近畿大医学部の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間60分。2020年度までの形式・大問構成から変更があり、設問文が全て英語表記となった。文法分野については、これまで伝統的に出題されていた正文選択と語句整序が削除され、文法問題は実質的に空所補充のみとなった。もっとも、2022年度以降も出題形式が変更する可能性があること、そして形式の変化に関わらず幅広い文法知識が必要であることには留意しておきたい。読解分野については、本文以外に英語で書かれた設問まで正しく読み取る必要があることや、大問(H)を除き、設問の配列が問題文の段落順と一致していないことにも注意が必要である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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A,B,C |
マーク | ★★★☆ |
【文法・語法】空所補充、同義語 |
伝統的な近畿大学医学部の語彙問題を踏襲したものであるが、以前は短文の空所補充のみであったのに対し、同義語選択問題や、2020年度までの大問4のような文章中の空所補充問題が新たに出題された。純粋に知識だけを問う問題と、知識に加えて英文の構造・文脈を踏まえることで正答を導くことができる問題があった。 |
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D,E | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】同義語、内容一致、要旨・要約 |
「脳波を解析して文章にする新技術」に関する英文。(D)の同義語選択は、下線部および選択肢のいずれも標準的なレベルの語彙ばかりで取り組みやすいものであった。(E)の内容一致についても、文中に明確な根拠があるため解きやすいものであった。 |
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F,G | マーク | ★★★☆ |
【長文総合】同義語、内容一致 |
「スティーブン・ホーキングの功績」に関する英文。(F)の同義語選択は、一部の語彙が受験生にとって馴染みのないものが含まれており、判断に迷うものもあった。(G)の内容一致については、問題文や選択肢を丁寧に読まないと誤答してしまう問題も含まれていたため、本文を読めていたにも関わらず思わぬところで失点しまう受験生もいたと思われる。また、選択肢には「全ての選択肢が正解である」というものも含まれていた。 |
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H | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】内容一致 |
「超未熟児の生存率の上昇と成長時に抱える健康問題」に関する英文。文章量は788語であり、昨年度の大問5の問題の語彙数に近かった。他の長文の大問とは異なり、設問ごとに解答根拠となる段落が明示されているものが多く、総じて取り組みやすいものであったと思われる。 |
数学
試験時間60分。問題量は2020年度とほぼ同程度だが分量は多い。形式面では変化はない。出題分野については、2020年度前期では数列や整数といった分野に偏っていたが、今回は特に偏重はなかった。頻出分野は数列、平面図形・空間図形、数Ⅱ微積など。それらに続いて、確率、三角関数もしばしば出題される。頻出分野について演習を重ね、部分点のない第1、2問で必要となる計算力、第3問に対する記述力を磨いておくことが重要となる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 答のみ | ★★★☆ |
【確率】確率とその基本的な法則、約数と倍数 |
2つの箱から取り出した数を並べて作った2つの数の最大公約数に関する確率の問題である。途中の設問までは解法に工夫の余地がある。最後の設問まで完答するには結局すべて調べ上げた方が速いが、後回しにして他の大問に手を付けるべきである。 |
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2 | 答のみ | ★★☆☆ |
【数列】微分係数、自然数の和・Σの計算、いろいろな数列の和 |
極限で与えられた条件から2次関数を決定する。ここをミスするとその後のすべての問題に影響するため慎重さを要する。その後は数列が問題のメインとなる。最後の格子点の個数を求める問題では、共通因数でくくるなど計算は工夫したい。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【平面上のベクトル】直線のベクトル方程式、三角形の比の定理、余弦定理 |
三角形の内外分点に関するベクトルの問題。よくある題材であるが、やや典型題とは異なる問い方をしており、戸惑った受験生は多かったのではないだろうか。最後の設問が難しい。 |
化学
理科2科目で120分。大問は3つだが各大問ごとテーマの異なる問2つずつに別れているという形式は変わらず。例年同様、分量が多く時間が足りず高得点の狙いづらい試験問題だった。特にⅡで多くの試験時間を費やしてしまった受験生は多かったのではないか。ⅠとⅢで得点をかき集めたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論化学】滴定曲線とpH 【無機化学】無機反応式 |
【理論化学】アンモニア水を塩酸で滴定する際の、滴下量ごとのpHの計算問題。アンモニアの電離平衡、塩化アンモニウムの加水分解平衡、アンモニアとアンモニウムイオンの緩衝溶液、塩酸過剰の場合など、pH計算に関する主要なパターンがすべて問われている。 |
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2 | 記述 | ★★〜★★★☆ |
【理論化学】気体、蒸気圧 【理論化学】リチウムイオン電池 |
【理論化学(気体、蒸気圧)】蒸気圧などの発展的な内容で計算も重かった。水素燃焼後の容器内の物質が気体Aと水のみであることに気付けないと先へ進めない。また、有効数字のルールを守って手際よく正確に計算する必要があった。 |
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3 | 記述 | ★★〜★★★☆ |
【有機化学】酸化開裂 【有機化学】有機各論 |
【有機化学(酸化開裂)】アルケンをO3やKMnO4で酸化分解してその生成物から元の化合物の構造を推定する問題は最近の医学部入試では頻出なので、対策できている受験生は多かっただろう。 |
生物
理科2科目で120分。大きな傾向の変化は見られない。手間のかかる大問Ⅱをあとに回して、それ以外の大問をいかに手際良く処理できるかで差がつくだろう。例年どおり、知識系の論述問題を手早く処理できる練習をしておくことが対策としては有効だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の体内環境の維持】体液の浸透圧調節、ホルモンと内分泌腺 |
基礎的な知識を問う設問がほとんどで取り組みやすい。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫の応用・疾患 |
論述問題を解答するために、かなり長いリード文を手際よく整理しながら読解する能力が求められる。論述問題はかなり難しいが、語句を答える問題は簡単なのでそこで確実に得点しておきたい。この大問では差はつきにくいだろう。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】DNAの複製 |
よく知られた実験に関する問題だが、計算問題で指定される条件が典型題と異なるため、その場での対応力が求められる。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】窒素同化 |
化学反応式を問う設問がやや難しく、空所補充問題にもやや答えにくい解答が含まれるものの、論述問題は典型的な知識問題で取り組みやすい。こうした論述問題の典型題できちんと得点できるかどうかで差がつくだろう。 |
物理
理科2科目で120分。2020年度より問題の難易度は下がっているが、計算や描図などの作業が多く時間がかかる。全体として高い処理能力が要求される。また、2021年度の推薦入試からは大きな変更点として、問題用紙のサイズが小さくなり冊子になった。2020年度までは大問3問とも空所補充形式であったが、2021年度は穴埋めの問題はほとんど無くなった。データを読み取ってグラフを描く。表のデータから必要な物理量を求めたり、適切な物理量を選んだりするなど、2020年度よりもさらに入試改革を意識した出題の色が濃くなっている。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【力学】単振動、摩擦力 |
バネにつながれた物体と、摩擦力を受ける物体の単振動の問題。2020年度前期でも出題されたテーマ。(1)、(2)は標準的な内容なので完答したい。(3) の計算は煩雑になりやすいので、単振動のエネルギー保存則を用いて手早く計算したい。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】半導体の特性、電気回路 |
2021年度推薦でも出題されたテーマ。回路が複雑なので丁寧に計算式を立てて解いていく必要がある。(2)の2で要求された形に式を変形するのは手間がかかる。(3)の1、2には影響がないので、後回しにした方が良いだろう。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【原子】光電効果、粒子性と波動性 |
発展的な知識や複雑な考察は必要なく、光電効果の標準的な問題と言える。ただ、大問3 全体の計算量はやや多く、完答するのは難しいだろう。小問同士は連続性が乏しく、連鎖的に失点することは少ないので極端な低得点になることは考えにくい。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,494名 | 223 | 96名 | 233/400 | 58.3% |
2020年度 | 1,172名 | 233 | 101名 | 227/400 | 56.8% |
2019年度 | 1,250名 | 253 | 103名 | 222/400 | 55.5% |
2018年度 | 1,570名 | 241 | 125名 | 227/400 | 56.8% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 87.3% | 87.8% |
2020年度 | 97.3% | 98.1% |
2019年度 | 92.1% | 95.1% |
2018年度 | 89.6% | 95.1% |