獨協医科大学の傾向分析2019
獨協医科大学2019
2019年度一般入試問題分析
英語
全体の問題構成は2018年度と全く同じ。4年前まで,制限時間に対して明らかに過飽和である語数の長文が出題されていたが,直近の3年は常識的な語数になった。また長文の内容は,これまで出題されてきた都市論や社会科学といった医学部受験生にとって扱いがたいものから,比較的取り組みやすいものへとシフトしている。それでも制限時間内に全てを解ききることが可能な出題とは言いがたい。速読力・高い処理力が要求されるのはこれまで通り。時間配分への意識は非常に大切で,その中で取れる問題を迅速かつ確実に取る必要がある。大問ⅡC(長文への文挿入)はくせ者である可能性が高く,一番最後に回すべき。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1A | マーク | ★★☆☆ |
長文総合:適語補充,内容一致 |
イギリスの英雄叙事詩ベーオウルフに関する英文。空所補充6問。内容一致2問。 |
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1B | マーク | ★★☆☆ |
長文総合:適語補充,要旨・要約,内容一致 |
ミュー粒子を用いたピラミッド内部の解明に関する英文。空所補充7問。内容説明3問。内容一致2問。 |
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2A | マーク | ★★☆☆ |
会話文:適語補充,内容一致 |
人間の知能と人工知能に関する英文。空所補充1問。内容一致2問。 |
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2B | マーク | ★★☆☆ |
短文:文整序 |
2問。 |
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2C | マーク | ★★★☆ |
長文その他:適文補充 |
アフリカにおける万里の長城の森林版に関する英文。空所6個に対して選択肢8個。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
語句整序:和文あり |
10問。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
適語補充:文法・語法 |
10問。 |
数学
小問は問題が2つあり2019年は指数対数方程式不等式と複素数平面であったが,三角関数や整数問題が出ることもある。大問2は確率,場合の数,大問3はベクトル,大問4,5は解析系(数列,微分,積分など)の出題が続いている。全体として2019年は前年より易しくなっていて問題の設定に従って解いていけばよい。計算も大問4,5が少々手こずるが例年ほどの煩雑さはなくオーソドックスなセットとなっている。ただし70分という試験時間を考えると全ての問題を解くのはほぼ不可能で,じっくりと取り組んでいる時間的余裕はない。例年以上に処理能力が要求されたと思われる。試験時間に比べ問題量が多いので,対策としてまずは標準的な問題に対する正確な計算力を身に付けることが大切である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
小問集合:指数方程式,対数不等式,複素数の図表示 |
指数方程式,対数方程式,複素数平面上での三角形の回転拡大 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
確率:確率とその基本的な法則 |
確率と漸化式 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
空間のベクトル:空間ベクトルの内積 |
ねじれの2直線間の距離を最小にする点の座標,またその2直線のなす角 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
微分法:微分可能性と連続性,方程式の解の個数 |
f(x)が滑らかになる為の係数決定,f(x)=kの解の個数など |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
積分法:面積の応用,回転体の体積,曲線の長さ・道のり |
接する2曲線の係数決定から囲む面積,回転体,曲線長 |
化学
小問集合10題+理論+理論+無機+有機という大問構成は固定された出題パターンとなっている。2科目100分と時間配分が問われる試験形式であるため,計算中心で難易度も上がりやすい理論分野の大問2つは一旦とばしてしまうべきであろう。獨協医科大学の正誤問題の傾向として判断の悩む選択肢が並ぶ中,1つだけ明らかな誤りを含むなど答えとなる選択肢の判断が付けやすいことが多いため,1つの選択肢の吟味に時間を掛けすぎずまずは全ての選択肢に目を通すようにするのが良い。また,テーマとして登場する化合物に見慣れないものがあったとしても難問とは限らない。見た目に惑わされることなく取り組んでもらいたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | マーク | ★★☆☆ |
小問集合:化学結合,結晶格子,イオン半径,酸の強弱,反応速度,気体の製法,異性体,繊維,アミノ酸,合成高分子 |
様々な分野にわたる知識問題で,マーク数は計10個。異性体の問題は少し時間を取られる出題であったが,それ以外は平易な内容が多かった。特に,誤りを含むものを選ぶ正誤問題においては,判断に悩む選択肢と明らかな誤りを含む選択肢が並んでいる場合が多かった。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
電池と電気分解,酸化還元:電池,酸化還元滴定 |
扱っているのが教科書通りの有名な電池や酸化剤・還元剤ではないため面食らった受験生はいただろうが,問われている内容は標準的であり,計算の煩雑さもなかった。しっかりと得点してもらいたい大問である。チオ硫酸ナトリウムの半反応式が与えられていなかったため,知らなかった受験生はぜひ覚えておいてもらいたい。 |
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3 | マーク | ★★★☆ |
気体の法則,熱化学:蒸気圧,混合気体,熱化学 |
体積可変容器内での気体の蒸気圧を扱う出題で,操作としては見慣れた典型題である。この分野をしっかり練習した受験生であれば完答も難しくないため,差がついたと思われる。問5の熱化学はそこまでの小問とは切り離された内容の出題であった。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
13族元素:13族元素各論,両性金属 |
13族元素のうち,主にAlについての出題。問われている知識のほとんどは易~標準レベルのものであったため,時間をかけずに高得点を狙いたい出題であった。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
芳香族化合物:医薬品 |
オルサラジンという医薬品の合成経路および構造についての出題。見慣れない物質ではあったが,基本的な官能基の反応が頭に入っていれば難易度は高くない。完答を目指したい出題。 |
生物
各大問ごとの内容はオーソドックスで取り組みやすいが,時間に対する問題量が多く,それを加味すると難易度は標準レベルである。浸透圧の計算や酵母菌の呼吸・発酵の計算など難易度は高くないが正確に合わせたい計算問題も含まれる。空欄補充問題も一題一題の文章は長くはないが,各問題を足し合わせるとそれなりの分量になるので,文章を読むスピードも要求される。対策としては,どの分野でも標準的な問題を手際よく解く訓練をしておきたい。また,毎年傾向(時間の割に問題量が多い)は似通っているので,時間を計りながら過去問を数年分解いておくことをお薦めする。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
生命現象と物質:生体膜の構造とはたらき,タンパク質の構造とはたらき |
細胞と分子:細胞膜,膜タンパク質,浸透圧。計算問題あり。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
生命現象と物質:好気呼吸とそのしくみ,光合成のしくみ |
代謝:同化,異化。計算問題あり。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
生命現象と物質:バイオテクノロジー,遺伝子の調節 |
遺伝情報の発現:バイオテクノロジー。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
生殖と発生:動物の生殖細胞形成,遺伝子と組換え |
有性生殖:配偶子形成,遺伝(連鎖)。計算問題あり。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
生物の環境応答:種子の発芽の調節,光周性と花芽形成 |
植物の環境応答:植物ホルモン。 |
物理
:物理基礎+物理例年通りの設問数20。おそらく傾斜無しの各4点だろう。各見開きの右ページが計算用に白紙になっているが,問題を解き進めたときに,設定の確認などのためにページをめくって戻らなくてはならないこともある。できれば,赤本などの編集された過去問ではなく,本来のレイアウトが再現されたもので演習を積んでおきたい。以前に比べると,問題に癖がなくなっているが,設定にそれぞれ一工夫があり。また,他の大学であれば小問を分けて誘導を行うような問題で,いきなり結論だけを問う問題が複数ある。特別難しくは無いのだが,試験時間に対して問題数が多い。スピードのない受験生だと,問題の内容,作業の筋道が見えるだけに深追いしてしまって,化学の時間を削ってしまいかねない。よっぽど物理が得意な受験生でなければ,完答を目指すより,確実に合格に必要な点数を時間内で拾っていくことを意識したほうがよい。 大問1は小問。いずれも基礎的内容だが完答しようとすると時間が無くなる恐れがあり注意が必要。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★★☆ |
小問集合 |
放物運動と床との衝突。回折格子。電場,磁場中での電子の運動。光電効果。それぞれ標準的な設定の出題。複数の空欄の答えの組み合わせを選択する問題あり。時間の使いすぎに注意。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
熱:気体の状態変化,熱の利用 |
断熱変化を含む熱サイクルの問題。答えさせ方は独特だが問われている内容は標準的。 |
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3 | マーク | ★★★☆ |
原子:粒子性と波動性,運動量の保存 |
励起状態の水素から放出される光子。高度な内容が問われているが,誘導が丁寧なので時間をかければ完答可能。限られた試験時間内で,ということであればかなり厳しい。光のドップラー効果も問題の下敷きになっているが,直接は問われていない。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
電磁気:電気容量とコンデンサー,力のつり合い |
問1,2は獨協医科大学入試に特有の「いきなり結論を問う」問題。「電気容量→蓄えられた電荷→各コンデンサーの極板間引力→力のつりあいの式→物体の質量」と順に求める問題を小問2問に詰め込んでいる。極板間引力の大きさの式は与えられている。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
力学:剛体のつり合い,様々な力とその働き |
「倒れる,滑る」の条件についての問題。後半は慣性力も加わる。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2019年度 | 1,913名 | 391名 | 148名 | 非公表 | - |
2018年度 | 1,602名 | 381名 | 150名 | 非公表 | - |
2017年度 | 1,378名 | 304名 | 103名 | 非公表 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2019年度 | 84.1% | 86.8% |
2018年度 | 83.6% | 83.6% |
2017年度 | 78.6% | 82.9% |