大阪医科大学の傾向分析2019
大阪医科大学2019
2019年度一般入試問題分析
英語
試験時間80分。大問1は英文和訳3問と60字説明問題、大問2は英文和訳3問、大問3は和文英訳3問という前年度後期と同様の形式。昨今の私立医学部では珍しい記述のみの問題構成であり、国公立志望者にとって特別な試験対策があまり必要ではない。実際に国公立医学部受験者が滑り止めとして受験する傾向にあるため、答案に求められる完成度は非常に高いと予想される。大問1は後悔という感情の構造に関する英文で、和訳は構造把握、語彙、内容のいずれもさほど難しくない。説明問題は制限字数内でまとめるのに工夫が必要。大問2は教育における理解の重要性に関する英文で、内容は抽象度の高いものではないため比較的取り組みやすいが、解答には意味の通る日本語に整える力が求められる。大問3はコーヒーの健康維持効果と、それに対する反論を扱った和文で、英文の構成自体にはあまり苦労しない。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【長文総合】和訳、要旨・要約 |
後悔という感情の構造に関する英文。下線部和訳3問と60字の説明問題が1題という構成。下線部の文構造や単語自体はさほど難しくはないが、例年通り、解釈上の論点や文章内容を踏まえて解答する必要がある。説明問題は60字以内にまとめるには工夫が必要であろう。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳 |
教育における理解の重要性に関する英文。下線部和訳3問。下線部の英文構造は平易だが、うまく訳語を選び、意味の通る日本語に整えることが必要。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【英訳】下線部英訳 |
コーヒーの健康維持効果と、それに対する反論を扱った和文の下線部英訳が3問。文の構造をしっかりとらえてフレーズごとに訳せばそれほど難しくない。表現に関しても易しく書き換えることができるものが多い。 |
数学
出題形式は5問100分。数学Ⅲの微分積分、確率は必ず出題される。空間図形の出題率も高い。ここ数年は整数問題からの出題が目立つ。複素数も要注意である。
他大学に比べて本格的な証明問題が多い。小問集合や、答えだけの穴埋め問題はない。難易度も標準~やや難の問題が並び、基本問題もテクニックだけではなく本質的な理解を要求されている本格的なものである。大いに点差がつくであろう。
2019年は計算や式変形ではない部分で前年に比べて難化した。いわゆる「典型的な表現」ではなく、「問題文の意味するところ」を理解すること自体が難しいものである。内容もバラエティーに富んでおり、総合的な数学力が試されるセットとなっている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【整数の性質】整数の性質の活用 |
三角形の辺に関する整数問題 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【微分法】方程式の解の個数 |
指数関数を含む方程式の定数分離による解の個数[証明あり] |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【確率】条件付き確率 |
さいころの目で決められる確率変数に関する条件付確率 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【積分法】回転体の体積 |
球に接する円錐と球に挟まれる領域の体積 |
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5 | 記述 | ★★☆☆ |
【複素数平面】複素数の図表示 |
複素数の図形への利用(絶対値,偏角,ドモアブル)[証明あり] |
化学
出題形式、出題範囲、分量は例年並み。大問Ⅰは硫化物の沈殿条件についての定性的知識があれば解けるが、イオン化傾向との関連の知識も必要。Ⅱはあまり馴染みのない2次反応の速度式が出題されたが、すべて使用する式は示されているのでそこに代入すれば答えは出せる。Ⅲはヨードホルム反応の反応式以外はほぼ標準的な知識問題なのでほとんど落とせない。ⅣはKMnO4でC=Cの酸化開裂分解による生成物から元の構造を求めるもので、化学の演習をたくさん積んでいる受験生なら対策できているはず。思考力を問う問題や複雑な計算問題がないので高得点勝負になったのではないか。75%くらいの得点率を目指したい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【無機物質,化学平衡】電離平衡,溶解度積,硫化物の沈殿条件,イオン化傾向 |
電離定数の式,ルシャトリエの原理による平衡の移動方向判定,硫化物の沈殿条件とその理由,イオン化傾向の順位決定の小問5題。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【反応速度】反応速度の計算 |
1次反応の反応物濃度の予想,速度定数の単位(2題),グラフを用いる速度定数の解析,2次反応の反応物濃度の予想の5題 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【有機化合物,合成高分子化合物】フェノールの製法,性質,収率計算,フェノール樹脂の合成方法,気体の状態方程式 |
フェノールの製法と性質についての知識問題,フェノールの液性とフェノール樹脂合成条件の液性,アセトンのヨードホルム反応の化学反応式,クメン法によるフェノール生成の収率計算,フェノールとNaの反応で発生するH2量計算の5題 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【有機化合物】油脂,アルケンの酸化分解による構造推定 |
油脂関連の化学用語穴埋め,脂肪酸とグリセリンの結合名,C=Cの酸化分解による生成物からの油脂の構造推定,トランス異性体数の5題 |
生物
高校生物範囲を超えた知識を要求する問題が(ほぼ)ないのは例年通りだが、実験考察問題の難易度が例年に比べて下がり、2018年度に比べかなり解きやすくなった。論述問題は8題で、そのうち知識説明が5題、グラフを読み取って実験結果を説明するものが2題、知識+実験結果をまとめて説明するものが1題である。知識説明は基本的なものが多いが、文章を書くのになれていないと案外書けない。実験結果の説明は何をどこまで書けばよいのか迷うが、大医の過去問で似たようなノリの出題が参考になる。語句や記号を答える設問と計算問題(合わせて推定55〜65点分)はできるだけ正解したうえで、論述問題(推定45〜35点分)を手際よくまとめて差をつけたい。基礎を押さえること+論述の練習が必要。目標は75%。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物と遺伝子】遺伝子発現の仕組み,胚と種子の形成と発芽 |
論述あり。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の体内環境の維持】腎臓のはたらき |
やや易。論述あり。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】筋収縮とタンパク質,胚葉の分化と器官形成 |
論述あり。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫 |
やや易。論述・計算あり。 |
物理
形式はここ数年「大問3小問集合1」に固定されている。大問1~大問3が大きなテーマを扱い、大問4は小問集合であることが多い。小問集合の問題数は3問~5問程度。問題の量が多いのでスピードが大切である。標準からやや難レベルの問題が出題され、分量も多いのでじっくり問題にとり組む時間はない。
小問は易しい。しかも同じ問題が繰り返して出されることがある(電力輸送,水圧,剛体等)。大問では、これといった傾向もなく難易度は標準からやや難の問題なので、特別な対策はたてにくい。大量の演習をこなし,実力の底上げを地道にしていくしかないだろう。
2019年度は2018年度よりも易化、大問3の計算および後半の定性的評価が難しい。小問集合の計算問題もある程度慣れていないと計算が複雑になり易く時間が足りなくなりやすい。7割程度得点出来ると安心。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】万有引力,円運動 |
万有引力による等速円運動,静止衛星。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【波動】光の干渉・ヤングの実験 |
ヤングの干渉実験。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】電流が磁界から受ける力,電荷と電場 |
電場・磁場内での荷電粒子の運動。[描図あり] |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【小問集合】 |
電力輸送,浮力,気体の状態変化 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2019年度 | 1,656名 | 207名 | 167名 | 270/400 | 67.5% |
2018年度 | 1,483名 | 205名 | 172名 | 268/400 | 67.0% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2019年度 | 91.5% | 93.7% |
2018年度 | 93.3% | 99.1% |
2017年度 | 89.0% | 91.2% |