、文構造・品詞に気をつけて正答を導きたい。 |
数学
試験時間90分。2019年と比較すると易化。手の付きやすい問題が増えた。ただしどの問題も後半の設問は出来・不出来の差が大きくでそう。ここ10年以上、形式は一定している。第1問は6つ、第2問は4つの空所補充で、第3問は記述形式である。配点は空所で7割、記述で3割と推測される。第1、2問では確率、数列、図形と式やベクトルなどの幾何的分野、データの分析、整数問題からの出題頻度が高い(2020年は整数とデータが出題された)。第3問は決まって数学Ⅲの微積分(特に求積)から出題されている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 答のみ | ★★☆☆ |
【小問集合】複素数の図表示、整数の性質の活用、高次方程式・不等式 |
(i)複素数平面。(1)は基本的。(2)で戸惑った受験生が多かったかも知れない。 |
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2 | 答のみ | ★★☆☆ |
【小問集合】データの散らばり、データの相関、置換積分法・部分積分法 |
(i)データの分析。標準的な問題。 |
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3 | 記述式 | ★★★☆ |
【積分法】媒介変数による表示、最大・最小の応用、面積の応用 |
(i)極値を求めるだけの基本的な問題。 |
化学
理科2科目120分。出題で形式面に大きな変化はなく、難易度も昨年並み。大問1の小問集合と大問2の無機の知識問題は満点を目指したい。大問3の平衡の問題は上手に誘導に乗って序盤で点を稼ぎたい。後半の計算はやや重たいのでここで点数を稼げたか否かで差がついただろう。大問4のアミロペクチンの分枝を調べる実験問題は練習量により得点差がつく内容だったが、それ以外は落とせない。教科書レベルの事項をマスターしておくだけではなく、大問3のような一歩踏み込んだ題材にも触れておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述(一部選択) | ★☆☆☆ |
【小問集合】 |
例年通り小問集合が三問。無機の出題がなく、理論分野と有機分野のみの出題だった。どれも典型題で、失点を抑えたい設問であった。問3の異性体の数え上げは指示に従えただろうか。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【金属イオンの沈殿】 |
6 つの水溶液に含まれる金属イオンを実験結果から推定する問題.データが充分あるので[CuCl4]2− が黄緑色の錯イオンという知識がなくても正解にはたどり着けるだろう。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【化学平衡】 |
よく出題される二酸化窒素と四酸化二窒素の平衡の問題だったが出題者の意図する問題文の流れに沿って穴埋めが出来たかどうか。問2 の「お」が分からないと後の問題に影響してくるのでここを乗り切れたかどうかで点数に差が出るだろう。またこの問題が解けなくても問5(ii) や問6 は知識で解けるので、如何に解ける問題を探し出せたかどうかも大きい。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【糖類】 |
用語の穴埋め問題、スクロースの構造を選ぶ問題は落とせない。ただし選択肢にアルデヒドという用語がなかったので戸惑った受験生もいたかもしれない(日本化学会がアルデヒド基の名称をホルミル基に変更するようにと提言していることを受けての事と思われる)。糖類の枝分かれに関する問題は見慣れない受験生にとっては難しかったかもしれないが、計算も比較的きれいだったので対策をしていた受験生からすると解きやすかっただろう。 |
生物
理科2科目120分。大問5題は例年どおり。昨年に比べるとかなり難化したので目標は75%だろう。Ⅰ、Ⅳ、Ⅴは例年通り満点を狙いたいが、Ⅱ、Ⅲはなんとか半分以上取りたいところ。福岡大学医学部の問題でここまで難しい出題は初めてではないかと思われる。この傾向が続くとすれば、考察問題への対策が必要になるかもしれない。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の環境応答】筋肉と筋収縮 |
「筋収縮」は非常に基礎的な内容なので、ここは満点を目指したい。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【生命現象と物質】呼吸とそのしくみ、酸素を用いない呼吸 |
数理パズル的な設問や、細かい知識を必要とする設問があり、やや取り組みにくかったと思われる。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【生命現象と物質】細胞間情報伝達とタンパク質 |
「受容体と情報伝達」は、多くの受験生にとってあまり馴染みのない分野からの出題であり、正解するには対照実験の比較をすることに対する慣れが必要で、非常に取り組みにくかっただろう。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の環境応答】視覚と視覚器 |
非常に基礎的な内容なので、満点を目指したい。 |
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5 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の進化と系統】生物の系統分類 |
非常に基礎的な内容なので、満点を目指したい。 |
物理
理科2科目120分。昨年度並みの難易度。問題数は選択式が25問から21問に、記述が7問から8問に変化し、全体では問題数がやや減少した。昨年から引き続き解きやすい良問が多い。テストの形式、傾向ともに他の理系学部と同じ。まとめて作成して、比較的難易度の高い問題を医学部を含む日程に割り振っているように見える。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述(選択式) | ★☆☆☆ |
【波動】薄膜の干渉 |
薄膜による干渉の基本的な問題。丁寧な誘導がついているので(7)までは完答したい。 |
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2 | 記述(選択式) | ★★☆☆ |
【電磁気】電気回路 |
電流計・電圧計に関する標準的な問題。受験生が手薄になる分野でもあるので差がつきやすい。しかし、類題を解いたことがあれば完答は可能だろう。選択肢に似たような式が多いので、解答を選び間違えないように注意が必要。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【力学】運動方程式、運動量の保存 |
慣性力を用いて解く問題。標準的な問題だが、(ii)以降でミスをすると連鎖して大きく点を落としやすい。この問題に限ったことではないが、運動方程式を正確に立てる、計算ミスをなくすなど普段から心がけておく必要がある。また、次元解析で検算をする習慣もつけておきたい。重心系の考え方を使えると(8)は楽に解けるし、(5)(6)の検算も可能。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2020年度 | 2,518名 | 407名 | 111名 | 275/400 | 68.8% |
2019年度 | 2,543名 | 405名 | 207名 | 283/400 | 70.7% |
2018年度 | 2,608名 | 379名 | 144名 | 281/400 | 70.3% |
2017年度 | 2,678名 | 371名 | 185名 | 287/400 | 71.8% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2020年度 | 89.1% | 93.9% |
2019年度 | 71.9% | 75.2% |
2018年度 | 82.1% | 83.0% |
2017年度 | 78.7% | 82.8% |