埼玉医科大学の傾向分析2021
2021年度一般入試問題分析
英語
2021年度は試験時間が70分に短縮されたことで、長文が1つ減り5題構成となった。しかし依然として1題を15分程度で処理しなければならず、時間的に厳しい試験であることには変わりない。例年通り、最後の大問だけ他の2倍ほどの文章量であったため、時間配分には注意が必要。大問4が医学部志望者にとっては非常に読みづらい内容であったため、2020年度に比べるとやや難化と言える。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★☆☆☆ |
【文法・語法】文法・語法、語句整序 |
文法・語法に関連した適語補充、および語句整序問題。基本的なレベルのものばかりであった。一問たりとも落とさないのが望ましい。 |
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2 | マーク | ★☆☆☆ |
【長文総合】適語補充、内容一致 |
「各国の平均寿命の今後」に関する英文。グラフ入りの記事とそれを踏まえた会話との融合問題に見えるが、実質的には別個の問題である。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、内容一致 |
「気分が的確な判断に与える影響」に関する英文。「気分のよさ」と「判断に与えられた時間」という2つの尺度で比較を行っている点に注意する。 |
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4 | マーク | ★★★☆ |
【長文総合】適語補充、同義語、内容一致 |
「文学におけるポリフォニーという概念」に関する英文。自然科学の分野とは対極に位置する文系寄りの内容であり、医学部受験生にとっては非常に読みづらい内容であっただろう。一方、次の大問5は身近なテーマであろうから、ここで時間を消費せず優先順位を見極められたかどうかが合否を分けることになるかもしれない。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
【長文総合】適語補充、同義語、内容一致 |
「死亡診断を行う医師」に関する英文。4本の長文の中では最も医学寄りの内容であり、分量的には多いものの比較的取り組みやすかっただろう。ところどころに難しめの語彙が使われているが、問題を解くにあたって差し支えるものではないため、細部でいちいち立ち止まらず全体の論旨をつかむ方にウェイトを置くことが求められる。 |
数学
2020年度入試と出題形式はほぼ同じ。ただし、試験時間が50分になったことへの配慮か、計算量もほとんどなく、解き方がわかれば正解までたどり着くことができる問題ばかりになったという印象がある。また、毎年必ず出題される確率の問題がなくなった。対策は特に必要ないだろう。医学部受験の勉強をしていく過程で、このレベルの問題は解けるようになっているはずである。強いて言えば、黄色チャートレベルを確実にできるようにしておくことである。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★☆☆☆ |
【小問集合】無理関数、共有点の個数、相加・相乗平均 |
(1)は無理関数と絶対値で表された関数の基本問題である。定数aの場合分けを考える必要があるが、マーク形式の性質上、判別式を考えて、簡単に答えを出すことができる。(2)は相加・相乗平均に関する基本問題。落ち着いて立式するだけである。 |
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2 | マーク | ★☆☆☆ |
【積分法】積分とその基本的な性質 |
微積分の基本定理に関する基礎問題。計算をするだけである。確実に点数を取りたい。 |
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3 | マーク | ★☆☆☆ |
【図形と計量】余弦定理、正弦定理 |
旧センター試験レベルの図形と計量に関する問題である。やや計算が複雑なところがあるが、マーク形式であることから、計算ミスも防げるだろう。 |
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4 | マーク | ★☆☆☆ |
【数列】3項間の漸化式 |
感染のトピックスを使った3項間漸化式に関する問題。立式のところだけ少し考えるかもしれないが、そのあとは極めて平易な問題。完答が必要。 |
化学
2020年度に比べて試験時間が10分減少した。難易度は易〜標準レベルがほとんどで、2020年度よりも易化。問2の反応速度に関する設問は計算が煩雑ではあるが、丁寧に解いていけば正解は導ける。埼玉医科大学の入試問題は理論分野の比重が大きいのが近年の特徴である。また、近年では頻出問題だが問題文をよく読まないと間違えやすい出題など、読解力・思考力が試される設問も見受けられる。そのため、典型問題の解法に熟知しておくのはもちろんであるが、時間配分や問題の取捨選択にも気を配れるようにしておきたい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | マーク | ★☆☆☆ |
【物質の構成・非金属元素】原子の構造、周期表、ハロゲン |
原子の構造とハロゲンに関する出題である。基本的な内容であり、完答しなければならない。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【化学平衡】反応速度、活性化エネルギー、アレニウスの式 |
反応速度と活性化エネルギーに関する出題である。問1の計算は少し煩雑である。また、問3のアレニウスの式を用いた活性化エネルギーの算出は解いたことがないと計算の方向性が立てづらかったであろう。 |
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3 | マーク | ★☆☆☆ |
【芳香族化合物】アニリン、C8H10の構造異性体 |
芳香族化合物に関する出題である。C8H10の構造異性体は有機化学では頻出の内容であり、完答しなければならない。 |
生物
2020年度や2016〜2018年度は大問6題であったが、2021年度は、2019年度と同様に5題に戻った。また、マーク数は2020年度45、2019年度54、2018年度47、2017年度46、2016年度54であったが、2021年度はマーク数23と、これまでよりも半減した。しかし、考察問題や計算問題などで時間のかかる問題が多く、問題の分量は例年通り多いので、時間内に解答するのはやや困難であったと思われる。特に、2021年度から理科2科目の解答時間が10分短縮されたこともあり、解答速度が得点に如実に表れる。よって、日頃から速く解くことを意識し、そのような訓練をしておくとよい。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | マーク | ★★☆☆ |
【生命現象と物質】遺伝子発現の仕組み、遺伝情報とタンパク質の合成 |
抗体の働きについての実験考察問題は、長い実験の説明文から必要な情報を正確に読み取り、整理することができたかで差がついたと思われる。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【生殖と発生】ウニとイモリの発生、発生と遺伝子の関係 |
ウニとカエルの発生とショウジョウバエの頭尾軸決定についての基本事項を問われており、失点できない。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【生物の環境応答】ニューロンの興奮、反射・興奮の伝達経路 |
標準的な知識問題を中心に問われており、興奮の伝導と伝達のしくみがきちんと理解できていれば取り組みやすかったであろう。 |
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4 | マーク | ★★☆☆ |
【生物の環境応答】刺激に対する植物の反応 |
緑葉内におけるジベレリン量とジャスモン酸量の増減による遺伝子発現の制御に関する考察問題は、ほとんどの受験生にとって馴染みがないテーマかつかなり複雑なしくみであることから、大問1以上に情報の読み取りと整理が難しかった。 |
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5 | マーク | ★★☆☆ |
【生態と環境】物質循環とエネルギーの流れ |
生態系の物質収支に関する典型問題。正確に計算し、確実に得点したい。 |
物理
例年、難易度は「標準〜やや難」、問題量は「非常に多い」。2021年度は例年通りの難易度だった。試験時間は理科2科目100分が90分に変更。大問3問のうち2問は「力学」と「電磁気」。残る1問は、ほぼ「波動」か「熱」。時間内での完答は不可能なため、やや難の問題では解ける設問だけを処理し、標準レベルの大問に時間をかけるなどの工夫が必要。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
---|---|---|---|
1 | マーク | ★★☆☆ |
【力学】運動方程式、剛体のつり合い |
粗い板上を運動する小物体とばねとの衝突、剛体のつりあいについての標準問題。完答したい。 |
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2 | マーク | ★★☆☆ |
【波動】音のドップラー効果 |
時間差に関する問であり、苦手な受験生が多い。差のつく問題。 |
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3 | マーク | ★★☆☆ |
【電磁気】非線形抵抗 |
キルヒホッフの第2法則と数式で与えられた特性曲線を連立し、さらにその後、二次方程式を解かなければならない。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2021年度 | 1,934名 | 非公表 | 78名 | 238/400 | 59.5% |
2020年度 | 1,873名 | 非公表 | 64名 | 320/500 | 64.0% |
2019年度 | 1,484名 | 非公表 | 61名 | 286/500 | 57.2% |
2018年度 | 1,951名 | 366名 | 72名 | 306/500 | 61.2% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2021年度 | 94.6% | 96.0% |
2020年度 | 95.9% | 99.2% |
2019年度 | 84.9% | 85.2% |
2018年度 | 87.2% | 87.6% |