久留米大学医学部の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。大問1が2020年度と比べると12から8問に小問数が減り、例年は大問4が長文内容一致、大問5が長文空所補充と長文内容一致だったが、2021年度は順番が入れ替わった。大問2〜5は比較的新しい医学系の話題から出題されており、背景知識の有無も影響するため、英語の学習はもちろんのこと、普段から医学系の時事問題に精通しておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 |
マーク |
★★☆☆ |
【文法・語法】語彙力、文法・語法 |
推薦試験と同様に、2020年度と比較して、設問数が12問から8問に減少した。単語・熟語の意味及び使い方の知識、並びに文意をくみ取る力が必要である。 |
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2 | マーク | ★☆☆☆ |
【短文】要旨・要約 |
2020年度から導入された不要文削除の問題が2021年度も出題された。不要文が明らかに要旨と異なっており、特定しやすいので確実に得点したい。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【長文その他】語句整序 |
「脳卒中によって損なわれた運動・感覚機能を細胞移植によって回復させる実験」に関する英文。医学系単語の語彙力の差により本文全体の理解度に差は出るが、マニアックな熟語等は含まれていなかった。 |
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4 | マーク | ★☆☆☆ |
【長文総合】内容一致、空所補充 |
「機械学習を用いた、AIによる脳腫瘍のMRI画像診断」に関する英文。内容一致にやや選びにくい選択肢が含まれているが、空所補充は正答以外の選択肢の語句が平易かつ明確に誤りの設問が多かった。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致 |
「抗生物質多用の問題」に関する英文。設問は本文の順番通りとなっており、また、複数の文がヒントになっている問題もあるため、解答の根拠は見つけやすい。 |
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6 | 記述 | ★★★☆ |
【短文】要約英訳、要約和訳 |
2020年度に新しく導入された要約問題が2021年度も出題された。要約英訳は30語程度、要約和訳は50字程度という指定があり、要約英訳は10語増えたものの、設定字数・語数内にまとめるのが難しいことは変わっていない。 |
数学
試験時間90分。2020年度より計算量が増え、やや難化した。どの分野からもまんべんなく出題されている印象ではあるが、特に図形と方程式、数列、数Ⅲの微積分からは頻出である。2020年度に続き、データの分析の出題はなかった。どの大問も小問に分かれており、基本から応用へ、といった流れである。基本内容で失点しないため、まんべんなく基礎を身に付けておきたい。計算量の多い問題も出題されているので、日頃から計算演習を繰り返すことが必要である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★★☆ |
【複素数平面】因数定理・剰余定理、複素数の図表示 |
(1)因数定理を用いて多項式の割り算、因数分解をする問題。(2)は一旦、複素数平面上に図を書いてみると、実軸上の点2と共役複素数z、wが直角二等辺三角形になる条件がわかる。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【図形と方程式】弦の長さ、交点を通る直線・円 |
(1)線分の中点は円Cの中心を通る直線lに垂直な直線との交点として求めるとよい。(2)円Cと直線lの共有点を通る円の方程式を作り、それがy軸に接する条件(x=0を代入後、判別式が0)を求めると楽である。 |
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3 | マーク | ★☆☆☆ |
【極 限】その他の漸化式、数列の極限 |
(1)は両辺を(n+1)倍することで、bnの階差型になる。(2)は自然対数の底eの定義に基づいて計算する問題。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【整数の性質】約数と倍数 |
正の約数が12個となるのは素因数が3種類以下のときであり、最も小さいのは22・31・51のときである。(1)で2、3だけの場合を考えているが、他のパターンもあることに気付けるかどうか。 |
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5 | マーク | ★★★☆ |
【積分法】約数と倍数、回転体の体積 |
(1)2曲線とy軸で囲まれる部分の面積。解いておきたい。(2)y≦0のグラフをy軸について折返してy≧0に集めるタイプの回転体。(3)y軸回りの回転体の体積。バウムクーヘン積分を使えばよいが発展的な内容。 |
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6 | マーク | ★★★☆ |
【二次関数】絶対値を含む二次関数、共有点の個数 |
関数とグラフの問題で、絶対値の場合分けや交点の位置について細かい確認が必要な問題。(2)ではy=g(x)のグラフの姿が正しくつかめていても、y=f(x)のグラフの位置関係が絶妙で、かなり根気が必要。 |
化学
理科2科目120分。形式・難易度ともここ数年と大きな変化はなく、易から標準レベルの問題がほとんどであり、高得点での勝負となったと思われる。1次通過のためには、やや煩雑な計算問題や論述問題での失点を抑えて80点を目指したい。日ごろから標準的なレベルの問題をできるだけ短時間で解く練習を積んでおくとよいだろう。ただし、過去には難易度がやや高めの天然高分子の問題や、有機物の構造式決定の問題も出題されていたので、甘く見ることは許されない。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【小問集合】 |
2020年度同様に化学の全分野から5題が出題された。2020年度は選択記述式が多かったが、2021年度は記述型となっていた。いずれも基本的な問題であり、ここでの失点は避けたい。(3)のような化学史に関する問題は2019年度にも出題されており、意外と盲点となるところかもしれない。意識して勉強しておかないと足元をすくわれることになる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論化学】凝固点降下 |
希薄溶液についての凝固点降下の問題であるが、いずれも標準的な問題であった。(5)の計算がやや煩雑ではあったが、ここはきっちりと計算しておきたい。(7)は一見計算が大変そうに見えるが、実際にはきれいな値が出る問題で、差がつく問題であったかもしれない。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【無機化学】アルミニウム単体および化合物 |
(1)の空所補充問題ではケとコがやや細かい知識を要する問題となっていた。(4)のアルミニウムの働きについてはどのように答えればよいか、記述の仕方が分かりにくい出題であった。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【有機化学】芳香族化合物 |
(2)は教科書には記載されていることが少ないアセトアミノフェンの構造式を書かせる問題であったが、問題文をしっかりと読めば構造式は推定できたと思う。ニトロベンゼンの還元にはスズを用いることが多いが、(6)の出題のように鉄を用いることもある。丸覚えだけでなく、その理由を理解する勉強を心掛けたい。 |
生物
理科2科目120分。50字が2題、100字が1題とやや字数の多い論述問題が復活した一方で、2020年度と同様計算問題は出題されなかった。全体としては取り組みやすい問題が多く、例年通り高得点勝負になっただろう。特別な対策は不要で、王道のテーマについて基礎知識をしっかりと固めておくことが何よりの対策となるだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生命現象と物質】物質輸送とタンパク質、細胞の構造・細胞小器官 |
密着結合の詳細に関する記述は細かい知識が問われたが、それ以外は確実に得点しておきたい。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の環境応答】筋肉と筋収縮、興奮の伝達 |
基本的な知識問題ばかりなので、満点を目指したい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】肝臓のはたらき |
基本的な知識を問う設問が中心となっている。中にはかなり細かい知識が求められる設問もあるが、恐らく多くの受験生が解答できないので、点差は開きにくいだろう。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【生殖と発生】再生・幹細胞 |
設問の意図を汲み取って字数内にまとめるのに苦労するだろう。 |
物理
理科2科目120分。大問は例年3問で問題数は25問程度で2021年度も変わらない。解答を書かせる記述式。標準的な問題が出題されている。そのため国公立志望者でも取り組みやすい。各大問の最後は比較的難しく、これらを解けるかどうかが差になる。また、例年問題用紙の最初に「解答欄に[ ] があるところはその単位をSI 国際単位系による簡潔な形で記入せよ。」とただし書きがあるが、2021年度前期はその記述がなかった。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】力学的エネルギーの保存、運動量の保存 |
ばねを介した2物体の運動を扱っており、力学的エネルギー保存・運動量保存を使う標準的な問題である。(5)〜(8)は静止摩擦力が絡んでいるが、誘導に乗れば完答可能である。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化 |
ストッパーのついたシリンダー内に閉じ込められた気体の熱サイクルを扱っている。文字が多く設定が読み取りづらく、最後まで計算し切るのは簡単ではない。状況を整理しp-Vグラフを描きながら考えると解きやすくなる。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【電磁気】電流が磁界から受ける力、電荷と電場 |
質量分析器を題材として扱い、電磁場中のイオンの運動を考える。イオンの電荷の正負や電場の向きが与えられておらず、2つの領域内の運動を関連づけて判断することが求められるが、設定は理解しやすく完答はしやすい。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,888名 | 352名 | 154名 | 350/500 | 70.0% |
2020年度 | 1,823名 | 322名 | 120名 | 395/500 | 79% |
2019年度 | 1,568名 | 394名 | 170名 | 334/450 | 74.2% |
2018年度 | 1,871名 | 394名 | 168名 | 280/450 | 62.2% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 77.8% | 84.8% |
2020年度 | 84.4% | 87.8% |
2019年度 | 87.5% | 88.8% |
2018年度 | 83.3% | 82.7% |