兵庫医科大学の傾向分析2023
2023年度一般入試問題分析
英語
私立大医学部で近年珍しい、オーソドックスな記述式問題である。大問数に変化があり、全文和訳の大問が姿を消した。これにより試験時間内に解答を仕上げることが極めて容易になったが、その分ミスの許されない高得点勝負になったと予想される。文章内容はライフ・スタイル、医療全般といったように多岐にわたる。和文英訳はこれまで通り国公立二次レベルの力が要求される。テーマは絞りにくいが、毎年いわゆる逐語訳では英語にならないタイプの和文が出題されている。従って単語ばかりにとらわれず、伝えるべき内容を考えた上で平易な英語をうまく利用して解答を仕上げるといった練習が必要。英文和訳についても、構造を正確に捉えつつも、日本語として意味のわかる記述とするには工夫の必要な箇所が下線部として問われる傾向にあり、より深く内容を理解する力が求められる。全般に記述力の有無が大きく得点に影響する良問である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
記述 | ★★★☆☆ |
【長文その他】語句整序、和訳 |
2 | 記述 | ★★★☆☆ |
【長文総合】適語補充 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【長文総合】和訳、要旨・要約、適語補充、語句整序 |
4 | 記述 | ★★★★☆ |
【英訳】英訳 |
数学
小問集合1題と大問2題の計3題で、すべて記述式。問題文に「途中の式や考え方等も記入すること」という文言があり記述重視の方向である。証明問題も増えている。小問集合で頻出の分野は、二次関数、数列、幾何的問題、数学IIIの微積分、整数などであるが、2023年度は表で提示されたあるデータの相関について考える問題が目新しかった。ここ3年は、設問数は5題で、難易度は易しめで高得点が必要である。大問で頻出の分野は、数学II・IIIの微積分(特に求積)、場合の数と確率、複素数、図形問題などであるが、2023年度は積分の出題がなかったのが特徴的。難易度は、2019年度以降はやや上昇傾向だったが、2023年度は取りやすい問題の割合が増えた。今後も高難度の出題はありえるが、対策として肝要なのは特に上記の頻出分野についての標準的な難易度の典型題(証明問題を含む)をしっかり解けるようにしておくことだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【小問集合】 |
2 | 記述 | ★★★★☆ |
【複素数平面】 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【数列】【極限】 |
化学
大問3題で理科2科目120分の配分は2022年度から変化がなかった。全体的にかなり易化しており、化学が得意ならば満点近く取る受験生がいてもおかしくないレベルとなっていた。2022年度までの難易度の高い入試問題と比較して、あまり差はつかなさそうな出題であった。差がつくとすれば〔問2〕の後半の鉛化合物の沈殿に関する出題と〔問3〕の有機化学からの出題だが、有機化学については基本的な知識さえあれば7割ほどは正答できる内容で、一次通過には70%欲しい内容と言えよう。また、〔問2〕の後半ではグラフ描図が出題されており、過年度の過去問を見ても典型題を経験的に解けるというだけでは太刀打ちできない内容が出題されていることが多いため、問題形式にとらわれずに解ける問題を一つでも多く増やしておき、思考力を養っておくことが求められるだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【小問集合】 |
2 | 記述 | ★★★☆☆ |
【複素数平面】 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【芳香族化合物】 |
生物
出題形式は大問数が5題、小問集合もおよそ20題と例年通り。小問集合は近年の出題の中では難易度が高かった。全体的には、もともと論述問題の分量が多いが、2023年度は例年にもまして多く、論述問題の字数は指定文字数の合計だけでも380字あり、「解答欄に収まるように」や「簡潔に述べよ」といったものを合わせると、600字を超えるものだった(60分の小論文1本に相当する分量)。また、論述問題には「当たり前過ぎてかえって解答しにくい」ものや「設問の意図が汲み取りにくい」ものも含まれるため、2科目120分の時間制限の中で解ききるにはかなりの処理力・判断力 が求められる点は一貫した傾向だと言えるだろう。対策としてはまず、膨大な量の論述問題に対して、精度を少々犠牲にしてでも手早く処理できるようにしておくことが必要である。分野としては「生物の体内環境」「遺伝情報の発現」からの出題が多いため、しっかりと演習を積んでおきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【小問集合】 |
2 | 記述 | ★★☆☆☆ |
【生物の環境応答】種子の発芽の調節、刺激に対する植物の反応 |
3 | 記述 | ★★★★☆ |
【生態と環境】個体間の相互作用、進化の仕組み |
4 | 記述 | ★★★★☆ |
【生物の進化と系統】生命の起源と化学進化、細胞の構成物質 |
5 | 記述 | ★★★★★ |
【生命現象と物質】バイオテクノロジー |
物理
形式は、大問5問で数値計算やグラフの描図、論述問題を含む空所補充式または解答記述式。例年、力学、電磁気、波動、熱、原子の5分野から各1問。原子の代わりに電磁気や力学から2問出題される年度もある。小問数はおおよそ35問。グラフ描図、論述や数値計算が特徴的である。問題数、計算量ともに多く与えられた時間内に全て解ききるのは難しい。2023年度の解答数は33問で例年並み。2022年度よりもやや難しかった。論述形式の問題が1問のみで2022年度より減った(2022年度は3問)。例年の傾向として、問題の意図がつかみにくいタイプの問題や、方針に詰まるような問題が含まれるが、2023年度は大問4の熱がそれに相当する。対策として、典型的な論述や描図問題は手早く処理できるようにし、原子分野の一通りのテーマは復習すること。過去問を数年分解き、時間の使い方や手をつける問題の選び方を練習しておくとよい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆☆ |
【電磁気】電磁誘導と誘導起電力、摩擦力 |
2 | 記述 | ★★★☆☆ |
【力学】剛体のつり合い、円運動 |
3 | 記述 | ★★★☆☆ |
【波動】音のドップラー効果 |
4 | 記述 | ★★★★☆ |
【熱】気体の状態変化、気体の内部エネルギー |
5 | 記述 | ★★★★☆ |
【原子】核反応と核エネルギー |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2023年度 | 1,568名 | 413名 | 137名 | 427/650※ | 59.6% |
2022年度 | 1,396名 | 438名 | 146名 | 387/650※ | 59.6% |
2021年度 | 1,452名 | 449名 | 149名 | 401/650※ | 61.6% |
※2次含む合計点
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
---|---|---|
2023年度 | 97.4% | 98.2% |
2022年度 | 96.5% | 96.3% |
2021年度 | 93.3% | 93.1% |
2020年度 | 97.5% | 97.3% |