関西医科大学の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
本年度はこれまで設けられていた小問(発音・アクセント問題、対話文完成問題、2文共通語挿入問題など)が姿を消し、全て長文という形式に変更となった。こうした大問構成の大きな変更は例年通りであり、前年度過去問を研究して試験に臨んでも予想を超えた変化があることは想定しておく必要がある。本年度はこの長文問題形式への慣れが合否を大きく分けたと思われる。設問内容に大きな変化はない。選択肢なしの適語補充問題が関西医科大学の長文における大きな特徴であり、事前に過去問で出題パターンに慣れておこう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致、同義語、適語補充 |
世界の国々の幸福度に関する英文。問1は内容一致問題、問2は下線部に該当する単語を記述する問題、問3は2か所の空所に入れるべき単語の組み合わせを選択させる問題、問4は下線部と置き換えられる単語を本文中から抜き出して答える問題、問5は設問に該当する国名を答えさせる問題、問6は3か所の空所に共通して入る単語を記述させる問題。英文の分量としては例年よりも少なく、内容一致問題は取り組みやすい。出題形式も例年通り。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】語句整序、適語補充 |
健康であるための方法に関する英文。問1は単語挿入問題、問2は選択肢5つをすべて使い切る空所補充問題、問3は語句整序問題、問4は2か所の空所に共通して入る単語を記述させる問題、問5は動詞を適切に活用変化して記述させる問題。内容は平易で、受験生にとって取り組み易い内容。出題形式も例年通り。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、要旨・要約 |
POTS(体位性頻脈症候群)患者が語る定期健診の重要性に関する英文。問1は選択肢4つを全て使い切る空所補充問題、問2は空所に適語を入れる問題、問3はbpmという略語が何を指すか記述させる問題、問4は動詞を適切に活用変化して記述させる問題、問5は2か所の空所に入れるべき単語の組み合わせを選択させる問題、問6は語句の意味を記述させる問題。分量は多く一部の表現がやや読みにくいものの、内容は平易。出題形式も例年通り。 |
数学
試験時間90分。昨年に比べると問題ごとの難易度の差が大きい。しかし易問でも実力差がしっかり反映されていると思われる。問題量は見た目は多いが手のつけやすい問題が多く、昨年度並み。一昨年まではほぼ空所補充、昨年はすべて記述形式という変遷があったが、本年は空所補充と記述形式がほぼ半々になった。また、昨年だけ姿を消した小問集合が本年には復活した。出題形式については今後も変化する可能性がある。記述形式が含まれるようになっても、それ以前と同様に論証力よりも計算力を必要とすう傾向が強い。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【小問集合】無理数の計算、対数方程式、ド・モルガンの定理 |
式の値、対数方程式、絶対値を含む不等式で表された集合の3題だった。いずれも基本題であり、ここは落としたくない。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【図形と方程式】関数の極限値、円の性質 |
円と放物線の交点に関する問題。(1)〜(3)は基本的でありすぐに解き終えたい。(4)は円とy切片の交点で方べきの定理を使えばよい。ここで差がついたと思われる。(5)はPT・QTを2点間の距離から表すことがポイントだが、計算量が多く完答するのは困難と思われる。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【確率】同じものを含む順列、条件付き確率 |
カードの並べ方の問題。集合の図を書けば難しくない。条件付き確率の定義を覚えておこう。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【複素数平面】複素数の図表示 |
複素数平面上での点の軌跡についての問題。(1)は基本的であり完答したい。(2)は方針が立たなかった受験生も多いと思われる。厳密な議論が必要なところもあり、完答するのは困難であろう(採点基準にもよる)。 |
化学
理科2科目で120分。今年度のテストでは形式的な変化はなかった。近年易化傾向にあるが、今年度も昨年度並か、やや易化したと言える。差がつくとしたらⅠやⅡで、特にⅠでは実在気体の振る舞いや状態変化の際の温度・圧力・体積の関係をしっかり把握できているかどうかが問われた。Ⅲのように単位の換算に気を払わねばならない設問は過去にもしばしば出題されているため、受験生は今一度確認しておくのが良いだろう。基礎的な知識や解法はまんべんなく訓練を積んだ上で、思考力を鍛える対策をしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【気体の法則】ファンデルワールス状態方程式 |
実在気体に関するファンデルワールスの状態方程式を書かせる問題。理想気体と実在気体の違いに関する設問は典型問題だが、ファンデルワールスの状態方程式、特にn=1molに限定しない式は覚えていないと書けないだろう。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【エステルの合成】エステルの合成実験 |
エステル化の実験に関する問題。実験の意図がしっかりと掴めていれば空所補充も容易にできたと思われる。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【金属】金属各論、結晶格子二酸化炭素の平衡 |
王水の組成を等設問以外は基礎的な知識・解法を問われた。問2では答えるものが半径ではなく直系であることに、また問2や問3では単位の換算に注意しながら失点を減らしたい。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【脂肪族有機化合物】アルケン、C5H12Oアルコール異性体 |
文章1は脂肪族有機化合物の化学反応についての空欄補充問題で基礎的な内容を等問題。 文章2は分子式C5H12Oのアルコールの構造決定で初歩的な構造決定問題。特に難しい点はないが、敢えて言えばアルカンの構造異性体で最も沸点が高いのは直鎖型であるということを知らなければ問5と問6を取れない可能性があるのと、問4で臭化水素(HBr)付加を臭素(Br2)付加と読み違える可能性があるくらいか。 |
生物
理科2科目で120分。構成に変更はないものの、昨年に比べるとたいていの受験生がそこまでは勉強していないと思われる水準の細かい知識が必要な設問が非常に多く、全体的にかなり難化した。結果として非常に点差がつきにくく、選択問題の正答率が大きく合否に影響しただろう。この傾向が続く場合、きわめて対策は困難であるが、解答の仕方に細かい条件がつくのは例年のことなので、そういった形式に慣れておくことは必要だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【小問集合】 |
例年よりも取り組みやすく、ここでいかに点を取れるかだろう。 |
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2 | 記述 | ★★★★ |
【生命現象と物質】葉緑体と光合成色素 |
「光合成色素」は、テーマとしてはオーソドックスだが、資料を統合的に分析し処理する高度な能力が求められる設問が多く、制限時間内に処理するのはかなり難しいだろう。 |
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3 | 記述 | ★★★★ |
【生命現象と物質】DNAと突然変異 |
「アルコールの分解」もコドンを読み推定する作業をはじめ、正確で迅速な処理力と設問の意図を汲み取る力が必要であり、全体として制限時間の中で解答しきることはかなり難しい。ただ、計算問題はその中ではまだ取り組みやすい方なので、できるだけ得点に結びつけたい。計算あり。 |
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4 | 記述 | ★★★★ |
【生物の環境応答】生産者の物質生産と生産構造 |
「生態系の物質生産」は生態系に関する総合的かつ広範な知識が必要であり、かなり難しい。とくに問1が解答できないとあとが続かないのだが、問1を正確に解答するのは至難の業である。計算あり。 |
物理
理科2科目で120分。難易度は昨年よりも下がっているが、穴埋め完成式の問題が増えたため小問数が増えた。問題の重さや計算量などを考えると分量はほぼ変わらない。穴埋め完成式の問題も比較的解きやすい問題が並んでいる、過去問をやったことのある受験生は解ける問題が増えたと感じただろう。大問は例年4問で問題数は25問程度。全て途中の計算過程を書かせる記述式。見慣れない設定の問題が出題される傾向が続いており難易度は高い。問題文を読み解く力が必要だが、知識はさほど必要とされずその場での対応力が試されている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】水圧と浮力、運動量と力積 |
浮力と抵抗力の扱いに慣れていれば内容は理解しやすい。 ただし、浮力の反作用については考え落としやすいので注意が必要。問4の描図および面積に対応する力積の計算については、力積の法則を用いて求めることに気づく必要がある。大問4問のなかでは解きやすいほうなので、できれば完答しておきたい。描図あり。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】電気回路 |
類題を解いたことがあるかどうかが非常に大きく影響する問題。ただし、問題の誘導と図をうまく駆使すれば解き進めることは可能だろう。問2さえ解き切ってしまえば残りはそれを利用して解くことになる。問題で与えられた図の他に、簡略化した回路を自分で書くことも大切である。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【波動】鏡やレンズの性質 |
見慣れない題材であるが、内容は幾何光学の理論計算。うまく角度を見つけて指定された長さを計算する必要があり、幾何的なセンスが必要である。近似計算にもある程度の慣れが必要だろう。後半の倍率や作図などは通常のレンズとの対応関係が把握できないとかなり難しいだろう。解答を参考にしてぜひ習得しておいてほしい。描図あり。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【原子】原子とスペクトル |
基本単位の改定を題材に扱った問題。問題文を読んで驚いた受験者も多かっただろうが、内容はボーアの理論から水素のエネルギー準位、リュードペリ定数まで丁寧に導出していく問題。光子のエネルギーや量子条件振動数条件などの基本的な知識を押さえ、うまく誘導に乗ることができれば完答も可能である。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2020年度 | 1,710名 | 363名 | 149名 | 246/400 | 61.5% |
2019年度 | 1,916名 | 359名 | 136名 | 249/400 | 62.2% |
2018年度 | 1,757名 | 364名 | 148名 | 234/400 | 58.5% |
2017年度 | 1,963名 | 368名 | 153名 | 203/400 | 50.8% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2020年度 | 94.8% | 95.2% |
2019年度 | 91.1% | 92.0% |
2018年度 | 91.4% | 93.3% |
2017年度 | 83.2% | 85.5% |