聖マリアンナ医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
英・数で150分。2020年度までは試験時間90分であったが、2021年度は数学と合算で150分という変則的な試験時間であった。それに伴い大問4が削除されたが、大問1〜3の出題形式および難易度に大きな変更はなく、従来と同様の対策で十分に通用したと考えられる。数学と合同の試験となったことで、英語にかかる時間を短縮し数学にじっくり取り組むという戦法をとることが可能だが、2022年度は再び英語・数学で別々の枠となることが発表されている。もともと90分という時間は、記述問題が多いことを考慮しても長めの設定であったため、ある程度の力のある生徒であれば時間が不足することはないだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 |
記述 |
★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、内容説明、文整序、文挿入 |
「ニューヨークに鳴り響いた謎の音の正体」に関する英文。例年通り、内容説明問題のウェイトが高い大問であった。中には、ironicallyという語に対して「どういった点で皮肉なのか」を説明させるなど、文章の表層的読解だけでは解答に困るような問いも見られた。 |
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2 | 選択 | ★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、内容一致、文整序 |
「生物の雌雄モザイク(雄・雌両方の性的特徴を併せ持つこと)」に関する英文。例年通り、すべて選択式問題から成る大問であった。生物用語が多く用いられているが注は付されていないため、関連した語彙をどの程度知っているかが文章の理解度を大きく左右するだろう。 |
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3 | 選択 | ★★☆☆ |
【会話】適文補充 |
2020年度に引き続き、「与えられた状況において発するのに最も適切な台詞を選ぶ」というタイプの問いが出題された。会話表現の問題と見せかけて、実際には単なる文法問題の色が濃い。文法的にあり得ない文を取り除いていくことで正答が得られる。 |
数学
英・数で150分。2020年度入試に比べると易化した。計算量もそれほど多くない。2021年度は試験時間が英数で150分という特殊な年であったこともあるだろう。ここ数年は全体的な難易度が下がっているが、易しい問題と取り掛かにくい問題のメリハリがはっきりしている年も多々ある。なお、2021年度より後期試験が始まった。また、2022年度は2020年度以前と同様の数学のみで90分という時間割に戻るので注意したい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【小問集合】確率の基礎計算、絶対値を含む二次関数 |
(1)4つのさいころを同時に投げるとき、出た目の積が3の倍数となる確率を求める問題。基本的で絶対に落とせない。(2)絶対値を含む二次方程式の解の個数に関する問題。定数分離をして共有点の個数を考えればよい。(1)と同様に落とせない。 |
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2 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【いろいろな式】定積分、恒等式、自然数の和・Σの計算 |
定積分を含む恒等式の問題。与えられた多項式が4次式で計算がやや難儀ではあるが、必要な展開公式等が与えられており、その分計算量が減らせる。考え方が難しい問題はなく、計算ミスに注意したい。 |
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3 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【データの分析】データの散らばり、データの相関 |
データの分析の基本問題。本分野で出てくる公式等をしっかりと押さえられていれば難しいところはない。落とせない問題である。 |
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4 | 答のみ | ★★☆☆ |
【整数の性質】整数の性質の活用 |
ax+by(a,bは互いに素)で表される整数の集合に関する有名問題。参考書などでも必ず出てくる。ただ経験がないと厳しいので、勉強に対する姿勢が問われた問題でもある。 |
化学
理科2科目で150分。2020年度までは大問3〜4問構成で、半分以上は有機化学、特に高分子化合物からの出題であったが、2021年度はCOVID-19の影響か、有機化学からの出題はほぼなかった。また、理論分野の計算問題に関しても易化しており、高得点での争いになったと思われる。この傾向が今後続くかは不透明なため、聖マリアンナ医科大学を志望する受験生は、有機化学や糖類・アミノ酸・タンパク質も含め、十分に対策をしておく必要があるだろう。また、標準的な論述問題も数問出題されるので、用語をただ覚えるのではなく、どのような現象が起こっているのかを、分子レベルでしっかりと理解しておくことが望まれる。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱化学方程式】燃焼熱、生成熱、エネルギー図 |
熱化学方程式に関する出題である。内容は標準的だが、エネルギー図を描かせる設問があり、エネルギー図に慣れていないと解答が難しかったと思われる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【無機物質】【化学平衡】気体の製法と性質、ルシャトリエの原理、化学平衡の法則 |
気体の製法および化学平衡の法則に関する出題である。頻出問題であり、完答を目指したい。 |
生物
理科2科目で150分。用語を答える問題と論述問題を中心に出題される。論述問題では、以前は字数制限のつくものが多かったが、最近は行数制限がつくものが多い。2021年度も行数制限であった。また、出題形式は、計算、描図、与えられた語を使った論述など多彩である。問題量は中程度であるが、記述式のため時間を要する。基本〜標準的な問題が多いが、前例のないオリジナルな出題が見られることもある。論述問題への対策が必要不可欠であり、日頃から生命現象について言葉で説明するなどの練習に取り組んでおきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物と遺伝子】体細胞分裂、遺伝子発現の仕組み |
細胞周期と、それに関する遺伝子発現について。G1期の役割がなんであるかを事前に知っていれば、そう抵抗なくできたであろう。ただ、細胞骨格など細かな知識を融合して解く必要があり、易しいとまでは言えない。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の体内環境の維持】ホルモンと内分泌腺、肝臓のはたらき |
肝臓の機能に関する問題。様々な動物の窒素化合物の排出物を問う問題はやや細かな知識だったが、他は典型的な問題である。インスリンを経口投与しても効果がない理由は、落としたくない論述問題だった。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の多様性と生態系】環境要因と光合成、生態系の保全 |
光合成曲線と、大気の気温に関する問題。光合成産物の質量計算は典型問題であるから、しっかり解答したい。二酸化炭素濃度の考察や温かさの指数の計算は、医学部受験者が苦手であろうが、難易度自体は易しい。 |
物理
理科2科目で150分。大問1は、数値もしくは数式の穴埋め問題からなるやや易〜標準レベルの小問集合。大問2〜5は、標準レベルが中心の記述式問題。導出過程の記述や単位の記入を求められることが多く、グラフの選択問題が出題される年もある。出題分野の偏りはなく、原子分野からも毎年出題されている。全体として時間に対する分量が多いので、短時間で解ける問題から着手する姿勢が必要。知識問題が出題されることがあるため、教科書を一通り読んでおくとよい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | 記述 | ★★☆☆ |
【小問集合】運動量と力積、交流回路、気体分子の運動と圧力、鏡やレンズの性質 |
12問中10問は取りたい。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【力学】単振動、円運動 |
振動についての出題。慣性力や遠心力を単振動と絡めた典型問題。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【電磁気】交流回路、半導体の特性 |
交流回路とダイオードについての出題。[5]までは落とせない。[6]〜[8]は解いたことがあるかどうかで差がつく。 |
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4 | 記述 | ★☆☆☆ |
【波動】薄膜の干渉 |
斜めに入射した光の薄膜干渉についての出題。[A]は誘導があり易しい。[B]の計算で落とさずに完答を狙いたい。 |
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5 | 記述 | ★★☆☆ |
【原子】原子核の崩壊と放射線、核反応と核エネルギー |
原子核と核反応についての出題。原子核の単元をフォローしていれば標準的な問題だが、計算力が試される。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,899名 | 489名 | 119名 | 非公表 | - |
2020年度 | 1,993名 | 523名 | 129名 | 非公表 | - |
2019年度 | 1,763名 | 507名 | 130名 | 非公表 | - |
2018年度 | 3,095名 | 517名 | 130名 | 非公表 | - |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 95.8% | 96.5% |
2020年度 | 95.6% | 95.4% |
2019年度 | 93.8% | 96.5% |
2018年度 | 88.2% | 91.7% |