藤田医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。全体として2020年度前期よりも易化。文法系の問題は全体に標準レベルでしっかり得点する必要がある。大問3の長文問題は設問自体は根拠を求めやすいものの、文章内容には馴染みがなく苦労した受験生も多いだろう。記述式の長文問題については、設問で求められる説明に必要な記述力、要約能力に関しては国公立2次レベルと言ってよい。記述量が多いので、素早く根拠となる記述内容を絞りこんで日本語にまとめる力が求められる。大問5の英文中の下線部英訳問題については、これまでと違って「日本」に関する英文ではなく、科学系の英文が出題された。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
【文法・語法】文法・語法、語彙力 |
文法・語法の知識を問う4択問題が6問。レベルとしてはやや易から標準。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【語句整序】文法・語法 |
短文中の空所(7個)に選択肢(7個)の語を並び替えて、和文に相当する英文を完成させる問題が4問。標準レベルの問題が多いが、一部やや難度の高い問題も含まれる。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致、適語補充 |
「DNAから探るポリネシア人とネイティブ・アメリカンの交雑の歴史」に関する英文。設問は全て英語に変更された。本文に根拠を求めやすく標準的な良問。空所補充が2問、残り4問は内容に関する問い。解答の根拠を見つけるのは比較的簡単であり、しっかり得点したい。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【長文総合】要旨・要約、段落挿入、和訳 |
「マヤの都市が廃墟となった理由」に関する英文。設問は何を答えるべきか明瞭に示されており、2020年度前期より大幅に取り組みやすくなった。説明問題が4問と段落挿入問題が1問。説明問題については、どこまで詳しく解答するかによって参照すべき範囲の判断が必要。文章内容はややつかみにくいところもある。 |
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5 | 記述 | ★★☆☆ |
【英 訳】下線部英訳 |
「発汗と運動量」に関する英文の一部を和文英訳する問題。典型的な基本英訳が要求されており取り組みやすい良問。頻出の「日本独自の文化」にまつわるテーマではなく、一般的な科学系テーマの出題となった。語彙も平易で、英文中の表現を利用すれば困ることも少ない。 |
数学
試験時間100分。難易度は、小問は例年よりやや易しめだが計算量が多く差がつきやすい。大問は例年並み。小問集合は幅広い分野から出題されるが、特に頻出なのは、整数、図形問題、数列、データの分析などである。今回もこれら全ての分野から出題された。大問については、2021年度推薦では証明問題が復活したが、前期試験では出なかった。小問集合では、マーク形式ならではの要領の良さが少々必要となる。大問については、まずは典型問題を取りこぼさないように演習を重ねておくことが重要だが、証明問題への対応力が他大学より問われることには注意しておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
【小問集合】 |
2020年度より難易度は下がった。しかし計算が大変な問題も含まれており、要領よく解かないと時間を浪費してしまうだろう。 |
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2 | 記述 | ★★★★ |
【場合の数】数え上げの原則、独立な試行と確率 |
1、 2、 11、 12 の4つの数から3つを選んで一列に並べ、整数を作る問題である。もれなく書き出せるかどうかがポイントとなる。(3)は難易度が高く、時間内に完答するのは難しいだろう。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【積分法】不等式の表す領域、回転体の体積、最大・最小の応用 |
不等式の表す領域の図示とその領域をx軸の回りに回転させてできる立体の体積の最小値を求める問題。解法の流れなどは典型的な問題であったが、計算が少々複雑で差がつきやすい。 |
化学
理科2科目で120分。第1問〜第5問までと、2020年度と変わらない形式であった。以前に頻出であったグラフ描画問題は2020年度に引き続き出題されており、単純暗記だけではなく現象理解を問いたいという出題意図を感じる。第4問のアセトアルデヒド合成実験においても、単にアルコールの酸化反応を暗記しているだけでは対処できず、この実験がどのような物性を利用したものかを問う出題もなされていた。標準題をしっかりやり込み易問を落とさないようにしながら、図録などを用いて現象や実験操作などへの理解を深める学習を心がけたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【小問集合】水蒸気蒸留、化学平衡、アルミニウム |
問1の水蒸気蒸留の設問は初見の受験生を驚かせたかもしれない。経験値の差が出そうな内容であった。問2は標準的な設問であるものの、しっかりとした平衡論の基礎が問われる良問で差がつきそう。問3は基本的な無機知識が問われる反応式作成で、落とせない設問。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【電池と電気分解】電気分解 |
反応式を書いて比例計算するだけであり、数値も計算しやすいものであった。満点を目指したい設問。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【脂肪族化合物】脂肪族炭化水素、異性体 |
問われている内容は決して難解ではなかったが、「すべて選べ」という形式の設問があったこと、計算に時間をとられる設問があったことから、手際の良さが求められた。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【実験問題】アセトアルデヒドの合成 |
エタノールの酸化反応が起こっていることは容易に読み取れたであろうが、生成物がアセトアルデヒドであるか、酢酸であるか悩んだ受験生は多かっただろう。日頃から図録などを利用した視覚的な学習を心がけていたかどうかで差が付きそう。 |
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5 | 記述 | ★☆☆☆ |
【アミノ酸】ペプチドの構造推定 |
どの問題も基本的で難しいものはない。問 1 の分子式も質量組成が与えられているときは分子量との掛け算で求まるので整数比で悩むこともない。等電点についても私立医学部入試では頻出項目なので準備できていた受験生が多かったであろう。満点を狙いたい内容である。 |
生物
理科2科目で120分。大問1・3はかなり発展的な内容を含んでおり、例年以上に問題文を素早く正確に読解する能力が求められている。比較的取り組みやすい大問2・4でどれだけ得点できるかで点差がつくだろう。ここ2年ほどいわゆる「パターン」では対応しにくい考察問題が増えているため、それ以外の基礎知識を問う部分で確実に得点できる力を身につけておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫の応用・疾患 |
冷静に対応できればきちんと得点できる設問は含まれているものの、二次抗体など、多くの受験生にとって馴染みのない内容について書かれた長い問題文を要領よく読解する力が求められる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】呼吸とそのしくみ、筋収縮とタンパク質 |
問5の「4量体の種類」を問う設問については、その意図を汲み取るのに苦労する受験生が多いと思われるが、それ以外は標準的な内容である。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【生物と遺伝子】DNAの複製、バイオテクノロジー |
問4の対数の計算に戸惑った受験生が多いと思われる。また、現象の「機序」ではなく「理由」を問う論述問題も解答しにくいだろう。全体的に経験値がないと点を集めにくい設問の多い大問である。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】血液凝固 |
血液凝固に関する基礎知識に加えて、問題文に含まれる発展的な内容を読み取る力が問われている。 |
物理
理科2科目で120分。2020年度よりも難化。問3の一部には会話文が見られ、論述問題が出題された。難易度の高い問題が出されることがあるが、特徴として通常の問題と異なる誘導や式変形が多く、式の処理が数学的幾何的に難しいものが多い。また設定も変わったものが出されることがあるのでその場での対応力が試されている。問題の分量は割り当てられた時間に対してかなり多く、時間内に全てを解ききることが難しい年度が多い。過去問の演習で時間配分の練習をしておくことは非常に大切。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【力学】円運動、水平投射・斜方投射 |
鉛直面内の円運動の問題。誘導が少なく計算も重い。問1〜問4と問6が解ければよい。問5 と問7の計算は重いので後回しにするのが正解だろう。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【熱】気体の状態変化、水圧と浮力 |
気球の問題。大気と球皮内部の気体が異なり、風船内部の気体の状態変化が断熱変化であるのは設定としては珍しい。断熱変化および、高度による大気圧の変化の両方で指数が現れるため高い計算力が要求される。問5の運動方程式では、気球内部の気体の質量も考慮する必要がある。問1〜問5あたりまでは計算できても、最後まで解ききるのは難しいだろう。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】力学的エネルギーの保存、摩擦力 |
摩擦のある斜面上の物体の運動について。今回の大問4問の中では最も解きやすい問題。問3の論述にも簡潔に答えて完答しておきたい。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】電気回路、コンデンサー |
コンデンサーを含む回路。過渡現象についての出題。スイッチを切り替えた直後と、十分時間が経過した後の状態を考える問題。状態変化がやや複雑で、計算も繁雑になりやすい。問4以降の計算でつまずいた受験者も多かったのではないだろうか。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,755名 | 非公表 | 239名 | 312/600 | 52.0% |
2020年度 | 1,669名 | 非公表 | 245名 | 297/600 | 49.5% |
2019年度 | 1,549名 | 非公表 | 261名 | 312/600 | 52.0% |
2018年度 | 1,953名 | 非公表 | 253名 | 非公表/600 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 96.4% | 98.1% |
2020年度 | 94.2% | 94.6% |
2019年度 | 93.8% | 96.5% |
2018年度 | 88.2% | 91.7% |