近畿大医学部の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
試験時間60分。昨年度前期一般試験、本年度推薦試験と内容・形式とも全く同じ出題。大問1の語彙レベルが例年よりもやや易化し、大問5の英文内容が頻出で設問が素直となったことで、全体としてはやや取り組みやすくなっている。全体として個性の強い出題であるが、その中で標準的な問題を取捨選択して素早く処理し、思考により正答にたどり着くことが出来る問題にしっかり時間をかけて解ききることが必要である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | マーク | ★★★☆ |
【文法・語法】文法・語法、語彙力 |
熟語・語法の知識を問う4択問題が10問。全体に語彙レベルは高く、やや難。知っている語彙を手がかりにすれば正解できる問題もある。 |
|||
2 | マーク | ★★☆☆ |
【正誤】英作文、文法・語法 |
和文に相当する英文を選ぶ問題が8問。内容・文法の両面からの考察が必要で、一部難度の高い問題も含まれが、各和文が正解となる選択肢の英文の構造を反映しているものが多い。 |
|||
3 | マーク | ★★★☆ |
【語句整序】文法・語法 |
短文中の空所(5個)に選択肢(5個)の語を並び替えて英文を完成させる問題が8問。論理的に空所に入る品詞は決まるが、語彙レベルが高くやや難。 |
|||
4 | マーク | ★★☆☆ |
【長文その他】適語補充 |
ネズミの嗅覚再生に関する英文。長文中適語補充が8問。医学用語に関する選択肢もいくつかあり、内容への理解度、知識で差が出る。 |
|||
5 | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致、適語補充 |
AIの持ちうる認知能力に関する英文。頻出の話題でもあり、設問も素直で解きやすい。 |
数学
試験時間60分。昨年度より問題の質・量ともに難化。形式面では変化なし。出題分野については頻出である数Ⅱの微積、および幾何的問題が一切無く、数列や整数といった分野に偏っていたのが特筆すべき点か。また分量については、多い年度も確かにあるのだが2020年は特に多かった。頻出分野は数列、平面図形・空間図形、数Ⅱ微積など。それらに続いて、確率、三角関数もしばしば出題される。記述問題については近畿大学が出版している過去問集において「考え方や途中までの式をみて部分点を与える」といったことが明言されている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 答のみ | ★★★☆ |
【数列】群数列、自然数の和・Σの計算 |
(1)が解ければ、残りは典型的な群数列の問題なので解法に迷うことはない。しかし計算が煩雑すぎて時間内に正解を求めるのは難しい。 |
|||
2 | 答のみ | ★★☆☆ |
【小問集合】三角関数の応用、整数の性質の活用 |
(1) の三角関数は難しい。前半の3倍角、4倍角の公式は導けるだろうが、それを使うと後半が大変になる。誘導を無視して独自に解く方が正解にたどり着けるのだが、それでも容易ではない。 |
|||
3 | 記述 | ★★★☆ |
【整数の性質】整数の性質の活用、常用対数・桁数・小数 |
記述形式である大問3で整数問題が出題されるのは珍しい。 |
化学
理科2科目で120分。今年度のテストでは形式的な変化は無かったが、アボガドロ定数が「6.022×1023 /mol」、気体定数が「8.314×103 Pa・L/(mol・k)」と普段より桁数多く与えられていた。分量が多く、時間が足りない中で計算も煩雑で高得点は取りづらい。「すべて選び」など正答にたどり着きにくい設問が増えたことで、昨年度より難化したと言って良いだろう。取るべき問題を正確に選んで丁寧に正答までたどりつく能力が求められる。また、無機・有機知識、計算分野どれもまんべんなく一定以上の力を付けておく必要があるだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【無機】【溶解度積】 |
【無機】酸・塩基や酸化・還元反応による気体の製法や沈殿の知識を問う問題。問題の問い方が独特で、間違う場所によって失点の大きさが変わってしまう。 |
|||
2 | 記述 | ★〜★★★☆ |
【硫黄】【反応速度】 |
【硫黄】硫黄の同位体の構造と、硫黄化合物の反応についての問題で、なるべく失点を少なくおさえたい設問である。気体定数の桁数の多さや窒素や酸素の存在に惑わされず、計算もしっかり合わせたい。 |
|||
3 | 記述 | ★★〜★★★☆ |
【脂肪族化合物】ヨードホルム反応 【脂肪族化合物】C5H10のアルケン |
【脂肪族化合物】ヨードホルム反応の化学反応式を書かせる問題以外は平易な問題であった。この反応式は暗記するか、書き方のポイントを押さえておきたい。 |
生物
理科2科目で120分。構成に変更なし。昨年の「動物の行動(反響定位)」のようなマイナーなテーマが影を潜め、テーマ自体はよく知られたものが揃ったため、2年連続で易化したといえるだろう。 全体としては例年通り、高校生物を越えた範囲からの出題も見られるものの、真面目に勉強していれば得点できる部分も多い。頻出の「免疫」の分野については、発展的な内容まで踏み込んで学習しておくことが対策として有効だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】体液の循環・循環系 |
「血管系」の問題は空所補充の問題にかなり解答しづらい箇所が見られるが、計算問題や論述問題は標準的なので、それなりに点は集められるだろう。計算あり。論述あり。 |
|||
2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の環境応答】聴覚と聴覚器、その他の受容器 |
「受容器」の問題はやや細かめの知識を問う設問もあるが、全体的には標準的な内容である。論述あり。 |
|||
3 | 記述 | ★★★☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫 |
「免疫」の問題については、問1の空欄補充は非常に取り組みやすいのでぜひ得点しておきたいが、問3以降の設問は発展的な内容で、関連する話を耳にしたことがあったかどうかで差がついただろう。論述あり。 |
|||
4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の環境応答】気孔による蒸散量の調節 |
「気孔の開閉」の問題はごくオーソドックスな内容なので、しっかり得点しておきたい。論述あり・描図あり。 |
物理
理科2科目で120分。推薦に続き描図の問題が増えた。また、大問3では問題文を読み、空所以外の部分を読めば解答できる論述を要求している。長い問題文から必要な情報を読み取り考察することが要求され、入試改革を意識した出題になっている。問題の難易度が高いものや、作業が繁雑な描図に時間がとられないように、日頃からグラフや作図を心がけておくと良い。また長い文章を読んで必要な情報を整理する能力が要求されるようになってきているので、日頃から長い文章を読むことに抵抗がないようにしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】単振動、摩擦力 |
単振動と摩擦の融合問題。入試では比較的取り上げられることが多い題材なので、一度は解いたことのある受験者が多かっただろう。ただしエネルギー収支を用いて折り返す位置を求める際に符号のミスが生じ易いので注意が必要である。また、 空欄12 のグラフは時間がかかるので、先に他の大問を終えてしまった方が良いだろう。描図あり。 |
|||
2 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】交流回路、電気振動 |
交流電圧と電流の位相に関しての問題。交流の位相に関しては手薄になり易い分野である。描図が多く時間はかかるが、内容は標準的なので、できれば完答したい。 |
|||
3 | 記述 | ★★☆☆ |
【原子】原子とスペクトル、粒子性と波動性 |
ボーアの水素原子の理論とコンプトン効果の計算は標準的ではあるが結論までの誘導が少ないので流れを正確に理解している必要がある。最後の理由に関しては、問題文の流れから解答することができるだろう。論述あり。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
---|---|---|---|---|---|
2020年度 | 1,172名 | 233 | 101名 | 227/400 | 56.8% |
2019年度 | 1,250名 | 253 | 103名 | 222/400 | 55.5% |
2018年度 | 1,570名 | 241 | 125名 | 227/400 | 56.8% |
2017年度 | 1,655名 | 268 | 151名 | 217/400 | 54.3% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
---|---|---|
2020年度 | 97.3% | 98.1% |
2019年度 | 92.1% | 95.1% |
2018年度 | 89.6% | 95.1% |
2017年度 | 88.3% | 91.6% |