日本医科大学の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
出題傾向は例年とほぼ同様、大問の数が昨年度より1つ増え5題構成となった(長文中の適語補充と誤謬訂正で独立した大問が設置された)。長文は平易なものの、問いは精密な読解を要するものも多く一筋縄ではいかない。特に日本医科大学に特有の「適する選択肢をすべて選ぶ」タイプの問いには注意が必要である。制限時間に比して問題数も多いため、すぐに解ける問題を見極めて円滑に処理する力が求められる。また、発音・語彙の問題ではやや高難度の出題もあり、日頃から辞書等を丁寧に参照する習慣づけが肝要。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
記述・選択 |
★★☆☆ |
【長文総合】要旨・要約、和訳、内容一致 |
人間の数的認知を補助する発明に関する英文。英文そのものは非常に平易で読みやすいが、説明問題に関して本文中でなされている対比構造を正確に把握し、答案を作成する必要がある。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【作文】自由英作文 |
昨年度と同様、直前の長文に関連したテーマの自由英作文が出題された。解答欄は昨年度とほぼ同等のサイズ(14行程度)であったようだ。論理の一貫したパラグラフ・ライティングの力が求められる。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【文法・語法】適語補充、正誤 |
「気候変動に対する人々の態度に関する英文。長文の内容は平易で空所補充にも取り組みやすい。誤謬訂正も明白なものばかりであった。いかにスピーディーに処理できるかが鍵となろう。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【発音・アクセント】発音・アクセント、語彙力 |
発音・アクセント、および語彙に関する一問一答形式の問題。語彙の出題があるのは例年通りであるが、問4〜問8は語義の説明からふさわしい単語を選ぶ形式で、新傾向であった。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】同義語、適文補充、内容一致 |
人類の進化と分類に関する英文。正答選択の吟味で苦労する設問も含まれるため、正確な読解力が求められる。 |
数学
試験時間90分。全体的な計算量は増えたものの、思考力を要する問題は減っており全体的な難易度にさほど変化は見られない。ここ数年は数Ⅲ、数Bの出題率が非常に高く、融合問題も多め(2020 年度入試ではさほど多くなかった)。また、毎年共通して計算量が多く、高い計算能力を要求される問題が目立つ。難関入試レベルとしては方針を立てやすい問題が多いので、計算力が合否を分けるといっても過言ではない。日頃から数Ⅲ、数Bを中心に相当量の計算をこなしておく必要がある。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 答のみ | ★★★☆ |
【積分法】いろいろな関数の積分 |
最小二乗法の典型問題であったが、計算が非常に煩雑である。相当の計算力がないと最後の答えまでたどり着くのは難しい。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【空間のベクトル】空間図形の方程式、空間ベクトルの内積、図形への応用 |
座標空間内において、半球を平面によって切ってできる立体の体積に関する問題。計算量は少なく、最後のみ発想が必要だが誘導もあり、2020年度入試の中ではかなり解きやすい問題である。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【平面上の曲線】媒介変数による表示、だ円 |
円やだ円の媒介変数表示に関する出題。パラメータは1つであるが文字定数を含んでいるため、やや計算量が多い。考え方に難しいところはなく、丁寧に計算できるかが鍵となる。一部の小問で答えのみ記す形式あり。 |
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4 | 記述 | ★★★★ |
【確率】連立漸化式、3項間の漸化式、数列の極限 |
確率漸化式に関する問題。漸化式を立てること自体はそこまで難しくないが、計算が非常に煩雑で漸化式を解くのに時間がかかる。現実的には前半の問題をしっかりと押さえられれば十分である。一部の設問で答えのみ記す形式あり。 |
化学
理科2科目で試験時間120分。例年、理論分野から2題、有機分野から2題の出題でいくつかの範囲に絞って重点的に出題される傾向が強い。特に理論分野においては「溶液の性質」「化学平衡」の出題が多くみられる。また、有機分野においては教科書にある「発展」内容まで掘り下げて出題されることが多い。ここ数年は一部の計算問題を除いて比較的取り組みやすい設問が増えた。しかし問題の分量・難易度に対して試験時間が短いため、問題文を読んで解ける問題を確実に解き難問には手を出さずに得点を積み重ねることが合格への最短経路となる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【電離平衡】酢酸の電離平衡、酢酸ナトリウム水溶液、酢酸アンモニウム水溶液、指示薬の変色域 |
電離平衡に関する出題である。典型問題であるが、Aでは近似計算が使えない設問があり、Bでは弱酸−弱塩基の中和点のpHを求める設問があり、習熟度で差がついたであろう。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【気体の溶解度】ヘンリーの法則 |
気体の溶解度に関する出題である。前半は誘導にしたがって式変形するだけであるが、式の相互関係を捉えるのに多少苦労する。問6も類題は解いたことがあるはずなのでしっかり点数につなげたい。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【芳香族化合物】芳香族化合物の配向性と合成経路 |
芳香族化合物の配向性に関する出題である。内容は発展的だが、学習したことがある受験生がほとんどだと思われる。完答は必須である。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【アルケン】炭化水素の構造決定、マルコフニコフ則 |
マルコフニコフ則に関する出題である。大問3同様、内容は発展的だが全体としては平易である。完答は必須である。 |
生物
理科2科目で試験時間120分。第1問と第2問は標準レベルの問題を中心に作問されているが、教科書に出てこないやや高度な内容の問いも含まれており、特にヒトの体の構造や機能には深い理解が必要である。また、思考力を要する問題や計算問題が多いことも特徴の一つ。知識問題は標準レベルであることから、これらはほぼ確実に得点しなければならない。そして各所に散りばめられた論述問題(特に考察系)で得点差がつきやすいことから、生物学のキーワードを上手に盛り込み、簡潔で的確に文章化するトレーニングを積んでおくとよい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】 |
酸素の運搬、体液の循環・循環系についての出題。計算、論述あり。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】 |
DNAの構成と構造、遺伝子発現の仕組みについての出題。計算あり。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【生命現象と物質】 |
細胞分化・形態形成と遺伝子、遺伝子の調節についての出題。論述あり。論述あり。 |
物理
理科2科目で試験時間120分。近年は大問4題のうちの数題が小問集合の場合がある。出題分野については「原子」からの出題が再開された16〜20年度までの前後期含めた計9回のうち、「力学」9回、「電磁気」8回、「熱」7回、「波」4回、「原子」8回となっており、「熱」と「原子」からの出題が多い。「標準」レベルの典型テーマが中心だが、条件設定や誘導の少なさにより解きにくい問題がある。導出過程や計算過程への加点はないので、本番で一通り解き終えた後は設問との対応関係や数値計算の見直しにある程度の時間をあてたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】運動量の保存、万有引力 |
2次元上での衝突、重力トンネルについての出題。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【電磁気】電気振動、交流・送電 |
電気振動、送電効率についての出題。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化 |
ピストンと気体の状態変化についての出題。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【波動】光の回折と干渉、音のドップラー効果、光の反射・屈折・分散・偏光 |
波の基本的性質についての出題。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2020年度 | 1,880名 | 352名 | 161名 | 非公表 | - |
2019年度 | 2,173名 | 331名 | 160名 | 非公表 | - |
2018年度 | 2,541名 | 289名 | 101名 | 非公表 | - |
2017年度 | 2,096名 | 334名 | 100名 | 非公表 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2020年度 | 97.4% | 98.1% |
2019年度 | 93.0% | 94.8% |
2018年度 | 87.4% | 89.5% |
2017年度 | 82.5% | 85.3% |