兵庫医科大学の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。これまで出題されていた長文中の語句整序問題に代わって短めの英文中での空所補充問題が出題された。これにより時間内に解答を仕上げることは容易になった。文章内容はライフ・スタイル、医療全般といったように多岐にわたる。和文英訳はこれまで通り国公立二次レベルの力が要求される。テーマは絞りにくいが、毎年、逐語訳では英語にならないタイプの和文が出題されている。従って単語ばかりにとらわれず、伝えるべき内容を考えた上で平易な英語をうまく利用して解答を仕上げるといった練習が必要。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳、指示内容 |
医師と患者間での治療と回復についての認識の違いに関する英文。昨年度の全文を和訳する問題から大幅に変化。短い文章に和訳問題と説明問題が合計4題あり、指示語の内容を答えさせる問もある。指示語の内容は直前の文にあり、問題文の文構造も比較的平易。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳、同義語 |
アルツハイマー型認知症を患った祖父を持つ医師の回想録。(1)は同義語を選択する問題で、(2)は和訳。同義語選択は文の前後で判断が可能なものも多く解きやすい。和訳については英文構造、語彙レベルともに標準的である。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳、適語補充 |
病院での握手を禁じる試みに関する英文。(1)に関しては半分は動詞を中心とする句で文脈を把握して使うべき選択肢を決定する必要がある。(2)の下線部和訳については構造を踏まえて和訳を構成することを基本としつつも、一部日本語にするのが難しい箇所を含んでおり、語彙力だけでなく総合的な英語力を問う問題である。 |
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4 | 記述(選択) | ★★☆☆ |
【長文その他】適語補充 |
Ziplineのドローンによる医療物資配送に関する英文。10個の単語全てを使い切って10個の空所に挿入する問題。10個の選択肢中8個が前置詞であり、以前から見られた前置詞に関する習熟度を問う問題となっている。 |
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5 | 記述 | ★★★★ |
【英訳】英訳 |
鷲田清一のファッション論より抜粋された和文を英訳する問題。「とっかかり」のように、こなれた日本語表現を英訳する難しさはあるが、どのように英訳するかという方針は立てやすい。 |
数学
試験時間90分。ここ数年は穏やかな出題が多かったが2020年は大きく難化。分量も増えているが、時間不足というよりは解答の方針が立たずに動けなかった受験生が多かったと思われる。小問集合で頻出の分野は二次関数、数列、幾何的問題(図形と計量、ベクトルなど)、数学Ⅲの微積分、整数問題などである。2019年以降、問題文に新たに「途中の式や考え方等も記入すること」という文言が加わり記述重視の方向が感じられた。2020年は以前と比較して証明問題が非常に増えるなど、それがより明確になった。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【小問集合】いろいろな関数の積分、二次方程式・二次不等式の応用、組分け |
小問集合。設問は3つ。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【複素数平面】複素数の図表示 |
複素数平面。図形上の頂点間の関係を複素数を用いて表す問題。(3)以降で発想力が問われる。 |
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3 | 記述 | ★★★★ |
【積分法】不等式の証明への応用、定積分と不等式 |
(1) 不等式の証明。二項展開を用いるとよい。 |
化学
理科2科目で120分。化学は大問1〜3までと形式的な変化は無かった。受験生が苦手としがちなグラフ描画問題が出題されなかったこと、見慣れないテーマがなかったことを考えると2019年度より易化したと言えるだろう。とはいえ、2011年以降の兵庫医科大学の入試問題においては、典型題を経験的に解けるというだけでは太刀打ちできない問題が出題されることが多いので、問題形式にとらわれずに解ける問題を一つでも多く増やしておき、思考力を養っておくようにしたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【無機化学】アルカリ金属、アルカリ土類金属 |
アンモニアソーダ法、およびカルシウム化合物を中心とした各論および計算問題で、計算も軽いため得点源にしたい大問であった。1問だけ論述問題があったが、実験の基本操作を理解していれば難しくなかったであろう。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論化学】電池 |
リチウムイオン電池についての設問で、あわせてリチウムの各論や結晶格子についても問われた。原子量から(おおよその)単位格子内の中性子数を求めさせる問題は戸惑った受験生もいただろう。リチウムイオン電池について演習をしっかり積んでいたかどうかで差がついたと思われる。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【有機化学】構造推定 |
脂肪族化合物の構造推定問題。ケト-エノール互変については説明があったものの、受験生ならば見知っておきたい異性化である。ビニルアルコールや鎖状フルクトースなど、具体的な物質で理解を深めておいてほしい。目標としては(5)までを取りたい設問である。 |
生物
理科2科目で120分。大問の数が6から5題へと減少したが、そのぶん大問1の小問集合が14から20題に増え、全体的なボリュームに大きな変化はない。論述問題の合計字数が360字という小論文を1本書けそうな字数となっているのも例年通り。頻出の「進化・系統」からの出題はなし。対策として、膨大な量の論述問題を精度を少々犠牲にしてでも手早く処理できるようにする練習が必要である。また、本年は出題されなかったものの難度の高い出題がされやすい「進化・系統」の分野については、細かい論点まで丁寧に目配りしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【小問集合】 |
14題から20題に増えると同時に、易化しているため、時間はかけられないが確実に得点しておきたい。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生殖と発生】減数分裂、動物の受精 |
論述問題では「当たり前すぎる」ように思えて論述のポイントが絞りにくい設問があるが、迷っている時間はないので、思いついたことを即座に書いて次の設問に進む必要がある。論述あり。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】呼吸基質・呼吸商 |
題を解いた経験があるかどうかで差がつく問題。論述あり。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】遺伝子の調節 |
スプライシング・転写・翻訳についての標準的な出題で、論述問題で進化論的な視点が求められるところが兵庫医科大学らしい。論述あり。 |
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5 | 記述 | ★★★☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫 |
AIの持ちうる認知能力に関する英文。頻出の話題でもあり、設問も素直で解きやすい。 |
物理
理科2科目で120分。問題数は他大学と比較してかなり多い。加えて大問5問中3問の難易度が高く、60分程度で全て解き切るのはかなり難しい。昨年度以前と比較するとやや難化。意図がつかみにくいタイプの問題や、方針に詰まるような問題が出題されることがあるので、そのような問題で詰まった場合は要領良く飛ばして他の問題を解く練習をしておきたい。原子分野からの出題が比較的多いので一通りのテーマは復習しておきたい。過去問を利用して時間の使い方や、手をつける問題の選択の仕方を練習しておく必要がある。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】電子の加速度と速度、電流が磁界から受ける力 |
昨年度まで小問集合だったが、2020年度は電磁気で原子内の電子が作る磁場の問題。計算を淡々とこなすだけの問題だが、受験生には出題意図が分かり辛く、計算結果が見慣れない上に計算量が多いため時間がかかる。最初に手をつけるのは得策ではない。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】摩擦、運動方程式 |
摩擦のある斜面上の物体が滑る条件で、入試では良く出題されるテーマ。是非完答しておきたい。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【熱】気体分子の運動と圧力、運動量と力積 |
円筒容器内の理想気体の分子運動論。通常の分子運動論と同じ結果が得られる。球状の容器の問題を解いたことがあれば解くことは可能だが、最後まで解ききるのは難しいだろう。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【波動】音の干渉と回折、音のドップラー効果 |
音波の干渉とドップラー効果の問題。基本的な知識があれば解ける問題なので完答したい。 |
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5 | 記述 | ★★★☆ |
【原子】原子核の崩壊と放射線 |
放射線の知識。受験生が手薄になりやすい分野であり、放射線量の具体的な数値を覚えている受験生はほとんどいなかったであろう。点数は取りにくいが時間はかからない。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2020年度 | 1,711名 | 435名 | 142名 | 404.8/550 | 62.2% |
2019年度 | 1,741名 | 444名 | 204名 | 357.8/550 | 65.1% |
2018年度 | 1,979名 | 436名 | 202名 | 351.8/550 | 63.9% |
2017年度 | 1,802名 | 420名 | 166名 | 371.5/500 | 74.3% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2020年度 | 97.5% | 97.3% |
2019年度 | 94.0% | 93.9% |
2018年度 | 97.5% | 97.2% |
2017年度 | 89.3% | 88.8% |