福岡大学医学部の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間70分。2020年度と比較すると、正解できるかが単語や熟語の知識の有無に左右される問題は減り、文法の理解、文構造の正確な把握が求められる問題が増えた。試験時間内にある程度余裕をもって解答できる量であることもあり、文法・語法の知識をきちんと身につけている受験生が順当に高得点を獲得できたと思われる。語句整序では部分的には2006年と全く同じ出題がなされるなど、過去問演習もしっかり行っておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
記述 |
★★☆☆ |
【短文】和訳 |
「感情は夢の内容に影響を与えるか」に関する英文。2020年度と同様に文構造自体は平易だが、下線部以外の英文が46語から91語へと2倍近く長くなった。また、 "sample" "emotional regulation" など、自然な表現で和訳することに苦戦したであろう表現が複数含まれていた。 |
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2 | 記述(選択式) | ★☆☆☆ |
【長文総合】内容一致 |
「動物の協力行動」に関する英文。本文は文構造、内容ともに読みやすい。選択肢も素直で、かつ例年と異なり選択肢の正誤を判断する根拠が本文の順番通りになっているなど、易化した。 |
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3 | 記述(選択式) | ★★★☆ |
【文法・語法】短文空所補充 |
2017・2018・2020年度と同様に「適していないもの」を選択する形式。2020年度ほどではないが、判断に迷う問題が含まれる。 |
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4 | 記述(選択式) | ★★☆☆ |
【発音・アクセント】語彙力 |
例年同様にアクセントのある母音の発音の異同を問う形式。若干難易度は上がった。 |
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5 | 記述(選択式) | ★★☆☆ |
【語句整序】和文あり |
例年通り、1語不要、6語の語句整序。近年は熟語知識を問う問題が増えていたが、2021年度は文法の理解を問う問題が多かった。 |
数学
試験時間90分。2020年と比較すると計算量は減り、若干易化した。ただし、方針に戸惑うような問題もあり、8割を取るのは難しい。第1問は6つ、第2問は4つの空所補充で、第3問は記述形式である。配点は空所で7割、記述で3割と推測される。第1、2問では、確率、数列、図形と式やベクトルなどの幾何的分野、データの分析、整数問題からの出題頻度が高い。第3問は決まって数学Ⅲの微積分(特に求積)から出題されている。2021年度は文言として求積という言葉はないが、減衰曲線とx軸とで囲まれる部分の面積である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 答のみ | ★★☆☆ |
【小問集合】指数方程式、二次関数の最大・最小、図形への応用 |
(ⅰ)対数を取りx+yの値を求めたあとは、、の一方を消去すればよい。対数をとることに気づけても、その後の方針で戸惑った受験生も多いかもしれない。1式目を()乗、2式目を10乗して指数を比較することでも求められる。 |
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2 | 答のみ | ★★☆☆ |
【小問集合】領域と最大・最小、絶対値を含む一次不等式 |
(i)領域における最大・最小の問題。絶対値の処理と、正確な作図が求められる。対称性を使うとよい。 |
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3 | 記述式 | ★★★☆ |
【積分法】数列・級数と定積分 |
(i)減衰曲線の最大・最小の問題。極大値・極小値について、が増加するごとに、の絶対値が-π倍されることに注目する。 |
化学
理科2科目120分。大問4つの形式は変化なし。計算量も多くなく、問われている内容も素直なものが多い。経験の差が出やすいのは大問1の問2と大問3だろうか。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述(一部選択) | ★☆☆☆ |
【小問集合】 |
例年通り、小問3題の形式。合金中のスズの物質量、ナフタレンの誘導化合物の異性体の数、電気分解において発生する気体の物質量を問う3題で、いずれも基本的なものであった。面倒に見える計算もすべて割り切れる数値設定になっており、安心して計算が進められる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【金属各論】 |
沈殿Aに感光性があることから AgCl を読み取ってほしい。それ以外の Zn2+ や Fe2+ は簡単だろう。計算も数字がきれいなのでしっかり計算したい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【反応速度・化学平衡】 |
入試問題としてよく出題される反応速度と化学平衡の典型題をすべて網羅したような出題で、解き慣れている受験生とそうでない人とで大きく差がつきそう。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【アミノ酸】 |
アミノ酸に関しての基本的な語句問題、およびペプチドに関する設問であった。ここでの失点はゼロにおさえたい。 |
生物
理科2科目120分。2020年度は例年よりもやや難しい内容となっていたが、2021年度は例年並みの難易度に戻った印象。基礎的な知識を問う設問が多いため、いかにミスを少なくできるが勝負。2021年度はオーソドックスなテーマが中心だったが、他大学に比べて出題範囲が広く浅いので、苦手分野を作らないように基礎固めをしておくことが対策になるだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫 |
非常に基本的な知識を問う設問ばかりなので満点を狙いたい。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の環境応答】筋肉と筋収縮 |
問6は2018年度にも類題が出題されている。問6の答え方に注意する以外はオーソドックスな設問ばかりなので高得点を狙いたい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】遺伝子発現の仕組み、物質輸送とタンパク質 |
問題文の条件をきちんと整理しつつ追うことができれば難しくはない。最後の考察問題に落ち着いて取り組むことができたかどうかで差がついただろう。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生殖と発生】カエルの発生、発生と遺伝子の関係 |
問われている内容に対して、与えられている条件が少ないため、問題文の誘導にうまく乗れるかどうかが差がつくだろう。 |
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5 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の多様性と生態系】物質循環とエネルギーの流れ、気候とバイオーム |
内容的には基礎的な設問が多いので、この分野の学習を後回しにせず、地道に取り組んできたかどうかで差がつくだろう。 |
物理
理科2科目120分。例年通り大問Ⅰ、Ⅱは選択式、大問3が記述(答のみ)。2020年度から引き続き解きやすい良問が多い。大問Ⅲの力学は2018年度入試の大問Ⅲの類題。テストの形式、傾向ともに他の理系学部と同じ。まとめて作成して、比較的難易度の高い問題を医学部を含む日程に割り振っているように見える。大問Ⅲの記述問題は医学部のみの問題でやや難易度が高い。くせのない良問が多いので、問題内容に関しては特別な対策の必要性は低い。大問Ⅲの記述の過去問に触れる程度で良いだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述(選択式) | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化、水圧と浮力 |
ピストンの変位に比例して圧力が減少する気体の状態変化。体積と圧力の関係が直線的に減少する。誘導に従って計算すれば正答が得られる。完答したい。 |
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2 | 記述(選択式) | ★☆☆☆ |
【電磁気】 |
平行板コンデンサーへの金属や誘電体の挿入と合成容量を求める問題。基礎的な問題なので、完答しておきたい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】 |
2018年度Ⅲの類題。質量の等しい2物体の衝突に関する問題。(3)をミスすると後に連鎖するので慎重に計算しておきたい。(4)、(5) は、e=1 の衝突では速度交換が起こることを使って手早く解きたい。(6)までは正解したい。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 2,107名 | 457名 | 179名 | 269/400 | 67.2% |
2020年度 | 2,518名 | 407名 | 111名 | 275/400 | 68.8% |
2019年度 | 2,543名 | 405名 | 207名 | 283/400 | 70.7% |
2018年度 | 2,608名 | 379名 | 144名 | 281/400 | 70.3% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 88.1% | 91.3% |
2020年度 | 89.1% | 93.9% |
2019年度 | 71.9% | 75.2% |
2018年度 | 82.1% | 83.0% |