大阪医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
試験時間80分。大問Ⅰは英文和訳3問と50字説明問題、大問Ⅱは英文和訳3問、大問Ⅲは和文英訳3問という2020年度前期と同様の形式。昨今の私立医学部では珍しい記述のみの問題構成であり、国公立志望者にとって特別な試験対策があまり必要ではない。実際に国公立医学部受験者が滑り止めとして受験する傾向にあるため、答案に求められる完成度は非常に高いと予想される。大問Ⅰは18世紀末におけるアメリカでの黄熱病流行に関する英文で、医学系のテーマが出されたのは2016年度前期に出題されたスノウによるコレラ対策に関する英文以来である。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳、要旨・要約 |
「18世紀末のアメリカにおける黄熱病の流行」に関する英文。下線部および解答根拠となる英文に含まれる語句は標準的だが、関係詞節の訳出に工夫が求められる箇所もある。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【長文総合】和訳 |
「子供に公平な機会をもたらすために取るべき施策」に関する英文。下線部の英文に含まれる語句には一部専門的なものもあり、並列関係や付帯状況のwithなど、訳出に工夫が求められる箇所もある。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【英訳】下線部英訳 |
「AIの進化」に関する日本文の英訳。構造も必要な語彙も迷うところは少なく、取り組みやすい。標準的な英訳の練習を積んでいれば高得点も望める出題。 |
数学
2020年前期と比較すると、難易度は同程度であるがやや作業量が少ない。数年にわたり徐々に易化している。証明問題の比重が高い。基本的な数学力が試される差のつく出題が多い。全問記述式であるから、しっかり説明する訓練が必要だろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【積分法】定積分と不等式 |
簡単な不等式の証明をさせた後、それを利用して積分計算をする問題。計算するだけの問題であり難しくはない。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【確率】条件付き確率 |
箱から札を取り出す試行の確率、および条件付き確率の問題である。条件付き確率をしっかり計算できるかどうかだけがポイントである。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【複素数平面】2項間の漸化式、ド・モアブルの定理 |
ごく基本的な漸化式と、複素数の融合問題。各設問の考え方は典型的なものばかりだが、完答するには総合的な力が必要。背理法による証明問題も含む。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【微分法】最大・最小の応用、空間図形、相加・相乗平均 |
直円錐とそれに内接する球の問題。図形的な考察をもとに三角比を使いこなせないと前半が突破できないだろう。この問題で差がついたと思われる。 |
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5 | 記述 | ★★★☆ |
【整数の性質】 |
二項係数と整数問題。前半の誘導をうまく使えばよいが、きちんとした論証はやや難しい。 |
化学
理科2科目で120分。大問Ⅰは気体の状態方程式に関する出題で、内容自体は難しくなかったが、計算の分量が多かった。大問Ⅱはリチウムイオン電池に関する問題で2020年度前期に引き続き電気化学からの出題になった。対策の有無で差がついたと思われる。大問Ⅲの電離平衡に関する問題は誘導に乗れば難なく解く事が出来る問題だった。大問Ⅳはアミノ酸、タンパク質からの出題で難易度は標準的だった。大問Ⅰの計算の分量が多く、リチウムイオン電池の問題は初見の受験生は面食らったかもしれないが全体としては標準的な内容だった。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【理論化学】気体 |
一酸化炭素を燃焼させる反応において、状態方程式を使って温度、圧力を計算したり、発生する熱による上昇温度を計算する出題である。内容的には難しくないのだが計算が面倒。くじけずに4桁で計算し続けないといけない。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【理論化学】リチウムイオン電池 |
内容自体はその場で問題文をよく読んで指示通りに考えていけば出来る問題ではあるが、リチウムイオン電池の問題が初見だった受験生は少し面食らったかも知れない。リチウムイオン電池は近年の医学部入試では流行分野の一つである。それらの演習をしっかりと解きこんできたかどうかで差がつく問題であろう。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【理論化学】電離平衡(pH 指示薬) |
pH指示薬の変色域について電離平衡から考察する問題であったが、問題文を読めば何をすればよいのかは理解できたと思われる。問4、問5も中和滴定の際の指示薬についての知識があれば解けるので易しい。この問題については落とさずにすべて正答しておきたい。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【有機化学】アミノ酸・タンパク質 |
アミノ酸・タンパク質の分野の基本的な用語や検出反応、およびペプチドの立体異性について問う設問であった。問3で「酸化によりHが2つ抜ける」⇒ ジスルフィド結合の形成、と読み替えられたかどうか。問6で、Xがどのような構造であれその鏡像異性体(鏡に写した立体構造)は1つしかないことに気づけたかどうか。差が出るとすればそのあたりだろう。 |
生物
理科2科目で120分。受験生が学習を後回しにしがちな分野からの出題が多いものの、内容的には標準レベルの設問がほとんどであるため、高得点勝負になっただろう。教科書に登場する内容については、細かい部分まで理解を深めておく必要がある。また例年、論述問題は解答欄が狭い場合が多いため、要点をコンパクトにまとめる練習をしておこう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】呼吸とそのしくみ |
ツンベルク管の実験はかなり古典的なテーマで、最近は扱われることが少ないため、内容は標準的だが取り組みにくいと感じた受験生は多かっただろう。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生殖と発生】動物の受精 |
ウニの受精に関しては、概略しか頭に入っていない受験生が多く、この大問も内容は標準的だが差がついたかもしれない。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生物の体内環境の維持】免疫、動物の組織と器官 |
大問全体は易しめなので、学習が手薄になりがちな物理的・化学的防御についてきちんと学習できていたかどうかで細かく点差がついただろう。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生命現象と物質】DNAの複製、遺伝子発現の仕組み |
非常に基本的な設問ばかりなので、満点を狙いたい。 |
物理
理科2科目で120分。問題数は例年30問強で2021年度は22問とかなり減っている。1 問あたりの作業量が多く、時間的に厳しいのは例年どおり。今回初めて大問Ⅳの小問集合が4問中3問選択式になった。内容は例年出題している問題の類題である。解答において、単位を付すかどうか、解答用紙の単位用の括弧の有無などは年度よってあったり無かったりするので、単位には気をつけておきたい。大問Ⅲのような数値計算でミスを連鎖し易い問題は今までにはあまり出題されていなかった。他大学と同様に新しい教育課程を意識したものであると考えられる。2022年度以降も注意しておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】円運動、電流が磁界から受ける力 |
円錐振り子、ローレンツ力についての出題。全体として標準的。特に(1)から(4)は非常に典型的なので、確実に得点したい。(5) と(6)は磁場の向きや電荷の符号に注意しつつ、力のつり合いの式のどこが変わるかに気をつければ効率よく解くことができる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【電磁気】電磁誘導と誘導起電力、キルヒホッフの法則 |
磁場中を回転する導体棒に生じる誘導起電力についての出題。(1)は典型的な問題で完答したい。(2)は電流の経路を正確に把握するために、回路図を描いて取り組みたい。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【波動】音のドップラー効果、運動の表し方 |
ドップラー効果、音の伝わる速さについての出題。問われている個々の知識は基本的であるが、(2)の設定は複雑であるため、図を描くなどして混乱しないように作業をしたい。完答しにくい問題。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【小問集合】ボイル・シャルルの法則、電力損失、次元、折れ曲がった棒の重心(4問中3問選択) |
大阪医科大学の小問集合でよく出題されるテーマが4問出題された。4問とも標準的な難易度だったので過去問演習をしてきた人は解きやすかっただろう。例年通り電力輸送が出題されたが、2021年度は現役生への配慮のためか、初めて小問4問のうちから3問を選択する形式となった。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,399名 | 203名 | 158名 | 263/400 | 65.7% |
2020年度 | 1,663名 | 204名 | 164名 | 249/400 | 62.2% |
2019年度 | 1,656名 | 207名 | 167名 | 270/400 | 67.5% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 85.6% | 85.6% |
2020年度 | 100.0% | 100.0% |
2019年度 | 91.5% | 93.7% |
2018年度 | 93.3% | 99.1% |