聖マリアンナ医科大学の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。大問1・2は長文問題だが、記述問題が含まれるのは大問Ⅰのみ。レベルはいずれも標準的で、ある程度の力のある生徒であれば時間が不足することはない。大問3は状況に即した会話表現を選択する問題で、知識だけでは通用しない。語群選択肢より対話の返答を選ぶ大問4は台風とそれに備える二人の状況を正しく把握し、選択肢の検証を行えば難しくない。全体を通じ配点的にも分量的にも重たいのは大問1で、この部分の正答率が合否に影響する。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
記述・選択 |
★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、指示内容、内容把握 |
同一長文を2つのパート(1/2)に分けたのは、2017年度入試の[英文A][英文B]に類似するが、本年度の場合Part1の小問11個中10問が選択問題であり、前半部分の記述量が減った。Part2が内容把握中心の記述による説明問題で和訳問題が存在しない点には変化なし。 |
|||
2 | 選択 | ★★☆☆ |
【長文総合】同義語、適語補充、内容一致 |
ハワイのカタツムリを題材に生物多様性と環境保全の必要性に関する英文。設問は全て選択式である。この種のテーマに対する知識があれば内容を追いやすい。 |
|||
3 | 選択 | ★★☆☆ |
【会話】適文補充 |
各問の最初に指定された状況に適した会話表現を選択する問題。紛らわしい選択肢も含まれるが、冷静に判断すれば正答を絞り込める。 |
|||
4 | 選択 | ★★☆☆ |
【会話】適文補充 |
AB二者による、接近する台風に関する会話文。空所8か所に対して選択肢群は10あるため、初めに選択肢の内容吟味を行い、分かりやすいところから埋めてゆくかたちで効率よく高得点が狙える。 |
数学
試験時間90分。昨年度に比べると易化。計算量が全体的に減り、解法が分かるかどうかという出題になっている。ここ 2年は意図的に基本的な内容を出題しているように思われる。この傾向が続くならとりわけ対策は必要ない。しかし、複素数平面やデータの分析など、他大学ではあまり出題されない単元が出題されることが多く、この 2 単元は普段から勉強しておくべきである。また整数は頻出で、特に証明問題においては、整数に関する出題が根強く続いている。合同式は確実に使えるようにしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【小問集合】約数と倍数、空間ベクトルの演算・成分、2曲線間の面積 |
(1)自然数の約数の個数と総和を求める極めて平易な問題。(2)座標空間内における平面と直線に関する基礎的な問題。絶対に落とせない。(3)直線と放物線で囲まれた部分の面積に関する標準問題。やり方を知っているかどうかの問題であり、知っている受験生にとっては易しい問題である。 |
|||
2 | 答のみ | ★★☆☆ |
【複素数平面】ド・モアブルの定理、複素数の図表示 |
ド・モアブルの定理と正五角形に関する典型問題であり、一般的な参考書にも載っている問題である。正五角形を図示して考えることができれば平易な問題であるが、(3)の方程式の解のところはやや思考力を要する。(4)(5)は(1)〜(3)を利用しなくても、知識で解くことができる。 |
|||
3 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【極限】数列の極限、接線と法線の方程式 |
座標平面上の点列と極限の問題。平易な問題である。図も丁寧に与えられており、計算量も少ない。答えのみなので、特に苦労もなく解答できるだろう。強いて言及するならば、a を底とする指数関数の微分を覚えているかどうかというところか。底がeの場合ばかりに慣れている受験生は戸惑った可能性もある。 |
|||
4 | 答のみ | ★★☆☆ |
【整数の性質】約数と倍数、整数の性質の活用 |
余りに関する問題。特に難しい思考は必要としない。(3)の証明で少し手を焼いたかも知れない。(4)(5)では合同式(mod)を使えば答案が簡潔に書ける。聖マリでは整数問題が頻出なので、合同式の習得は必須と言える。 |
化学
理科2科目で150分。他大学に比べて有機化学、しかも高分子化合物からの出題が非常に多い。2018年度と2019年度は大問すべてが天然高分子化合物および合成高分子化合物であり、極めて重視されていることがうかがえる。この点から、本学を志望している場合はとりわけ糖類、アミノ酸・タンパク質について理解不足にならないように十分に対策をしておく必要がある。標準的な論述問題も数問出題されるので、用語をただ覚えるのではなくどのような現象が起こっているのかを分子レベルでしっかりと理解しておくことが望まれる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆ |
【アミノ酸とペプチド】ペプチドの配列決定、タンパク質の質量分析 |
ノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏の研究内容から、タンパク質の質量分析に関する出題である。試験時間内で内容を把握するのは難しかったのではないかと思われる。 |
|||
2 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論分野小問集合】コロイドの性質、電気分解、化学平衡の法則、気体の性質 |
理論分野の小問集合である。一部記述問題もあるが、丁寧に解答して完答を目指したい。 |
|||
3 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱化学方程式】溶解熱測定実験 |
溶解熱の測定実験に関する出題である。グラフを書かせる設問もあるが内容は平易であり、大問2同様完答を目指したい。 |
|||
4 | 記述・選択 | ★★☆☆ |
【有機化合物】フタル酸の異性体 |
フタル酸とテレフタル酸に関する出題である。標準的な出題であり、大問2、大問3同様に完答を目指したい。 |
生物
理科2科目で150分。用語を答える問題と論述問題を中心に出題される。論述問題では、以前は字数制限のつくものが多かったが、最近は行数制限がつくものが多い。また、出題形式は、計算、描図、与えられた語を使った論述など多彩である。問題量は中程度であるが、記述式のため時間を要する。基本〜標準的な問題が多いが、前例のないオリジナルな出題が見られることもある。論述問題への対策が必要不可欠であり、日頃から生命現象について言葉で説明するなどの練習に取り組んでおきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の進化と系統】 |
生物の系統分類、細胞分化・形態形成と遺伝子についての出題。論述あり。 |
|||
2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】 |
腎臓のはたらき、ホルモンと内分泌腺についての出題。論述、計算あり。 |
|||
3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生態と環境】 |
個体間の相互作用、生態系の保全についての出題。計算あり。 |
物理
理科2科目で150分。大問1は、数値もしくは数式の穴埋め問題からなる「やや易」レベルの小問集合。なお、18年度までは教科書範囲内の知識問題も出題されていたため、対策をしておくに越したことはない。大問2〜5は、「標準」レベルが中心の記述式問題。各大問の設問数は6問程度。導出過程の記述や単位の記入を求められることが多く、グラフの選択問題が出題される年もある。全体として時間に対する分量が多いので、短時間で解ける問題から着手する姿勢が必要。出題分野の偏りはなく、原子分野からも毎年出題されている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【小問集合】剛体のつり合い、電気抵抗と抵抗率、光の反射・屈折・分散・偏光、原子核の崩壊と放射線 |
剛体棒のつりあい、抵抗率と温度係数、屈折の法則、放射性崩壊と半減期についての出題。 |
|||
2 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】電子の加速度と速度、電磁誘導 |
ベータトロン、らせん運動についての出題。 |
|||
3 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】運動量の保存、摩擦力 |
2つの台の衝突、摩擦のある台上の物体についての出題。 |
|||
4 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化 |
ピストン内気体の状態変化についての出題。 |
|||
5 | 記述 | ★★☆☆ |
【波動】音のドップラー効果 |
直線上でのドップラー効果についての出題。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
---|---|---|---|---|---|
2020年度 | 1,993名 | 523名 | 129名 | 非公表 | - |
2019年度 | 1,763名 | 507名 | 130名 | 非公表 | - |
2018年度 | 3,095名 | 517名 | 130名 | 非公表 | - |
2017年度 | 3,175名 | 485名 | 170名 | 非公表 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
---|---|---|
2020年度 | 95.6% | 95.4% |
2019年度 | 93.8% | 96.5% |
2018年度 | 88.2% | 91.7% |
2017年度 | 89.0% | 91.2% |