日本医科大学の傾向分析2019
日本医科大学2019
2019年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。日本医科大学の英語の問題は私立医学部の中で最も高いレベルの一つと言える。300点満点(4科目総合は1000点満点)で,長文は2問で長文の内容に関連した自由英作文も出題される。量の面でも質の面でも時間が余るとは言えない。前半はマーク式だが,解答が「正しいものを全て選べ」のような形式もあるので,一筋縄ではいかない。後半は記述式で,和訳,内容説明もあるので,国公立の過去問などを利用して,しっかりと対策する必要がある。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
マーク式 |
★★★☆ |
発音・アクセント,適語補充: 語彙力,文法・語法 |
正解が1つとは限らないのが意地悪。解答に迷っているとあっという間に時間がなくなる。 |
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2 | マーク式 | ★★★☆ |
長文総合: 適語補充,同義語,内容一致 |
「確証バイアス」に関する英文。内容一致では適切なものを全て選択させるため,英文のレベルは標準的だが,正答率は低くなる。 |
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3 | 記述 | ★★★★ |
英作文: 自由作文 |
「確証バイアス」を予防する教育についての自由英作文。大問2の内容に関する自由英作文。解答用紙は19.5cm×11行なので最大200語程度か。 |
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4 | 記述 | ★★★★ |
長文読解: 語句整序,適語補充,要旨・要約,内容一致 |
「医師にかかること」に関する英文。典型的な設問形式の長文読解問題を解く練習が基本である。その際,文の構造や文法事項にまで気を配ることができるよう,精読を心懸けること。分からない単語があっても前後関係や文脈から推測する方法も普段から練習しておきたい。特に,今後もウェートが増えると思われる内容説明問題には習熟しておきたい。 |
数学
試験時間は90分で,2019年度入試の大問数は4題であった。解答方式は第1問が答えのみ記す形式で,第2~4問は記述式であった。前期と後期で出題傾向に大きな差は見られない。近年は極限・微積分・図形・ベクトル等の出題が特に多いが,複数分野の融合問題も多く,各分野からバランスよく出題されている。注意点として,計算の煩雑さが問題を難しく感じさせることが多いが,考え方自体は入試基礎レベルの問題も多く出題されているので,必要以上に問題を難しいと思わないようにしてほしい。対策について,相当の計算力が要求されるので普段から自力で答えを導く訓練などを通じて,計算力向上を心掛けたい。また,難問もあるが,考え方自体は入試基礎レベルの問題も数多く出題されるので,まず入試レベルの考え方を身につけたい。誘導も多いので,参考書等の別解も含めて学習し,幅広い考え方を身に付けられるような学習を心掛けたい。他には極限・微積等の出題が多いものの,各分野からバランスよく出題されているので,特定の分野に偏りすぎることなく学習したい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
図形と方程式: 交点を通る直線・円,双曲線 |
双曲線と放物線の異なる4点を通る円の束に関する問題 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
空間のベクトル: 直線のベクトル方程式,空間図形 |
半径1の球に内接する動点を含む四面体PABCの体積の最大値 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
極限:いろいろな関数の極限, 不等式の証明への応用 |
不等式の証明とはさみうちの原理。証明あり。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
極限:曲線の長さ・道のり, いろいろな関数の積分 |
カテナリーに関する曲線の長さの極限。証明あり。 |
化学
全問記述式の試験(2科目120分)である。基本的には理論分野から2題,有機分野から2題の出題で,理論分野の中で無機分野の知識をいくつか問う形式となっており,いくつかの範囲に絞って重点的に出題される傾向が強い。特に,理論分野においては,「溶液の性質」「化学平衡」の出題が多くみられる。また,有機分野においては,教科書にある「発展」内容まで掘り下げて出題されることが多いので,これらを念頭に置いて,対策を進める必要がある。過去に遡ると難易度が高い年度もあったが,ここ数年は一部の計算問題を除いて比較的取り組みやすい設問が増えた。問題の分量・難易度に対して試験時間が60分と短いため,問題文を読んで解ける問題を確実に解いていき,計算処理が面倒な問題や難問には手を出さずに得点を積み重ねていくことが合格への最短経路となる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★★ |
酸化還元反応,電離平衡: 銅,ヨウ素滴定,溶解度積 |
特に難しいものはないが,事象の説明や図示,および化学反応式の記述などを含み,教科書の内容をどれだけ読み込んで書く練習をしたかで差がつⅠは銅を題材に,無機物質,ヨウ素滴定,溶解度積に関する出題であった。ヨウ素滴定や溶解度積の問題は十分に演習をこなしていないと短時間で解ききるのは難しい。また,問7では電気的中性の条件を用いるなど,かなり難度が高いため,入試本番ではあえて捨て問とするのが良かったと思われる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
電気分解: イオン交換膜を用いた電気分解 |
Ⅱは陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を用いた電気分解に関する出題であった。交換膜を4枚用いているという点では目新しいが,内容は平易であり,完答したい。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
炭化水素: アルキン,ケト-エノール互変異性 |
Ⅲはアルキンへの付加反応に関する出題であった。ケト-エノール互変異性の知識があれば,十分に完答できる内容である。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
アミノ酸とタンパク質: ペプチドの配列決定 |
Ⅳはペプチドの配列決定に関する出題であった。前半部分の保護基に関する内容が正しく読み取れたか,後半部分のアミノ酸の電気泳動に関する部分を間違えずに処理できたかどうかがポイントである。 |
生物
例年,大問3題であり,最後の第3問が遺伝子発現に関する本格的な実験考察問題であることがほとんどである。第1問と第2問は,標準レベルの問題を中心に作問されているが,教科書に出てこないやや高度な内容の問いが含まれており,特にヒトの体の構造や機能には深い理解が必要である。出題形式は,空欄補充と論述問題が中心である。また,思考力を試す問題や計算問題が多いことも本学の特徴の一つとなる。知識問題は標準レベルであることから,これらはほぼ確実に得点しなければならない。そして,各所に散りばめられた論述問題(特に考察系)で得点差がつきやすいことから,論述問題を解く練習を多くこなしておきたい。特に,生物学のキーワードを上手に盛り込み,簡潔で的確に文章化するトレーニングを積んでおくとよい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
生物と遺伝子: 原核生物と真核生物, カエルの発生 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
生物の体内環境の維持: ホルモンと内分泌腺, 自律神経とホルモンの協調 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
生命現象と物質: 遺伝子の調節, 個体間の相互作用 |
論述あり。 |
物理
05年度入試まで毎年出題されていた「原子」が06年度入試から出題されなくなり,06年度以降15年度までは,基本的に,力学・電磁気・熱力学・波動から各1題の出題であったが,16年度入試では再び「原子」が出題されて以降は,毎年出題されている。1つの大問の中に,中程度の問題が2題という出題が見られる年もあるが,19年度入試では,その傾向は見られなかった。問題のレベルはほとんどが標準的であるが,時々出題される見慣れない問題にも対応できるような基本力を養っておく必要がある。入試としての難易度が高い大学であるが,物理の学習に関しては標準的な問題の対策で大丈夫であろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
力学: 運動の法則,摩擦力 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
電磁気: 電磁誘導,単振動 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
熱: 気体の状態変化 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
原子: 光電効果 |
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受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2019年度 | 2,173名 | 331名 | 160名 | 非公表 | - |
2018年度 | 2,541名 | 289名 | 101名 | 非公表 | - |
2017年度 | 2,096名 | 334名 | 100名 | 非公表 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2019年度 | 93.0% | 94.8% |
2018年度 | 87.4% | 89.5% |
2017年度 | 82.5% | 85.3% |