兵庫医科大学の傾向分析2019
兵庫医科大学2019
2019年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。大問数,構成には大きな変化はない。私立医学部では近年珍しい,記述式のオーソドックスな出題内容である。大問1は昨年度に引き続き,英文の全訳,大問2は文挿入5カ所と和訳1題,大問3は前置詞の適語補充問題と和訳1題,大問4は語句整序問題10題,大問5は和文英訳,という構成。分量は昨年度から減少し,今年度もある程度余裕をもって解答できる程度のものであった。文章内容はライフ・スタイル,医療全般といったように多岐にわたる。和文英訳はこれまで通り国立二次レベルの力が要求される。テーマは絞りにくいが,毎年いわゆる逐語訳では英語にならないタイプの和文が出題されている。従って単語ばかりにとらわれず,伝えるべき内容を考えた上で平易な英語をうまく利用して解答を仕上げるといった練習が必要。全般に記述力の有無が大きく得点に響く傾向をもった出題である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★★ |
和訳 |
患者に関わる悪い知らせを家族で共有する際の難しさを論じた英文の全訳問題。英文を正しく理解し,日本語に訳すことができるかどうかを試す問題。日本語表現力が問われる。内容はやや抽象的で,英文表現にも訳しにくいところがある。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
長文総合:和訳,適文補充 |
mockingbird (マネシツグミ) の模倣能力に関するもので,トマス・ジェファーソンが飼っていたものを紹介しつつ,マネシツグミの模倣能力の歴史的評価をつづった英文。問1は適文挿入問題,問2は下線部和訳問題。適文挿入問題は英文の展開を正しく理解できているかを試す問題であるが,前後の情報から正解を導くことはさほど難しくはない。和訳については英文構造,語彙レベルともに標準的である。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
長文総合:和訳,適語補充,同義語 |
心身症に関する英文。問1は空所補充4択問題,問2は同義語4択問題,問3は下線部和訳問題。空所補充問題の出題形式が空所ごとに4個の選択肢を与える形式に変化した。大半の受験生にとってあまり馴染みがないと思われる,心身症という話題であったが,英文の伝える内容を把握して指定された語句の意味を推測する力を試す意図がある。またある程度の医学用語の知識が必要であることは,若干の傾向変化として注意したい。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
長文その他:語句整序 |
くしゃみが身体に及ぼす悪影響に関する英文。文中10カ所の語句整序問題である。各問の選択肢は5個で,英文理解の程度に関わらず,論理的,文法的に語の並びは決められるものも含まれる。とはいえ出題意図には「英文の内容を包括的に捉え」ることが明記されているので,時間の許す限りは全体に目を通しながら解答作業を進めることが正答率を高める上では必要。 |
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5 | 記述 | ★★☆☆ |
英作文 |
ヨガの指導と思われる和文の全訳問題。身体に関する表現が多く見られ,受験生にとってはかなり難しい英訳問題と言える。 |
数学
小問集合1問,大問2問の計3問の形式が続いている。小問集合で頻出の分野は,二次関数,数列,幾何的問題(図形と計量,ベクトルなど),数学Ⅲの微積分,整数問題などである。2017~2019年では設問は4題で,得点しやすい穏やかな難易度であることが多い。大問で頻出の分野は,数学Ⅱ・Ⅲの微積分(特に求積),場合の数と確率,複素数などである。難易度はここ数年で易化傾向だったが,2019年は解きにくい図形問題(五芒星)等が含まれ,前年よりも難化した。今後も目新しいテーマが出題される可能性はあるが,対策として肝要なのは特に上記の頻出分野についての典型的な問題をしっかり押さえることである。2019年は,問題文に新たに「途中の式や考え方等も記入すること」という文言が加わり,記述重視がより明確になった。その他にもいくつか形式上の変更があり過渡期であることを窺わせる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
小問集合 |
2次方程式の解の存在範囲,分数関数型の漸化式,平面上のベクトル(三角形の面積比),確率(じゃんけん) |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
図形の性質:平面図形,空間図形,三角形の面積 |
五芒星に関して,線分長・面積,およびそれを展開図とする立体の体積 証明あり |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
積分法: 関数の増減と極値,曲線の凹凸・変曲点,回転体の体積 |
逆双曲線関数(増減・凹凸,回転体の体積) |
化学
大問1でしっかりと得点を確保した上で,大問2や大問3でどれだけ得点を稼げたかが勝負になっただろう。2011年度以降,兵庫医科大学の化学の問題は理論・無機が2題と有機が1題の大問3題構成となっている。どの問題も解き応えがあり,計算力も求められる。得点を取りづらい内容であるため,問題形式にとらわれずに,解ける問題を一つでも多く増やしておくことが肝要だろう。特に本年度の大問2のようなグラフ描画問題は毎年出題されているため,苦手な受験生はしっかりと対策しておくべきであろう。また,計算問題においては途中過程を記述する欄があるのも特徴的である。典型題を経験的に解けるというだけでは太刀打ちできない問題が多いので,思考力を養っておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
遷移元素: 鉄の単体および化合物 |
標準レベルの知識問題と計算問題が並び,説明問題も含まれた。しかし今回のセットの難易度を考えるとここで得点しておきたい。論述あり。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
気体の法則: 理想気体と実在気体,蒸気圧 |
あまり馴染みのないPVTの3次元グラフが出題されており,面食らった受験生も多かったに違いない。問われている内容は標準的な知識をもとに文章やグラフと合わせて思考すれば良いだけなので,決して難しすぎる設問ではない。描画あり。 |
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3 | 記述 | ★★★★ |
芳香族化合物: 構造推定 |
どの問題も論理的に構造を推定するだけの情報は与えられているものの,その論理を追うためにはある程度のひらめきが求められる難問。構造推定のとっかかりの通りに小問の誘導がついてはいるのだが,(1)だけで解答が止まってしまった受験生は多そうだ。 |
生物
大問1は例年通り小問集合だったが「すべて選べ」という形式がなくなり,圧倒的に取り組みやすくなった。大問2は「減数分裂」,大問3は「光合成」,大問4は「DNAの構造とバイオテクノロジー」と,内容的には非常にオーソドックスな出題だった。大問5・6で「進化・系統」を2題も扱うあたりや,論述問題の合計字数が360字という小論文を1本書けそうな字数となっているあたりは例年通りである。ここ2年ほど内容的には易化しており,点差がつきやすい。対策としては,1問平均3~4点と予想される論述問題については,精度を犠牲にしてでも手早く処理することと,頻出の「進化・系統」の分野については,かなり詳細な部分まで知識を深めておくことが有効だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
小問集合 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
生殖と発生: 減数分裂 |
論述あり。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
生命現象と物質: 光合成のしくみ |
論述あり。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
生物と遺伝子: DNAの構成と構造, バイオテクノロジー |
論述・計算あり。 |
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5 | 記述 | ★★★☆☆ |
生物の進化と系統: 進化の仕組み, 進化の証拠 |
論述あり。 |
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6 | 記述 | ★★★☆ |
生物の進化と系統: 進化の仕組み |
計算あり。 |
物理
2017年度から少し傾向が変わり2016年度以前に比べて全体的に解きやすくなっており,実力差が出やすい良問が増えている。問題量,計算量はともに多く,全て解ききるにはかなりの力量が必要である。問題の意図がつかみにくいタイプの問題や,方針に詰まるような問題が出題されることがあるので,そのような問題で詰まった場合は要領良く飛ばして他の問題を解く練習をしておきたい。原子分野からの出題が比較的多いので一通りのテーマは復習しておきたい。最後の大問が比較的易しい場合があるので,「大問1から順に解いていき大問5に手がつかずに時間切れ」などということがないように,どの分野から出題されているのか一通り問題を見てから解き始めるようにすると良いだろう。 2019年度の出題も分量が多く,原子分野からの小問が2問出ている。小問集合は問題によって難易度にばらつきがあるので解きやすい問題だけ解いて大問に移るか,先に大問を始めても良かっただろう。大問5の平面波の干渉の問題は馴染みの薄い問題なのであまり差がつかない。他の標準的な問題でしっかり点を取っておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
小問集合 |
浮力,物質波の干渉,ソレノイドコイル,核反応と半減期 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
力学: 円運動,摩擦力 |
円錐面内の円運動,滑らない条件 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
熱:気体の状態変化, 気体の内部エネルギー |
定圧過程,断熱過程,熱力学の第一法則。論述あり。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
電磁気:ホイートストンブリッジ, 電気容量とコンデンサー |
ホイートストン・ブリッジ回路,コンデンサーを含む直流回路。描画あり。 |
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5 | 記述 | ★★★☆ |
波動: 波の干渉 |
平面波の干渉,光のドップラー効果。描図あり。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2019年度 | 1,741名 | 444名 | 204名 | 357.8/550 | 65.1% |
2018年度 | 1,979名 | 436名 | 202名 | 351.8/550 | 63.9% |
2017年度 | 1,802名 | 420名 | 166名 | 371.5/500 | 74.3% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2019年度 | 94.0% | 93.9% |
2018年度 | 97.5% | 97.2% |
2017年度 | 89.3% | 88.8% |