獨協医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間がこれまでの70分から60分に短縮されたことにより、問題構成の変更が若干行われた。大問2Bの文整序が2題から1題に、大問3の語句整序が10題から5題になった。大問1の長文は、語数が2020年度より若干増加したものの、設問形式・設問数は変わらず。解きにくいと感じた設問は後回しにして、どんどん読み進める姿勢が必要。大問3の語句整序も、時間的制約がある中での取り組みになるため、思わぬ苦戦を強いられる可能性もある。理想的には、大問2BC以外を50分以内で片付けたい。大問2BCは、はまると時間を浪費してしまうだけなので、最後にまわすべき。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1A | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】空所補充、内容一致 |
「哲学の目的」に関する英文。以前と比べ、英文自体が短くなったのは2020年度と同様。しかし医学部受験生にとっては不慣れな内容。 |
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1B | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】空所補充、内容説明、内容一致 |
「否定的な感情のもたらす影響」に関する英文。内容としてはめずらしくないが、書かれている内容がつかめない場合、かなり苦労することになる。 |
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2A | マーク | ★★☆☆ |
【会話】空所補充、内容一致 |
日本に来た外国人と日本人による古墳をめぐる会話長文。流れを押さえて、テキパキと解きたい。 |
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2B | マーク | ★★☆☆ |
【文整序】 |
2020年度まで2題だったが試験時間の短縮により1題に。代名詞、冠詞、接続詞、接続副詞を丁寧に押さえることが重要。4つの選択肢を吟味しながら解くと時間短縮につながる。 |
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2C | マーク | ★★☆☆ |
【長文その他】文挿入 |
「黒色を好む子供」に関する英文。6つの空所に対して、8つの選択肢の中から、適する英文を選ぶ。このタイプの問題は取り組みにくいことも多いが、2021年度は比較的取り組みやすい。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【語句整序】 |
2020年度まで10題だったのが試験時間の短縮により5題に。対応する和文があり、落ち着いて取り組めば正解できる。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【文法・語法】 |
文法・熟語・構文把握が問われる。対応する和文があり、標準的なものが多いが、一部は細かい知識が問われる。 |
数学
2021年より入試日程が2日でそれぞれ大問が4題60分となった(それ以前は5題で70分)。そのため、1題当たりの制限時間はやや緩和されたが、それでも全問を解ききるのは困難だろう。数年前までは「何番はこの分野」とほぼ決まっていたが、最近はその規則性は崩れつつある。頻出分野は数Ⅲの微積分、場合の数と確率、幾何的問題、空間ベクトルなど。その他、数列、整数、二次曲線もよく出る。受験生が手薄になりそうなやや高度な題材もよく出ていたが、近年は目立たなくなった。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
【小問集合】条件付き確率、整数の性質の活用 |
(1)はさいころの目の和に関する問題。1の目が4回以上連続して出る確率はしっかりとパターンの書き出しをしたい。(2)は記数法の小数に関する問題で整数の性質を用いて方程式を解くタイプ。a、b、cの範囲に気をつけつつ、きっちり得点したい。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【積分法】媒介変数による表示 |
(1)は不定積分の計算。教科書レベルなので易しい。(2)は媒介変数表示で表されたグラフの増減を調べて面積を求める典型的な問題。計算ミスなく完答を目指したい。マーク式なので誘導にのらざるを得ないが極座標で考えると面積は一瞬で求まる。知識としては知っておきたい。 |
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3 | マーク | ★★★☆ |
【図形と方程式】交点を通る直線・円 |
(1)は相似の利用が誘導されているので手を出しやすい。極線の知識もあると楽である。(3)の線分ABの通過領域は少し手が出しにくかったかもしれない。正確な図をイメージすることが大切である。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【空間のベクトル】空間ベクトルの内積 |
誘導に従ってひたすら計算していくタイプの問題であった。計算量はそこそこ多いためミスなくしっかりと計算をやりきる力が必要とされただろう。 |
化学
2021年度は2020年度までよりも試験時間が延びた。しかし分量・難易度としては平年通りで、単純に時間の余裕ができたと考えるべきだろう。対策としては難易度の上がりがちな理論分野の大問を後回しにして、まずは小問集合および知識問題をなるべく短時間で片付けてしまうこと。獨協医科大学の正誤問題の傾向として、判断の悩む選択肢が並ぶ中、1つだけ明らかな誤りを含むなど答えとなる選択肢の判断が付けやすいことが多いため、1つの選択肢の吟味に時間を掛けすぎず、まずは全ての選択肢に目を通すようにしよう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | マーク | ★★☆☆ |
【小問集合】身の回りの化学物質、中和滴定、緩衝液、ベンゼン、工業的製法、水素結合、有機化合物の抽出分離、溶液の性質、糖類、光化学反応 |
さまざまな分野にわたる小問集合で、総マーク数は10個。2020年度に引き続き、1問だけ計算問題があった。「誤りを含むもの」を選ぶ出題が多かったが、そのほとんどは明らかな誤文だったので、落ち着いて処理したい。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【気体の法則】蒸気圧 |
蒸気圧と気体の法則についての設問で、総マーク数は5個。計算そのものよりも、物理量どうしの関係(比例・反比例など)を考えて解く出題が目立った。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【金属各論】アルミニウム、両性元素 |
アルミニウムおよび両性金属についての設問で、総マーク数は5個。計算問題も含まれていたが難易度も高くなく、計算量も少なかったので完答を目指したい。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【脂肪族炭化水素】アルケン、シクロアルカン |
アルケンとシクロアルカンについての設問で、総マーク数は5個。どの出題も基礎〜標準レベルで失点を防ぎたい。問3の構造推定は選択肢問題であることを前提にして解く術を身につけたい。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
【生命の化学】酵素、抗生物質 |
酵素基質反応と阻害剤についての設問で、総マーク数は4個。扱っている題材は馴染みの少ないものだったため身構えた受験生は多かったかもしれないが、内容としては標準的。 |
生物
マーク数40。2020年度までは理科2科目で100分かつマーク数も2020年度60、2019年度52と時間に対する問題量が多かったが、2021年度は緩和された。しかしながら、長いリード文を読んで考察する問題や計算問題が出題されており、決して時間に余裕があるわけではない。そのため、どの分野でも標準的な問題や典型的な実験考察問題を手際よく解けるようにしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】自律神経とホルモンの協調、免疫 |
抗体の働きについての実験考察問題は、長い実験の説明文から必要な情報を正確に読み取り、整理することができたかで差がついたと思われる。 |
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2 | マーク | ★☆☆☆ |
【生殖と発生】ウニとイモリの発生、発生と遺伝子の関係 |
ウニとカエルの発生とショウジョウバエの頭尾軸決定についての基本事項を問われており、失点できない。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【生物の環境応答】ニューロンの興奮、反射・興奮の伝達経路 |
標準的な知識問題を中心に問われており、興奮の伝導と伝達のしくみがきちんと理解できていれば取り組みやすかったであろう。 |
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4 | マーク | ★★★☆ |
【生物の環境応答】刺激に対する植物の反応 |
緑葉内におけるジベレリン量とジャスモン酸量の増減による遺伝子発現の制御に関する考察問題は、ほとんどの受験生にとって馴染みがないテーマで、かなり複雑なしくみであることから、大問1以上に情報の読み取りと整理が難しかった。 |
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5 | マーク | ★☆☆☆ |
【生態と環境】物質循環とエネルギーの流れ |
生態系の物質収支に関する典型問題。正確に計算し、確実に得点したい。 |
物理
2021年度は2020年度と同程度の難易度。作業量も同等。試験時間が長くなったが、問題量は変化無し。それでも試験時間に対して問題数がまだ多い印象。毎年度、他の大学であれば小問を分けて誘導を行うような問題で、いきなり結論だけを問う問題が複数ある。設定は受験生に見慣れたものであっても、時間内に解ききるのは難しい問題が多い。スピードのない受験生だと問題の内容、作業の筋道が見えるだけに深追いしてしまって、化学または生物の時間を削ってしまいかねない。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | マーク | ★★☆☆ |
【小問集合】 |
ばねで連結された2つの小物体。弦・気柱の共鳴。電気振動。コンプトン効果。いずれも標準的な問題設定。ただ、解答にかかる時間に比べて、得られる得点は大きくない。解法が見通せるだけに、深追いして時間を使いすぎることに注意。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化、気体の内部エネルギー |
定積変化と断熱変化を組み合わせた熱サイクルの問題。クセの無い問題なので、完答しておきたい。設問の作りが2020年度と微妙に異なる。これまでの獨協医科大学特有のクセは少なめ。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【波動】光の干渉・ヤングの実験、波の式 |
ヤングの実験。問1は単振動の合成として、合成波の振幅を答える問題。式はひととおり与えられているが、計算せずとも振幅が最大になる条件だけから選択可能。問2以降は典型問題。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【電磁気】電気容量とコンデンサー、導体・誘電体の挿入 |
コンデンサーに誘電体を挿入する設定自体は典型的だが、自力で複数段階の作業を行うことが求められる小問がある。設定のわりに受験生は解答に時間がかかるだろう。ダイオードは、誘電体を挿入する過程と、引き抜く過程で条件を変化させるために接続されている。図の選択問題は、読み取りのポイントをしぼって、時間をかけずに解答したい。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
【力学】単振動 |
ばねによる単振動と、系の持つ加速度による慣性力についての問題。ぜひ完答を。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 2,269名 | 450名 | 169名 | 非公表 | - |
2020年度 | 1,824名 | 381名 | 103名 | 非公表 | - |
2019年度 | 1,913名 | 391名 | 148名 | 非公表 | - |
2018年度 | 1,602名 | 381名 | 150名 | 非公表 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 94.4% | 97.2% |
2020年度 | 88.5% | 89.1% |
2019年度 | 84.1% | 86.8% |
2018年度 | 83.6% | 83.6% |