近畿大医学部の傾向分析2023
2023年度一般入試問題分析
英語
2022年度と形式は同様だが、トータルの分量は190語ほど減少した。前半(A)~(C)が標準レベルに近づいたことで、後半の長文にもしっかり時間を割くことができる。長文に関しても、設問の難易度が低下し取り組みやすい。ただ、これまで(C)で出題される傾向にあった生物系の内容が大問(DE)に出題されており、これまで以上に生物系の背景知識を要する傾向になっていることに注意が必要である。最後の(H)については、900 語程度の長文で分量が多めであるが、段落毎に設問が用意されているので、他の長文問題よりは戦略としてはシンプルに取り組める。全体的に語彙レベルがやや高く、文章の細部の正確な読み取りと全体像の概観をバランス良く行えるような総合的な読解力が要求される。時間配分については、最初の大問A~Cを10分で終わらせ、長文読解に時間を割くようにしたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
マーク | ★★★★☆ |
【文法・語法】空所補充、同義語 |
2 | マーク | ★★★★☆ |
【長文総合】同義語、内容一致、要旨・要約 |
3 | マーク | ★★★☆☆ |
【長文総合】同義語、内容一致 |
4 | マーク | ★★★☆☆ |
【長文総合】内容一致、要旨・要約 |
数学
2024年度の前期試験は、他学部と共通のマーク形式の出題となることが発表されている。以下では、2023年度までの前期・後期(医学部独自の試験問題)についての傾向と対策を記す。頻出分野は場合の数・確率、数列、平面・空間図形、数学IIの微積分など。三角関数や整数もしばしば出題される。場合の数・確率では地道な数え上げが必要な出題もあり、答のみの形式が多いので慎重さが必要。微積では方程式の解の議論や面積などの定積分が頻出である。2023年度前期は、第1問では慎重さ、第2問では計算などの処理力、第3問では発想力が要求され、2022年度より得点しにくい。各大問とも完答は難しく、どれだけ粘り強く正解をもぎ取れたか、という戦いだったであろう。対策としては、頻出分野について教科書レベルにとどまらない演習を重ね、部分点のない第1、2問で必要となる計算力、第3問に対する記述力を磨いておくことが重要となる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 答のみ | ★★★★☆ |
【確率】 |
2 | 答のみ | ★★★★☆ |
【整数の性質】【データの分析】 |
3 | 記述 | ★★★★☆ |
【図形と計量】 |
化学
大問は3題で、すべての問題がテーマの異なる小問に分かれている形式で試験時間は60分。大問I問(1)はソルベー法に関する出題。問(2)は電池と電気分解に関する出題。難易度は標準的だった。大問II問 (1)は気体の状態方程式を駆使すれば解ける問題だが、問題設定が見慣れない形式で計算力も求められた。問(2)はベンゼン環の安定性に関する熱化学の出題で解きやすかった。大問IIIの(1)は芳香族の異性体に関する出題だが、最初の問題を間違えると後に続く問題を正しく検証できなくなるため差が付いたものと思われる。(2)はルミノールの合成に関する出題で内容は標準的だった。2022年度から形式面での変化はなかったが、全体的な難易度は下がった。実験操作に関する問題や計算量が多い問題も出題されており、それらに落ち着いて取り組む必要があった。一次合格の目標としては60%欲しい。日ごろから実験考察の練習をすると共に計算力を養っておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | 問1 ★★☆☆☆ |
【ソルベー法】 |
問2 ★★☆☆☆ |
【電気化学】 |
||
2 | 記述 | 問1 ★★★☆☆ |
【気体の法則】 |
問2 ★★★☆☆ |
【熱化学】 |
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3 | 記述 | 問1 ★★★★☆ |
【芳香族の異性体】 |
問2 ★★★☆☆ |
【ルミノールの合成】 |
||
生物
前期は例年大問4題構成だったのが、大問3題構成となった。とはいえ、後期は例年大問3題構成であるため、全体的な印象に変化はない。出題範囲については、2022年度は珍しく「免疫」の分野からの出題がなかったものの、2023年度は推薦で「免疫」が復活した。やはり、近畿大学医学部といえば「免疫」である。その他では、近年の出題が続いていたnなどの文字を用いた計算問題は姿を消した。対策としては、解答数の多い空所補充問題でしっかりと得点できる精度の高い知識を身につけることがまず第一に重要である。次に、知識系の論述問題を手際よく処理できる論述力を身につけておきたい。とくに「免疫」の分野に関しては、他の分野よりも一歩踏み込んだ学習が必要だろう。ただし、空所補充問題・論述問題ともに、受験レベルの知識ではまず答えられないようないわゆる「捨て問」が交じることがしばしばあるため、その見極めは重要である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【生物と遺伝子】バイオテクノロジー、遺伝子発現の仕組み |
2 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【生物の体内環境の維持】酸素の運搬、血液凝固 |
3 | 記述 | ★★★★☆ |
【生殖と発生】再生・幹細胞、発生と遺伝子の関係 |
物理
形式は、例年、大問3問で数値計算やグラフの描図、論述問題を含む空所補充式または解答記述式。設問数は各大問で10問程度。総解答数は約30問。大問3問のうち2問は、ほぼ力学と電磁気、残りの1問は波動、熱、原子から出題されることが多い。また、複数分野の融合問題も出題されることがある。2023年度前期の総解答数は30問。大問は3問とも標準的で解きやすい問題が多かった。ただし、計算の分量やグラフの描図問題が多かったので作業をできるだけ効率的に行う必要があった。全般的に標準的な問題は多いが描図の出題頻度が高いため、対策として典型的なグラフをスムーズに描けるようにしておいた方が良い。少し高めの難易度の問題まで対応できる力をつけておけば、合格に十分な得点が取れるだろう。過去問は時間の感覚を養うのに数年分解けば十分だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【力学】運動方程式、直線運動の加速度 |
2 | 記述 | ★★★☆☆ |
【電磁気】コンデンサーの接続 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【原子】原子核の崩壊と放射線 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年度 | 1,426名 | 228名 | 108名 | 213/400 | 53.3% |
2022年度 | 1,397名 | 218名 | 104名 | 214/400 | 53.5% |
2021年度 | 1,494名 | 223名 | 96名 | 233/400 | 58.3% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
---|---|---|
2023年度 | 93.9% | 94.6% |
2022年度 | 97.0% | 98.3% |
2021年度 | 87.3% | 87.8% |
2020年度 | 97.3% | 98.1% |