兵庫医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間90分。大問数に変化はないが、2019年度まで出題されていた長文中の語句整序問題に代わって短めの英文中での空所補充問題が出題された。これにより時間内に解答を仕上げることは容易になった。私立医学部では近年珍しい、記述式のオーソドックスな出題内容である。分量は2020年度とほぼ同じで、ある程度余裕をもって解答できる程度のものであった。英文内容はライフ・スタイル、医療全般といったように多岐にわたる。和文英訳はこれまで通り国公立2次レベルの力が要求される。テーマは絞りにくいが、毎年いわゆる逐語訳では英語にならないタイプの和文が出題されている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 |
記述 | ★★★☆ |
【長文総合】和訳 |
「死を迎える前に身近な人々と語り合うことの大切さ」に関する英文。2019年度までの全文を和訳する問題に回帰した。5行ほどの英文の全訳問題。単語レベルでさほど難しいものが含まれているわけではないが、内容を理解して意味の通る日本語を書けるかどうかとなると差が出やすいだろう。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】適語補充 |
ある男性の体験を通じて、コロナ禍であっても前向きに生きることの大切さを述べた英文。短めの英文中に10の空所があり、選択肢も同じく10。全て使い切るタイプの空所補充問題なので、まずは確実なところをしっかり埋めた上で、難しいところを残った選択肢から吟味するといった対策が必要。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳、適語補充 |
「シンガポールにおける緑化推進」に関する英文。(1)は空所補充5択問題が8問、(2)は下線部和訳問題。(1)に関しては熟語や文法知識を問うものと英文構造から必要な活用形を選ぶものが含まれる。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【長文その他】和訳、同義語、語句整序 |
「最新技術による義肢」に関する英文。(1)は下線部の単語に対する同義語(句)を選ぶ5問。(2)は語句整序が1問。(3)は下線部和訳が4問。同義語問題に関しては、明らかに文脈から推測する必要のあるものが1つ含まれるが、それ以外は基本的に単語の知識を問うもの。 |
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5 | 記述 | ★★★☆ |
【英 訳】英訳 |
図書館の意義に関する和文を英訳する問題。「図書館のもっている静謐さ」のように、やや難しい日本語の意味を解釈して英訳する必要があるなどの難しさはあるが、それぞれの文を英語として構成するのはさほど難しくない。 |
数学
試験時間60分。2020年度と比較すると、小問が易しくなっているが、大問は相変わらず難しい。時間不足というよりは、難度の高い問題に対して方針が立たずに動けなかった受験生が多かったと思われる。小問集合で頻出の分野は、二次関数、数列、幾何的問題(図形と計量、ベクトルなど)、数学Ⅲの微積分、整数問題などである。大問の頻出分野は、数学Ⅱ・Ⅲの微積分(特に求積)、場合の数と確率、複素数などだが、2021年度は数列(一部に数学Ⅲの微分を含む)、図形と計量と例年とは少々様子が違った。2019年以降、問題文に「途中の式や考え方等も記入すること」という文言が加わり記述重視の方向が感じられる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【小問集合】 |
設問は5個。確率、空間座標、定積分の計算、整数問題、三角関数。いずれも基本的なレベルで落とせない。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【数列】2項間の漸化式、曲線の凹凸・変曲点 |
複利計算をニ項間漸化式として扱う問題。受験生の盲点となりやすい話題である。題意を理解できなかった人も多いだろう。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【図形と計量】角の二等分線と比、三角形の五心、ベクトルの内積 |
三角形におけるいくつかの線分についての関係式を証明し、さらにその関係式を利用して、いろいろな線分の長さを求める問題。かなりの発想力が必要。手が付かなかった受験生も多かったであろう。 |
化学
理科2科目で120分。化学は問1〜問3までと形式的な変化は無かった。また、難易度の面でも2020年度と比べて大きな変化はなかった。とはいえ、2011年以降の兵庫医科大学の入試問題においては、典型題を経験的に解けるというだけでは太刀打ちできない問題が出題されることが多いので、問題形式にとらわれずに解ける問題を一つでも多く増やしておき、思考力を養っておくようにしたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆ |
【希薄溶液の性質】浸透圧 |
U字管に入れた溶液の浸透現象についての出題。一部、2種類の溶質が溶けた水溶液について扱っていた以外は典型的な内容であった。2種類の溶質が溶けた水溶液に関する設問についても、どちらも非電解質であったため難易度の変化には大きく寄与しなかっただろう。受験生が苦手としがちな内容であるため、訓練をしっかり積んできたかどうかで差が付きそう。ただし、計算量が多かったため完答できる受験生は少なかったのではないかと予想される。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【コロイド】 |
コロイド全般についての用語および具体例の分類を問う知識問題と、ミセルコロイドについての計算問題および描画問題。兵庫医科大学ではグラフ問題が頻出だが、この年度では界面活性剤の濃度と表面張力のグラフを扱う出題であった。問題文をきちんと読解すれば難易度は高くなく、計算量も少ない。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【有機化学】 |
組成式CHの化合物についての出題。(1)は標準的な構造推定であり、完答を目指したい。(2)は異性体についての設問で、「構造異性体」と「立体異性体」という言葉の区別に注意が必要で、差が付きそう。(3)は高分子化合物の計算問題であったが、現役生配慮のためか共役二重結合の重合について説明が付いていた。とはいえ、ある程度の訓練を積んでいないと正答できない設問であり、ここで初めて出会った受験生には厳しい問題だったであろう。 |
生物
理科2科目で120分。例年に比べると、細かい知識よりも読解力や論理性を重視する出題に力点が置かれている。知識問題は易しくなったぶん、1つのミスが例年よりも大きく影響しただろう。論述問題は、解答の合計字数が450字を超え、例年以上にボリュームがあるものの、内容的には例年よりもやや取り組みやすい設問が多くなっている。対策としてはまず、膨大な量の論述問題に対して、精度を少々犠牲にしてでも手早く処理できるようにしておくことが必要である。また、ここ2年は出題されていないものの、難度の高い問題が出題されやすい「進化・系統」の分野については、細かい論点まで丁寧に目配りしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【小問集合】 |
全体的に基礎知識を問う設問ばかりで、選択肢も素直な内容が多く易しい。ここは満点を目指したい。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】細胞の構造・細胞小器官 |
Ⅰは植物済細胞についての基礎知識を問う設問ばかりで易しいが、Ⅱはメチルグリーン・ピロニン溶液についての知識がないと手が出ないだろう。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】窒素同化、空中窒素の固定 |
窒素同化についての知識の精度が、そのまま点差になって表れる大問である。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】遺伝子発現の仕組み |
(7)の転写調節に関する論理パズル的な設問をどれだけ解答できるかで差がつくだろう。 |
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5 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】腎臓のはたらき |
腎臓についての計算問題だが、クリアランスを始め必要な定義は問題文にすべて提示されているので、それを正しく読解し、処理する能力が問われている。とくに、1分か10分かといった単位についての注意力も重要である。 |
物理
理科2科目で120分。問題数は他大学と比較して飛び抜けて多い。グラフや論述が複数題出題されており、年々分量も増えている。問題量、計算量はともに多く、全て解ききるにはかなりの力量が必要である。問題の意図がつかみにくいタイプの問題や、方針に詰まるような問題が出題されることがあるので、そのような問題で詰まった場合は要領良く飛ばして他の問題を解くという練習をしておきたい。描図問題や、論述問題が増えているが、得点率を考えると、先に易しい記述問題を優先して解いた方が得策。原子分野からの出題が比較的多いので一通りのテーマは復習しておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★★☆ |
【力学】斜方投射 |
テニスボールがコートに入る条件についての出題。斜方投射の問題だが、問われている条件を式として表現したり、グラフで表したりする際に非常に手間がかかる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【電磁気】コンデンサーの接続、電気抵抗と抵抗率 |
コンデンサーの接続、極板の移動についての出題。入試では良く出題されるテーマ。ぜひ完答しておきたい。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【波 動】その他のいろいろな干渉、反射による位相変化 |
半円柱方レンズと凸レンズの間にできる干渉縞。ニュートンリングの応用問題だが、与えられた図と文章では状況が把握しづらいことと、得られる結果が想像しづらいことから難易度は高い。状況が把握できれば解くことは可能だが、最後まで解ききることは難しいだろう。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化、気体の内部エネルギー |
熱サイクルと熱効率の標準的問題。誘導が丁寧なので基本的な知識があれば解ける。できれば完答したい。 |
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5 | 記述 | ★★☆☆ |
【電磁気】電流が磁界から受ける力、単振動 |
電流が磁場から受ける力と単振動の融合問題。やや難易度が高めだが、時間はかからない。6割くらいは取りたい。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,452名 | 449名 | 149名 | 401/650 | 61.6% |
2020年度 | 1,711名 | 435名 | 142名 | 404.8/550 | 62.2% |
2019年度 | 1,741名 | 444名 | 204名 | 357.8/550 | 65.1% |
2018年度 | 1,979名 | 436名 | 202名 | 351.8/550 | 63.9% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 93.3% | 93.1% |
2020年度 | 97.5% | 97.3% |
2019年度 | 94.0% | 93.9% |
2018年度 | 97.5% | 97.2% |