大阪医科薬科大学の傾向分析2023
2023年度一般入試問題分析
英語
試験時間80分。大問1は英文和訳3問と60字説明問題、大問2は英文和訳3問、大問3は和文英訳3問という前年度前期と同様の形式。昨今の私立医学部では珍しい記述のみの問題構成であり、国公立志望者にとっては特別な試験対策があまり必要ではない。実際に国公立医学部受験者が併願校として受験する傾向にあるため、答案に求められる完成度は非常に高いと予想される。2023年度はどの大問も標準的な難易度であり、できる限りミスによる失点を押さえて確実な答案作成ができたかどうかで差がついただろう。英文和訳に関しては、構造そのものが平易であっても、修飾関係や並列関係の判断を誤ると大きな失点につながる可能性がある。和文英訳に関しては、「秀でる」、「批判的に分析する」、「反省」、「~してはじめて」、「優れた技量」といった表現に必要な語彙力を備えていれば、英文そのものを構成することはさほど難しくない。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【長文総合】和訳、要旨・要約 |
2 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【長文総合】和訳 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【英訳】英訳 |
数学
2023年度の出題分野は、曲率中心、数学IIIの積分、複素数平面、確率漸化式、整数となっており、ほぼ例年通りであった。〔1〕は曲率中心を求めて、その移動距離を計算する問題だったが、ここは正確に計算すれば完答できる。〔2〕の増幅振動曲線の問題は面積計算を正確に行いその極限を求める問題だが、かなりの計算力を必要とする。〔3]の複素数の問題は、正n角形を表すn次方程式と幾何の深い関係を見抜かないといけない。〔4〕の確率漸化式も立式が難しい。〔5〕は9進数の見慣れない問題だった。初見の問題を考え抜く力が問われている。例年に比べると証明問題の割合が減っているのだが、値を求める問題がすべてかなりの難度があり、2022年度より難化したと言えるだろう。全問記述式であり、しっかりした答案を作成しつつ計算をこなしていかないといけない。普段から練習を積み重ねておく必要がある。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【図形と方程式】【積分法】 |
2 | 記述 | ★★★★☆ |
【積分法】 |
3 | 記述 | ★★★★★ |
【複素数平面】 |
4 | 記述 | ★★★★☆ |
【確率】 |
5 | 記述 | ★★★★★ |
【整数の性質】 |
化学
2科目120分で、例年通り大問4題の出題。大問Iは閃亜鉛鉱型の結晶格子の問題。限界半径比や、すべてを同一原子とみなすとダイヤモンド型結晶格子になる設問も典型的である。大問IIは錯イオンの平衡に関する出題。見慣れない問題に面食らった受験生も多かったと思われる。理論考察の必要な難易度の高い問題だった。大問IIIはシュウ酸を使った中和滴定と酸化還元滴定の問題。実験装置も基本的であり、計算の数値もきれいになるので落としたくない問題。大問IVは経験値で差がつきそうである。問5のα–ガラクトースの構造は覚えていないと書けない。問6は構造を考えれば答えを導くことができる。易化していた2022年度より難化し、例年並になった。I、III、IVを手堅く取れたかどうかが勝負どころになりそう。ボーダーは70%程度だろうか。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【イオン結晶】 |
2 | 記述 | ★★★★☆ |
【錯イオンの平衡】 |
3 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【中和滴定・酸化還元滴定】 |
4 | 記述 | ★★★☆☆ |
【糖類】 |
生物
例年どおり、大問4題構成で、出題形式は前期・後期ともに「論述・計算あり」の「記述式」である。注意すべきなのは字数指定のない「説明せよor簡潔に説明せよ」という論述問題で、解答欄が1行ならば20字程度、2行ならば40字程度で答えるのが適当だろう。リード文やグラフから読み取れることを記述させる論述問題が多く、よくできる受験生ほど「そんな書いてあるとおりのことが正解なのか」と感じてしまうかもしれない。しかし、そこは臆さず、読み取れることを客観的に記述しよう。出題範囲に偏りはなく、2023年度も「進化・系統分類」や「個体群・生態系」を含め、非常に広範囲から出題されているため、苦手分野を作らないことが対策としては最も有効である。とはいえ、どの範囲も設問自体は無理のない良問が多いので、基本的な知識の精度をいかに高められるかが勝負である。精度の高い基礎知識さえあれば、かなりの高得点を狙えるだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【生物の環境応答】筋肉と筋収縮、ニューロンの興奮 |
2 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【生命現象と物質】呼吸基質・呼吸商 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【生物と遺伝子】遺伝子発現の仕組み |
4 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【生物の環境応答】生得的行動、自律神経とホルモンの協調 |
物理
例年、形式は記述式の大問4問、空所補充および、数値計算やグラフの描図を含む記述式。設問数は各大問で5~7問で、解答数は30問程度。大問4問は、力学と電磁気、小問集合(大問4)に加えて、波動、熱、原子の分野から1問。複合問題も出題されることがある。2023年度は例年と傾向は変わらず、グラフの描図やデータの読み取りなど新傾向の問題は出題されなかった。各大問の後半の計算がやや重かったが、ほとんどが標準的な内容であった。高得点を得るには、一つの問題に対し一つの解き方だけでなく、様々な解法を選べるようにし、制限時間内により多くの問題を効率良く解けるようにすることが必要である。そのためには、普段から広く偏り無く学習し、一つの問題に対して異なる解法を考えるようにするなど、物理現象を深く理解をするよう心がけておくと良いだろう。繰り返し同じテーマの出題があるため過去問による対策は有効。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【力学】単振動 |
2 | 記述 | ★★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化、気体の内部エネルギー |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【その他】電子の比電荷と電気素量 |
4 | 記述 | ★★★☆☆ |
【小問集合】電気回路、光の反射・屈折・分散・偏光 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2023年度 | 1,590名 | 200名 | 163名 | 252/400 | 63.0% |
2022年度 | 1,402名 | 202名 | 166名 | 255/400 | 63.8% |
2021年度 | 1,399名 | 203名 | 158名 | 263/400 | 65.7% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
---|---|---|
2023年度 | 93.0% | 93.5% |
2022年度 | 94.5% | 97.3% |
2021年度 | 85.6% | 85.6% |
2020年度 | 100.0% | 100.0% |