関西医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間80分。2021年度は2020年度と同様全て長文のみという形式。ただし大問構成の大きな変化は関西医科大学においてはよくあることなので、前年度過去問を研究して試験に臨んでも、予想を超えた変化があることは想定しておこう。出題傾向で安定しているのは長文問題で、選択肢なしの適語補充問題が大きな特徴であり、事前に過去問を使ってある程度の出題パターンに慣れておくことが必要。内容一致問題は各設問文について正しければO、間違いならXを記入させるという形式で、判断に悩むものも含まれるが、基本的には本文の該当部分と付き合わせて順に検討すれば解答を導ける問題である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致、同義語、適語補充 |
「ドッグセラピー」に関する英文。語数は2020年度前期の大問Ⅲと同等。設問数は減少したが、出題形式は例年どおり。問1は内容一致問題、問2は下線部に該当する語句を抜き出す問題、問3は3か所の空所に入れるべき単語の組み合わせを選択させる問題、問4は2か所の空所に共通して入る単語を記述させる問題。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】語句整序、適語補充 |
「良質な睡眠のとり方」に関する英文。1,600語を超える長大な英文であるが、内容一致問題は設けられておらず、前後の内容から正答を導くことのできる設問が多い。問1は語句整序問題、問2と問3はそれぞれ選択肢4つをすべて使い切る空所補充問題、問4は語句の和訳問題。内容は平易で、受験生にとって取り組み易い内容。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、要旨・要約 |
「電子タバコが喫煙と禁煙に及ぼす影響」に関する英文。語数は2020年度前期の大問Ⅱと同等。内容は平易で、出題形式も例年通り。問1は内容一致問題、問2は空所に適語を入れる問題、問3は動詞を適切に活用変化して記述させる問題、問4はFDAという略語が何を指すか記述させる問題。 |
数学
試験時間90分。2018年度まではほぼ空所補充、2019年度はすべて記述形式、2020年度は答のみが7割で記述が3割、そして2021年度は答のみが3割で記述が7割、と近年は出題形式が一定していない。2021年度は記述の割合が増えたものの答案用紙の記述スペースは広くはなっておらず、変化に対応し切れていない印象も拭えない。出題形式については今後も一定しない可能性がある。記述形式が含まれるようになっても、以前と同様に論証力よりも計算力を必要とする傾向が強い。また、問題ごとの難易の差が大きいことが多く、易しい問題を取りこぼしなく得点したい。頻出分野は確率・数列・幾何的問題など。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 答のみ | ★★☆☆ |
【小問集合】図形への応用、整数の性質の活用、条件付き確率 |
設問は3つ。(1)は平面ベクトル。三角形の外心、垂心、重心の位置関係を知っていると作業が省ける。(2)は整数問題。平方完成により絞り込めたかどうかで差がつく。(3)は条件付き確率。ある病気に罹患しているかを判定する試薬の問題。(1)(3)は典型題なので落とせない。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【複素数平面】ド・モアブルの定理 |
1の7乗根についての典型題。解いた経験の有無で大きく差がつく。最後の設問は難易度が高い。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【数列】2項間の漸化式、いろいろな数列の和 |
典型的な式変形で簡単な漸化式に持ち込める。後半の和の計算は誘導をくみ取れるかで差がつきそうだが、できれば完答を目指したい。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【積分法】媒介変数による表示、曲線とy軸との面積、回転体の体積 |
パラメータ表示された曲線について増減を調べ、囲まれた面積、回転体の体積を求める問題。難しくはないが、作業量がかなり多く、完答するのは容易ではない。 |
化学
理科2科目で120分。大問4題で形式も2020年度からの変更はない。文章が長くなってページ数が増えたが難易度は易化した。大問Ⅰはメタンハイドレートを題材にした問題だったが中身は標準的。大問Ⅱは前半が溶解熱の測定実験、後半が金属陽イオンの定性分析で小問一問一問が独立しており、連鎖的に間違えないような配慮が見られた。いずれも内容は標準的。大問Ⅲはアミノ酸の配列決定で標準的。大問Ⅳは化学平衡、溶解度積、沈殿滴定だった。溶液の体積変化に注意は必要だったが中身は標準的。全体的に解きやすい問題が多かったので8割以上を目指してアドバンテージを稼ぎたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論化学】炭化水素、気体、熱化学、燃料電池 |
メタンハイドレートを題材にした問題。題材に馴染みのない受験生も一定数いたかもしれないが、各問で問われている内容は標準的。問3と問5は少々煩雑な計算が必要であった。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論、無機化学】反応熱の測定、金属陽イオンの定性分析 |
前半が中和熱と溶解熱の測定実験。後半が金属陽イオンの定性分析の問題。前問で誤答しても大丈夫なようになっているのは現役生に対する配慮かもしれない。問3の文字式を答える問題は関西医科大学では頻出の問題形式である。問5の反応式の問題以外は標準的な内容なのでここで得点を稼いでおきたい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【有機化学】アミノ酸の配列決定 |
ジペプチドの構造推定であり、標準的な内容。なお、凝固点降下のデータに基づく分子量に少し誤差があるが、先に分子量を求めてそこに質量組成をかけても分子式は決定できる。アミノ酸の決定も難易度は高くなく、ほとんどの受験生が解けたと思われる。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論化学】化学平衡、溶解度積、沈殿滴定 |
【実験1】に関する設問は受験生に馴染みの薄い物質が登場していたが、問われている内容は平易で完答したい。【実験2】に関する設問は硫化水素の電離平衡と溶解度積の複合問題で、どの受験生も一度は解いたことのある取り組みやすい設問だっただろう。【実験3】に関する設問もテーマとしては頻出だが、クロム酸カリウム水溶液を加えたり、硝酸銀水溶液を滴下したりすることで水溶液の体積が変化していることに注意して計算したい。 |
生物
理科2科目で120分。2020年度に比べるとかなり易化した。取り組める問題が増え、安心した受験生も多かったことだろう。とはいえ、大問Ⅳのようないわゆる典型題ではない出題が特徴的であることに変化はない。かろうじて、対策を講じられるのは小問集合だろう。直前には幅広い分野について、やや細かい知識を問う小問集合にあたっておくと良い。また、解答の仕方に細かい条件がつくのは例年のことなので、そういった形式に慣れておくことは必要だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【小問集合】 |
例年に比べるとかなり解答を選びやすくなっているため、ここはできるだけ確実に得点しておきたいところ。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】呼吸とそのしくみ、発酵 |
非常にオーソドックスな計算問題なので、方針を立てるのは易しいが、最後まで解ききるには計算力が求められる。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】バイオテクノロジー、生殖の方法と比較 |
前半の生殖に関する問題は細かい知識が求められるが、後半のPCR法の問題はパズル的要素が強く、見た目よりも取り組みやすい。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【生殖と発生】伴性遺伝と限性遺伝、DNAと突然変異 |
定型的な問題ではないので、設問ごとに条件を確かめながら問いていくのに手間がかかる。 |
物理
理科2科目で120分。例年に比べて易化。問題数は変化なし。グラフの読み取りや表の読み取りの割合がかなり増え、共通テストの方針に寄せた出題となった。例年、難易度の高い問題が多く出題されていたが、2021年度は大問Ⅰ以外は難易度が低かった。また、公式導出のような理論の問題は出ず、グラフ描図、グラフや表の読み取りなどの作業が多くなった。原子の出題があったので、現役生配慮で問題の難易度を低くしたわけではないと考えられる。2022年度も易化傾向が続く可能性がある。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【力学】剛体のつり合い、摩擦力 |
剛体の2 カ所に摩擦力が働いており、剛体が滑り始める直前以外はF1、F2の値が定まらない。設定が複雑だが、問題の誘導に従って解くことで正解に到達できるようになっている。計算に手間取った受験者も多かったと思うが、他の問題にあまり時間がかからない分、この問題の出来で差がつくだろう。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【電磁気】コンデンサーの接続、電気回路 |
コンデンサーの接続の基礎的問題。完答しておきたい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【波動】音波の性質、気柱の共鳴 |
問題文の内容を理解して、表からデータを読み取らせる作業がある。音楽の知識の有無で差がつくだろう。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【原子】原子とスペクトル、粒子性と波動性 |
発光ダイオードの問題。電流電圧特性、発光開始電圧と振動数の関係のグラフを読み取って必要な値を出す。原子分野の基本的知識で対応することができる。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,612名 | 312名 | 110名 | 272/400 | 68.0% |
2020年度 | 1,710名 | 363名 | 149名 | 246/400 | 61.5% |
2019年度 | 1,916名 | 359名 | 136名 | 249/400 | 62.2% |
2018年度 | 1,757名 | 364名 | 148名 | 234/400 | 58.5% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 88.8% | 92.7% |
2020年度 | 94.8% | 95.2% |
2019年度 | 91.1% | 92.0% |
2018年度 | 91.4% | 93.3% |